とりわけAI/データセンターの拡張~拡大にともない、旧来の電気通信における伝送上の物理制約を超えた新規技術として大注目されているのが、光通信技術と半導体チップ技術の複合→活用であり、この技術トレンドを総じて「光電融合」と称す。
半導体チップの'光エンジン化'とも称するようである。
光電融合は2020年代に入って以降に、AI/データセンターなどにて、本格的に製品化と実装が進められている由。
この光電融合技術につき、恰好の導入本を見つけたので、此度紹介する。
『光電融合 AI x 半導体の技術革命 日経BP』
本書にてはとくにいわゆる「CPO: Co-Packaged Optics」の技術と製品化をクローズアップしつつ、関連技術をも含め併せ、現下の状況から近未来像までを綴っている。
明瞭に要約されたコンセプト/アブストラクト図案の数々が、簡素な文面と相まって、直観的な理解を大いに促しうる。
よって、とりわけ電子分野まわりの大学生諸君(および生意気な高校生諸君)には少なからぬ知的触発を覚えて欲しいものである。
それでは、本書コンテンツのうちとくに第2章の一端につき、僕なりに要約し以下にさらーっと記しおく。
<データ情報通信における、光活用の優位性>
・旧来より、電気も光もデータ情報通信の手段として活かされてはきた。
ただ、電気があくまでも特定のデバイス内など近接間の信号処理に適する一方で、光は遥か遠距離間であっても高速で信号通信を可能とし、よって同じ投入エネルギーであれば光通信の方が遥か高効率で大量の情報通信を実現する。
この光の伝送高速性と省力優位性は、AI/データセンタなどにおける消費電力の低減化に大いに適うものである。
・電気信号と光信号の速度は大して変わらない。
しかし電気抵抗つまりエネルギー損失が大きく異なる。
総じて、電気回路では銅の導線が活用されてはいるが、これでも電気抵抗はゼロとはならず、然るべき熱エネルギー放出を起こす。
一方で光の回路は(石英ガラスから成る光ファイバなど)光信号を極めて閉鎖的に送受信するため、ここで生じる電気抵抗は電気回路よりも遥かに低く、よって同じ通信量あたりのエネルギー損失が遥かに低くて済む。
電気信号通信の実用周波数は数MHz~数GHzであるが、光信号通信の実用周波数ははるかTHz単位の超高速におよぶ。
同じ100m間の通信の場合、電気信号回路では通信周波数を100MHzまで高めなければならず、これではエネルギーの99%まで減衰してしまうが、光信号回路であればわずか1%の減衰で済む。
========================
<電気⇔光の相互変換>
・光通信回路は優れた技術系ではあるが、このままでは電気通信回路にとって代わることは出来ない。
光通信回路は内部の反射角に大いに依るため、急角度どころか直角にも曲げることが出来ないため、半導体チップにそのまま被せることが出来ない。
またじっさいの光ファイバなどは直径125μmが標準だが、半導体チップの回路幅は1μm単位であるため、やはりそのまま被せることは出来ない。
さらに、現行半導体チップから成るコンピュータサーバにおいては、GPUやCPUがどうしても発熱してしまうが、光通信回路はこの熱に耐えることが出来ず、やっぱり介在させることは出来ない。
それでも、あくまでも現行の電気通信回路(半導体チップ)に光通信回路を適用するのであれば、'光通信回路の末端側'にて電気信号との'相互変換機能'が必須となる。
これが「光電融合」技術の基本である。
その最初の実践例が、着脱可能な光トランシーバーを活かす「プラガブル方式」。
==========================
<スケールアウト方式構造と光電融合>
・現行のデータセンターなどにおける主要基板ラック間の機能形態(論理)を大別すると、スケールアップ方式とスケールアウト方式に大別できる。
スケールアップ方式は、あくまでひとつひとつのラック内にてGPUやメモリを増強し続け、これらおのおのの演算能力を高めていく構成形態。
一方で、スケールアウト方式は、これら多くのラックをあらかじめ接続した上で、総じた大量のGPUなどを連携させ大規模演算を図っていく構成形態。
ここで、あらゆるラック間のスケールアウト方式を進めていくにあたり、高速の通信制御ののスイッチング機能を果たすよう、光電融合技術 ─ 「プラガブル方式」が起用されており、400~800Gbpsの通信速度が実現されている。
・尤も、AI/データセンターでは更にスケールアウト方式の複合接続拡大を図っている。
そこで例えば、デバイス1個あたり1.6~6.4Tbpsの超高速の伝送速度を目しており、こうなるとここまでの「プラガブル方式」では追いつかなくなる。
そこで次世代の光電融合技術として開発されてきたのが、「CPO (Co-Packaged Optics)方式。
CPO方式は、電気信号を光信号に変える光変調器と、受信光を電気信号に変える光検出器などを、'半導体チップとコパッケージ'する製品技術であり、これら一体性を以て「光エンジン」とも称される。
ここでは半導体チップ側のフォトニクス技術も大いに採用されている。
ブロードコムの最新のCPO方式デバイスは、AIのスケールアウト方式構成にて起用されており、光エンジン1個あたりの伝送速度は6.4Tbpsを実現している。
なお、三菱電機や住友電工などはインジウムリンを活かしたCPO方式デバイスの開発を進めている。
かくて、「プラガブル方式」よりもずっと半導体チップ寄りの光電融合として、「CPO方式」が大注目されている。
-==============================
以上、第2章の前半あたりまでをざっと要約してみた。
本書はp.77の「プラガブル vs CPO」あたりから図解図説が具体的になり、ここいらまで読み抜ける秀才の皆さんはきっと「光コンピュ―テイング」の項にてひとつの集大成を見出すことであろう。
僕の見識ではせいぜいここまで、だから本稿はここで終わり。
ともあれ本書は、通信技術ファンの学生諸君も、半導体チップマニアの学生諸君も、ともにさっくりと楽しめる一冊たりえよう。
そういえば書き忘れたが、本書ぐっと後半部にては、CPOなどにおける光通信側の「熱に対する脆さ」克服のため、量子ドットレーザーを光源部に内蔵する由、それら開発譚などが表されており、こういうの好きな子は思いきって挑んでみたら…