2024/04/16

大学新入生諸君へ (2024)

大学新入生向けのメッセージをざっと記す。

昨年は世界のデジタルでニヒルな無文脈化について触れつつ、じっさいのモノやエネルギーは無文脈化などありえず、世界の各地でさまざま胎動し連動もし暴発すら続けていると ─ まあそんなところをリマークした。
大学生の諸君らは、他者に押し込まれた断片的な知識や命題にいちいち盲従してはならぬと。

今般はバカでも分かるようにヨリ単純に書き綴ることにする。

=========================


諸君らのほぼ全員は、幼少時から現在まで数学を学び続けてきた(押しこまれてきた)ことであろう。
そもそも数学とはなにかといえば、僕なりにまとめるに、何らかのデータや命題や事象や関数などの’再現性’を保証表現する術であろう。
じゃあ確率論はどうなるんだなどとイチャモンをつける輩もいるだろうが、そういう見方そのものが数学に寄り添い恋している証。
数学が’再現性’を保証すればこそ、アルゴリズムもさまざま可能だし、プログラムはもっと自由自在たりうる。
となると、数学は実体の情報転換技術でもあり、自動化の保証技術ともいえる。


さて、この数学による事象の’再現性’保証があってこそ、宇宙のあらゆるモノやエネルギーの運動(量)や作用/反作用や仕事について特定の法則が成り立ち、これらを束ねて物理学となっている。
たった一度きりの発生事象の場合は宇宙の気まぐれかもしれず幽霊かもしれず、だから再現性を観察できず、ゆえに数学に乗せることが出来ず、これは物理現象とはいえない。
じゃあ量子力学はどうなるんだよと難癖をつける輩もいるだろうが、そういう着眼そのものが物理学を愛している証であろう。
ともあれ、物理学によってさまざまなモノやエネルギーを特定の法則に則って人間なりに活かすことが出来るのだから、これは機械化の技術ともいえる(電子だろうが量子だろうがだ)。

これを産業側からみれば、数学による自動化技術と物理学による機械化技術の複合が大英帝国の繁栄を可能とし、これが巨大スケールの素材とインフラから精妙な暗号数理などなどまで現代型のテクノロジーを導く原初モデルを確立したように映る。


しかし大英帝国の産業は、20世紀以降はアメリカとドイツに対する圧倒的な優位性を失ってしまった。
とくに鉄鋼業などの重大産業にて、大英帝国は化学素材の組み換えやバラエティへの意欲が高揚されにくく、それでアメリカやドイツの後塵を拝するに至ったのではと言われる。

同じような経緯は旧ソ連でも見受けられるようだ。
特定品質の工業製品の大量生産においては旧ソ連はさすがに強かったが、アメリカとドイツが多品種の化学素材によるさまざまなバラエティ製品を世界に送り出すと、旧ソ連はもう追随できなくなったと指摘されている。
さらに悪いことにチェルノブイリ原発事故にても、旧ソ連の工業部材は化学素材がごく限られており、よって大事故を回避出来なかったと。

では日本の産業はどうだったかといえば、数学と物理学はもとより化学においてもドイツやアメリカに負けておらず、むしろ勝っていた。


もう言いたいことは分かりますね。
数学と物理学だけでは現代産業の優位性を保持することは出来ないってこと。
大量生産の勝負に必ずしも適さぬわが日本なればこそ、化学の知識見識が必要とされているってこと。
化学素材や化学薬品がらみでいろいろ揺さぶられてはいる昨今の産業界ではあるものの、大学生の諸君は化学を捨ててはいけない。
将来どの途を選ぼうとも、たとえ数学や物理学が大っ嫌いでも、化学の素材バラエティには常に関心を保持していこう。
世界はまんざら退屈ではないし悲劇的でもないよ、むしろさまざまリアルな関心が高まりかつ深まってゆくのではないかな。

だからって就職活動にて優位となるかどうかは分からないよ、なにしろ素材のバラエティあれこれの世界だ、得もありゃ損もありうる、知ったことかそんなもん。


※ ついでに指摘すれば、日本人のとくに年配層は(経験則からか)医薬品や石油やプラスティックがらみの化学知識がかなり豊富であること、これは大学生諸君にとってひとつの天啓とも呼ぶべき巡り合わせではないか。



なんだかズボラな論旨の投稿にはなったが、大学生向けのつもりだからこんなもんでいいんだ。
おわり