2019/01/29

半導体の超概説(5)

<半導体自身の発光>
物質は、外部より光や電気や放射線や化学反応刺激などのエネルギーを得、それによって自身が高エネルギーの励起状態に達し、すぐにまた低エネルギーの基底状態に戻る。
このプロセスにてその物質自身が発光する現象を、総じて蛍光現象(Electro-Luminescence:EL)と称する。

半導体に光を照射すると、その光子のエネルギーによって、半導体における価電子帯の電子が励起状態となって伝導体に一瞬だけ遷移し、すぐにまた価電子帯に戻って基底状態となるが、ここであらためて正孔とぶつかる ─ この時に余ったエネルギーが光として自然放出される、つまり「発光」する。
また、半導体に光を照射する代わりに直接電流を流しこんで電子を注入し、以降は同じ発光動作を導く方式もある。
どちらにせよ、価電子帯と伝導体の間つまりバンドギャップにて電子を遷移させて発光させる方式、総じて「バンド間遷移」方式という。

ただ、電子と正孔の分布エネルギーがバラついているかぎりは、発光の波長の位相が揃わずインコヒーレントな非可干渉光のままである。

半導体を発光させるにあたり、半導体に添加されている不純物の特性をも活かした、「バンド-不純物準位間遷移」方式もある。
半導体のバンドギャップ間にて不純物(アクセプタ)のエネルギー準位を設定し、ひとたび伝導体に遷移した電子がこの準位まで落ちてきて正孔と結合、このプロセスで発光するもの。
この方式による発光は、バンド間遷移方式よりも低エネルギーでなされ、ヨリ長い波長光を成す。

さらには、電子と正孔の引き合いによる「励起子」を作り出すようにエネルギーバンドを設定する方式もあり、これを「励起子方式」という。
励起子は常温ではすぐに分離するので、電子と正孔がバラけ、それが再結合することで発光、この方式による発光はバンド間遷移方式よりも概して高エネルギーを要し、ヨリ短めの波長光を成す。

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<発光ダイオード>
発光する半導体の基本構造が「発光ダイオード(LED : Light Emitting Diode)」である。
pn接合によるダイオードにて、n型側に陰極(カソード)を繋ぎ、またp型側に陽極(アノード)を繋いで、陽極にプラス電荷の電圧をかけて発光させる。
これを原型としつつも、更なる高輝度の発光を実現するため、バンドギャップの小さな薄型半導体素材をバンドギャップの大きな半導体素材で挟み込む構造、いわゆる「ダブルヘテロ接合」(pin接合)によるダイオードもある。
ダブルヘテロ接合のダイオードにては、挟まれている半導体にて電子と正孔の再結合による発光が小エネルギーで起こりやすく、これは両側の半導体には吸収されにくい ─ よって、総じて発光効率が高くなる。


発光ダイオードの接合形態は素材物質に依っている。
<素材物質と発光の方式と発光波長の例>
インジウム窒化ガリウム(InGan): バンド間遷移式、発光波長405nm(青紫色)
リン化ガリウム(GaP): 励起子式、発光波長555nm(緑色)
アルミニウムインジウムガリウムリン(AlGainP): バンド間遷移式、発光波長570nm(黄色)
アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs): バンド間遷移式、発光波長660nm(赤色)
ガリウムヒ素(GaAs): バンドー不純物準位間遷移式、発光波長980nm(赤外線・リモコン用途)
インジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP): バンド-不純物準位間遷移式、発光波長1300nm(赤外線・光通信用途)

<発光ダイオードの導入メリット>
電流ON/OFFスイッチング反応が速い(すぐに発光する)。
運用上の温度が安定し、しかも低温かつ低発熱におさまる。
消費電力が白熱電球の10分の1程度で済む。
通常運用における寿命が長い、たとえば蛍光灯の4倍以上に至るなど。
フィラメントやガラスなど脆い部材を排除しており、振動や衝撃に強い。

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<レーザー>
レーザーとは、'LASER' すなわち 'Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation' の略語。
これも半導体素材のダブルヘテロ構造による受光→発光技術である。
ただし、電子励起によるエネルギーの自然放出ではなく、半導体それぞれの電子の励起状態を効果的に集中持続させる「反転分布」の技術に拠っている。
反転分布状態となっている電子に光が照射されると、誘導されて発光(「誘導放出」)、これが次々と繰り返されて光の「発振」が増幅される。
この発振の増幅は「共振器」構造にてなされ、可干渉な(コヒーレントな)光の波を成し、特定の波長光として外部に直線的に放射される。

端緒の原型はいわゆるルビーレーザーで、固定媒体であるアルミナ(合成ルビー)を活かしたもの。
アルミナから成るロッド棒が「共振器」を成し、この両端に反射率100%および99%の銀を蒸着し、かつロッドの側面にフラッシュランプ光源を巻き付けた構造。
ロッドを成すアルミナにおけるクロムイオンが、フラッシュランプ光と相互に光を交わしつつ、銀との反射にて発振を激しく繰り返し、波長694.3nmの直線光を成して外部に放出される。
やはり個体材料を活かしたものとしてはとくに「YAGレーザー」があり(イットリウム=アルミニウム=ガーネットの結晶)、YAGレーザーの発光波長は1,064nmだがヨリ高出力を実現。

レーザー活性媒体にガスを起用したタイプもある。
「ヘリウム=ネオン原子レーザー」は632.8nmの赤色光。
「アルゴンイオンレーザ」は488nmの青色光、さらに363.8nmの紫外光も実現。
さらに「アルゴンとフッ素の合成エキシマ」によるレーザーでは、じつに193nmの短波光を実現している。

もちろん、レーザ光の波長が短ければ短いほどエネルギーが高いので、その照射対象にては吸収率も高くなる ─ ゆえに工業技術上の用途が広がる

さらに、ローダミン6Gなどの蛍光色素を活性媒体に起用したいわゆる「色素レーザー」もあり、これは様々な波長のレーザー光を調整実現。
よって、極めて特定の波長のレーザー光をも実現 ─ たとえば、ウランなど特定の同位体のみの電子励起のために用いられたり、特定部位の癌腫瘍の除去に用いられる、など。

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半導体の発光機能と電気信号ロジックをともに活かしたエレクトロニクス工学を、とくに「オプトエレクトロニクス」とも称し、工業技術においてもまた消費者向け製品にても大いに起用されている。


<参考>
CDもDVDもBlu-rayも、データがディスクのピット(くぼみ)に刻まれており、ピットにレーザー光を当てたさいの反射の差異を検知し、それらを(数理的に)映像と音声の情報として解釈する仕組み。
CDはピットが粗いので赤色レーザー(波長780nm)によって反射を識別出来るが、Blu-rayはピットが極めて細かいため青紫レーザー(波長405nm)でなければ反射を識別出来ない。

また、CDのピット記録層つまり読み取り面はディスクの奥中に在るが、Blu-rayではディスクのギリギリ表面部にあり、これはディスクがちょっとでも反ってしまったさいのピット検知誤差を最小限に抑えるため (ピットがディスクの奥中にあると検知誤差も大きくなる。)

2Mwの熱エネルギーをレーザーに供給すればミサイルが破壊できる。


(つづく)

2019/01/22

2019年センター試験についての所感

大学入試センター試験は此度を含めて残り2回だという。
だから、これまでに無い奇問珍問の類が多く出題され、来るべき「大学入試共通テスト」にさいしての参考データとされるのでは ─ とも期待していたが、ちょっと見ただけでは出題にて派手なバラつきは無かったようである。

そういえば物理学におけるひとつの大トピックとして、国際基本単位系(SI)の定義における昨年11月の大改正があった; 電気素量とアンペア、ボルツマン定数とケルビン、アボガドロ定数とモル、そして独自に定まったキログラムなどなどにつき、数理上は直裁的になった。
ここのところ、此度のセンター試験では特に反映されなかったようだが、国立二次などで理念ないし計算方式について出題されれば面白いのでは

一方では、半導体にかかる電子/電荷の基礎(ダイオード)がセンター試験で出題され、若干の話題をさらっているようだが、こちらは極めて汎用性の高い技術製品、まさに基礎教養のど真ん中であり、汎用的な教養に則るはずのセンター試験なれば、出題されて然るべきかと。

さて僕なりに毎年とりわけ注目してきたのが、政治経済と世界史である。以下に幾つかの出題と僕なりの所感を雑記しおく。

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【政治・経済】
<第1問>
問2.国連安保理における重要な議題は実質事項とされ、常任理事国による一致の原則によって表決されなければならない。なお、安保理の表決対象とすべきか否かを安保理自身が判断すべき議題もあり、それを手続事項とも称する。

問4.条約とは共通の事業利害に則った特定国間での利益追求の合意である。一方で、新国際経済秩序(NIEO)は主権平等、内政不干渉、公正の原則による資源ナショナリズムの機会保全をはかった共同宣言ゆえ、本性的に条約とはいえない。

問5.2013年頃からの国際的な原油価格の下落により、ロシア経済が大きく減速、また2014年のオリンピック以降にブラジルも経済低迷。両国とも工業分野のヴァリエーションが小さい。一方で中国も資源価格変動の影響は受けやすいが、共産党による指令のため工業や資産投資のヴァリエーションが大きく経済成長を持続してきた。

問9.量的緩和と政策金利の論理的(本質的)な違いは理解必須。

<第2問>
問4.預金総額=本源的預金÷支払準備率であり、本出題のケースでは2000万円/0.2により預金総額が1億円に達するので、ここから本源的預金2000万円を引いた預金増加分は8000万円となる。

問5.本問は通貨ごとの購買力平価を考えさせるもの。日米両国において、「部品材料と仕様と価格競争力と販売期間が全く同一のスマホ」が売られている、との前提に立ち、さて、この同一のスマホに対する日本円の(そして米ドルの)購買力は上がったか下がったかと問うている。
※ 通貨ごとの購買力平価は、英エコノミスト誌などがビッグマック指数などど冠して普遍させた経済学上の方便である。もちろん、実際の多国間ビジネスにおいては、工業製品であろうがビッグマックであろうが、完全に同一の部材と仕様のものが異なる通貨圏で並立的に販売されることは考え難く、もっと複合戦略的に部材や仕様をからめ合わせている。

<第3問>
問5.大日本帝国憲法に内閣および総理大臣の定義がおかれなかったのは、行政にかかる権限を段階的に分散させずに皇帝(日本なら天皇)に集中させたため。ビスマルク時代のプロイセン憲法に倣っている。

<第4問>
問6.比較生産費/比較優位説に則った出題で、難しくはない。そもそも比較優位という理論自体が奇妙なもので、例えば或る異なる2国にて、それぞれ奴隷同然の労働者が、自由な設備投資の機会も無く、単一の財貨の生産のみに従事している「場合」 ─ という極端に理念的な前提をおく。本問のリード文もそこを強意しているように察せられ、読んでいて吹き出してしまった。
※ さて、これで2国の製品生産量/それらの生産効率を比較し、両国間での国際分業メリットありやなしやと検討することに、実践的な意義があろうか?率先遂行する事業者がいるだろうか?事業者でなければいったい誰が?あるいは、戦争による併合を前提としているのか、植民地化か、はたまた共産主義≒グローバリズムか?考えれば考えるほど奇怪な理論ではなかろうか。

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【世界史A】
毎年もっとも楽しみにしている科目であるが、此度は出題リード文と設問のかかわりが読み取り難いもの(というよりリード文の意義が判然とせぬもの)が目立った。

<第1問>
問3.リード文では中国の国民政府による国民革命軍への「実力行使」がどうこうと語っている一方で、問3で論じられている「実力」はアメリカに対する「同時多発テロ」を指している。設問は易しいものの、出題の主旨が全く判らない。

問5.リード文では19世紀~20世紀の「東南アジア植民地を経営するオランダ」が挙げられているが、このオランダを、「かつてスペイン帝国から独立したネーデルラント連邦共和国」と同一視してよいものか?たとえばフランス革命~ナポレオンによる侵略により、ネーデルラントは共和国としてはいったん滅亡している。
※ ここまで掘り下げると屁理屈のように聞こえるかもしれぬが、本設問における「オランダ」はいったいどういう主権と政体の国地域を指すのか、曖昧に過ぎるのではないか。

問8.ココ=シャネルの出題についてはいろいろ話題となっているが、歴史科において彼女ほどの巨星を取り上げること、何の支障があろうか?或る英語リーダ教科書にても彼女の逸話が載っているほどだ。不遇に生まれ第二次大戦に翻弄された前半生にも拘わらず、女性たちの衣類を機能的に大改編し活動範囲を拡大させた彼女の功績は、ひとえに文化論には収まらぬとてつもないものである。

問9.これは大良問である。ここに呈されたグラフはドイツ、フランス、イギリスが大戦争に応じて人口あたりの軍人数をどれだけ増加させたかを一瞥させる ─ のみならず、海軍力にては最強だったはずのイギリスが3国のうちでは概して軍人比率が少ないこと、普仏戦争以降のフランスはずっと高留まりであることがすぐに見て取れる。
また、ドイツは軍人比率が急増しつつ急減もしており、これがドイツの失業対策(社会保障)にも関わっているかもしれぬこと、では、それぞれの国々の年齢構成はどうだったのか、などなど、じっくり眺めてみれば実にいろいろ考えさせられる。
時系列と実践と事件と因果…これらを複合的に考えさせてこそ世界史だ、だから本問におけるグラフはこれだけで幾つもの設問をからめてもよかった。

<第2問>
問2.石見銀山より産出の銀についての出題だが、これもかなり深淵な主題たりえる。
日本は平安~鎌倉時代にかけて銅の開発生産に消極的になり南宋から輸入するほどだったが、室町時代~戦国期に硫化銅からの精錬技術が向上して自前の銅生産量を増やした。また、石見銀山などにて銀の精錬も進み、こうして日本は貴金属における世界トップ保有国となる、が、江戸幕府による直営産業となって以降は銅も銀もさらに金までも外国から安値で買い叩かれ、以降は近現代まで日本はそれらに乏しいままである ─ といった歴史概括から、日本が銀輸出に余裕があった時期を想定すれば、本問もわかる。
※ そんなところまで知らねばならぬのか、とうんざりする受験生もいるかもしれぬが、そんなところまで知ってこその世界史Aなのだ。

問6.日本軍によるいわゆる「南方作戦」はマレー作戦からビルマ開放までで、その経緯を鑑みれば本問は難しくない。なお、ビルマのアウンサンは日本軍と共闘して英軍を追い出したが、そのご日本軍の退却にさいしてはむしろ抗日へ ─ とはいえ、植民地の独立までの経路にてはさまざまな利害対立による紆余曲折が起こるものゆえ、単純な是非論を以て解釈すべきではない。

<第3問>
食材の原産国と交易についての出題であり、大良問である。本問で挙げられるパン、ワイン、オリーヴ、クローブ、ナツメヤシ、お茶類の他にも、琥珀、沈香、ピメント、トウガラシ、トウモロコシ、サトウキビ、毛皮、象牙、そして金や銀などなどは、主要な原産国と交易ルートについては世界史Aはむろん世界史Bの教科書にてもところどころ記載あり。
これら特産物の交易こそが ─ さまざまな文明における地理条件、気象条件や潮流、灌漑や干拓、農業作付と技術、鉱工業技術、商取引、戦争、植民地、経済政策さらに国家観までを縦横に連環させてきたと知ること、そしてこんごの未来像を演繹することが歴史学習の重大な意義である。
※ 以上を踏まえてみれば、「じっさいにはマダガスカル産のお茶だって有ったはずだ!」などという論理的な仮想は高校までの歴史学習の主旨には合致しない。

<第4問>
リード文では新疆ウイグル地域における東トルキスタン共和国の自治独立について紹介されており、ソ連と中華民国そして中華人民共和国の利害に翻弄され迷走しそして潰えた悲劇性が掲げられている。トルキスタン(西と東)は世界史における最重要地域のひとつ、民族が流動的であり捉えにくい広大な地域ではあるが、このうち新疆ウイグル地域については露清のイリ条約あたりから連想出来た受験生も多かったのではないか。

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【世界史B】
こちらも出題リード文と設問の関わりについて(例年以上に)不明瞭である。無礼承知で申せば、今回はとくに雑問が多すぎる!せっかく読みごたえのあるリード文が幾つも掲げられているのだから、それらから複合的かつ深淵に熟慮させる設問群を準備して欲しかった。

<第3問>
問3.イギリスの輸入相手国であったドイツとカナダ、それぞれからの輸入額の推移グラフ。ロカルノ条約以降の対独宥和以降、英連邦経済会議までの期間、イギリスではドイツからの輸入額がカナダからの輸入額を大幅に超えていたと分かる。ただ、カナダをからめた出題なのだから、ウェストミンスター憲章についても問われて然るべきだったのではないか。
いや、それよりももっと残念なことに、このグラフは「輸入額ベース」にすぎず、「輸入品目」が明示されていない。ドイツから何を輸入し、またカナダからは何を、それは天然資源かエネルギー源か鋼材だったのか…ここまでふまえてこそブロック経済の功罪論に至りえよう。どうも未消化感の残る出題であった。

問6.カピチュレーション特権について、これはもちろんオスマン帝国域内における西欧各国の商人へ付与された事業特権である、が、ふつうに帝国と諸商人とのビジネス関係を考えるならば、帝国側にも同等の事業特権を与えられたムスリム商人や行政官僚が存在していたのではないか(中国史における特権商人や公司のごとく) 
─ とすれば選択肢の2も正解になりますね。いや、ちょっと考えてみただけですよ。

問7.サンティアゴ=デ=コンポステラは資料集によっては掲載されており、数年前の早稲田政経だか商だかにも出題されていたし、もうちょっと前のセンター試験にも出題されていたような。彼の大陸間周遊の経路はなかなか楽しい。

<第4問>
問3.いわゆる「全権委任法」は、ヴァイマル共和国憲法を超越した立法権をナチス党の政権に認めた法制度。とはいえ、この用語自体はあまりに抽象的であり、同義の用語が世界史さまざまな国や地域において数多く存在してもおかしくない。とりあえず大学入試まではここでの「全権委任法」ということで了解しておこう。


以上

2019/01/21

数学トワイライトゾーン

「先生、質問があります。正円とはどういうものですか?」
「正円だと?ああ、それはね、ある点が存在するとして、そこから等距離にぐるーりと引いた曲線のことだ」
「では、正円は実在するのでしょうか?」
「いや、この世界のどこにも正円は実在しないね。あくまで数学上の仮定でしかないんだ」
「実在しないものを、どうして仮定出来るのですか?」
「なんだと?つまらないことを訊くなよ。あっははは。簡単に言えばそれが数学ってもんだ。いや、難しく言ってもそんなもんだ
「そうかしら?正円は実在するからこそ定義も出来るわけでしょう?ほら、いまここに正円の数式があります。これをコンピュータで描画してみると ─ ね、これが正円です。正円は仮定ではなくて、ここに実在していますね」
「何をやってんだか!その数式そのものがあくまで仮定に過ぎないじゃないか。あっはははは……あっ?もしかしたら?!君は、君は…!」
「そうよ、あたしは人間なの。人間であるあたしが認めているのだから、正円は確かに実在するのよ。これこそが数学なのよ!それなのに、あなたは…」
「いーや、君は間違っている!俺こそが人間なんだ!いいか、よく見ろ、俺がここに円のようなものをぐるーりと描く、ね、それでこの図形をコンピュータで数式に還元すると ─ ほら!君の数式と全然違うじゃないか!」
「どこが違うの?まったく同じ数式でしょう!…どうも、あなたには困ったものね。そんなことじゃ、いつまで経っても人間とのコミュニケーションは図れないわよ」


(唯名論や実在論、さらに養老孟司氏の言に触発されて描いたもの)

2019/01/15

新成人 (2019)


此度の新成人が生まれた「年度」は1998年~1999年。
この年度のできごとを、ざっと列記すると;

・Windows98、IE標準装備、マルチメディア対応
・Google設立
・英米で地デジ開始
・euroが決済通貨として流通開始
・日産がルノーと資本提携
・香港国際空港が開港 (啓徳空港は閉港)
・火星探査機「のぞみ」打ち上げ

世界のカネと情報がぐるりと連結だ、時空を超えたグローバル化は夢と希望の道筋づくり。
たが、行き過ぎのグローバ「リズム」に対しては、ちょっと不安も。

不安どころか、過去からの怨念や憤怒も尾を引いていた。
・インドとパキスタンが核実験を応酬
・テポドンが三陸沖へ
(奇しくも、僕は韓国行きの機内におり、宙空でのすれ違いとなった。)
・米英がイラク空爆、数年後にイラク戦争へ
・NATOがユーゴ/コソヴォ空爆

これらから、早20年、デフレ、デフレ、まだデフレ、ほーらデフレだ、やっぱりデフレだ…大人たちのため息と不平不満がやむことはなかった。
しかしだね。
同じ20年の間にすくすくと育った若者たちが、どこどこ、どんどん、ちゃんと繰り出してきたじゃないか。
この世の中は、人の市、果てるものありゃ起きるものあり。
やれMBAだITだTOEICだなどと、論理に戯れ、論理に溺れ、論理に裏切られて散っていった敗残者連中は、もう引っ込んでなさいよ。
もっとまともな連中が、すでに現れつつあるんだ。

新成人諸君へ。
君たちは親たちの世代と比べても、家族のしがらみ、習俗のしがらみ、主義や党派のしがらみ、職場のしがらみ、カネのしがらみから解き放たれている。
だから、なおさらのこと、実質に生きろ、実体を動かせ、実物を生み出しつつ、実働せよ!
腹いっぱい食え、いい酒を飲め、重版の続く名著をたくさん読め。
気の合う仲間と群れて騒いでもいい、一人きりでもいい、論理だけの多数決よりも硬質な原理原則に生きろ。
過去のフィクションは過去の連中に任せておけばいいんだ、君たちは未来を描いて作るんだ!

以上

2019/01/11

半導体の超概説(4)

<集積回路>
Integrated Circuit(IC)すなわち集積回路 のうち、半導体素材への不純物添加で結晶を生成しつつ、それらを配線することで新たな素子として編み上げていくタイプを、とくに「モノリシック(mono-lithic)型のICと称す。
いわゆる集積回路のほとんどはモノリシックタイプとして生成されたものである。
なお、トランジスタや抵抗器などの個別のディスクリート(単体)素子を絶縁素材の基板上に実装ののちに配線するICは、「ハイブリッド」型と定義される。

<ICを素子の「集積度」で分類>
SSI (Small Scale Integrator) : 素子数100に満たぬもの、例えば論理ゲートなど
MSI (Medium Scale Integrator) : 素子数100~1000程度、例えばレジスタ、カウンタなど
LSI (Large Scale Integrator) : 素子数1000~10万、例えばマイクロプロセッサ、メモリなど
VLSI (Very Large Scale Integrator) : 素子数10万以上、例えば大型コンピュータなどの大容量メモリや論理素子など

なお、これらICは気密性と強度を保つため、立体構造から成るパッケージ/キャリアに収納されている。
たとえば、CAN型、SIP(Single Inline)型、DIP(Dual Inline)型、LCC(Leadless Chip Carrier)型、など。

<LSIを「機能/用途別」に分類>
MPU (Micro Processor Unit マイクロプロセッサ)
ASIC (Application Specific Integrated Circuit)

このうち、MPUとしては;

CPU (Central Processing Unit) : 中央演算処理装置
MCU (Micro Controller Unit): いわゆるワンチップ型マイコン

また、ASICはアプリ用途に応じて複数の回路と機能をまとめて組み上げたICで、更に以下に分類できる;

USIC (User Specific Integrated Circuit) : 特定ユーザ用途向けの限定型であり、ひとたびデバイスを成した後は機能変更が出来ない
ASSP (Application Specific Standard Product) : 特定のアプリ対応型であり、ひとたびデバイスを成した後は機能変更が出来ない
UPIC (User Programmable Integrated Circuit) : デバイスとしてユーザに提供後に、ユーザ自身がハードウェア記述言語(HDL)で回路設計や書き換えが可能
さらに、UPICは機能/論理ベースでのブロック化とそれら配線による制御構造から FPGA (Field Programmable Gate Array)CPLD (Complex Programmable Logic Device) に大別できる。

また、特定のMCU、ASIC、メモリなどを特定の演算処理装置としてシステム化し、これをとくにシステムLSI あるいはSOC(System on A Chip) と称する場合もある。


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<論理素子・CMOS>
シリコンによる集積回路の代表的な基本素子は、p型とn型のチャネル(電流)を起こすMOSFETトランジスタ同士を組み合わせたものであるが、これを論理素子として捉えるならば、pチャネルとnチャネルを相補的に成すCMOS(Complimentary MOS)素子と定義することが出来る。
かつ、これは論理上の'NOT'ゲートを成すので、その意味からCMOS「インバータ」とも称される。

ごく簡略すると ─ たとえば、p型チャネルを起こすMOSFETの電極部をn型チャネルのMOSFETのそれよりもあらかじめ3-15Vほど電位高く設定しておき、その上で、入力電圧と出力電圧を相補的にどちらかの電圧に切り替えることで、チャネルの向きがどちらかに換わる。
この切り替え操作にて、たとえば入力電圧がn型MOSFETの電極と等しい場合をデジタル信号の'0'状態と見做しつつ、出力電圧をp型MOSFETのそれと等しい場合にデジタルの'1'と見做す、など。

IT関連製品におけるモノリシックな論理回路は、バイポーラトランジスタと抵抗によるものもあるが、現在多くはCMOS(インバータ)によるものである。
その理由は、p型とn型のMOSFETのうち常にいずれかにしか電圧がかからない(電流が流れない)構造であり素子あたりの消費電力が少なくて済むため。

CMOS(インバータ)は、MOSFET自体の微細化とも相まって起用メリットがいよいよ向上、現在はパソコンレベルはむろんスパコンなどにおけるVLSIにも積極的に採用されている。

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<メモリ(記憶素子)>
半導体の組み合わせによるメモリ素子には多くの場合FETトランジスタが起用され、これにコンデンサ(とくにキャパシタという)が対応した素子構造を成している。
※ このあたりまでくると、なぜ大学入試などの物理でコンデンサをからめた回路がアホみたいにたくさん出題されるかも、なんとなく察せられるのではなかろうか。

常に電流を動的に必要とする揮発性のメモリ素子と、電流が無くともデータを保存可能な不揮発性のメモリ素子がある。
揮発性のメモリ素子としては、常にリフレッシュ(再充電)が必要なDRAM(Dynamic Random Access Memory) と、 リフレッシュは不要のSRAM(Static Random Access Memory) がある。

一方で、不揮発性のメモリ素子としては以下が挙げられる;
マスクROM(Read Only Memory) : データ書き換え一切不可能
EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory) : 素子を成すFETに書き込みが可能、かつ紫外線照射でデータ消去が出来る
EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory) : これも素子を成すFETに書き込みが可能、かつ、こちらは電気によってデータ消去が出来る
EPROMよりもEEPROMの方が書き換え消去の回数が多いため汎用化されている。
他にも、DRAM構造に強誘電体を起用して残存極性電圧でデータ保存可能なFeRAM や、磁性体を素子に用いて磁気抵抗(磁界の向き制御)でデータ保存可能なMRAMなどがある。


・DRAMは揮発性メモリではあるものの、この構造/動作を理解すれば、メモリ素子のデータ読み込み、データ書き込み、電荷について総括的に分かる。
DRAMは、FETトランジスタ1個に応じたコンデンサ(キャパシタという)1個をもって1つの「メモリーセル」を成し、それぞれのメモリーセルがキャパシタに電荷を蓄えてデータを記憶する。
メモリーセルを構造分類すれば、FETトランジスタの上部位置にキャパシタをおくいわゆるスタック型と、シリコン基板に溝を掘ってキャパシタを埋め込むトレンチ型がある。
また、メモリーセルを2次元でみれば、縦横2つの導線つまりビット線とワード線によって膨大な数が連結されており、ビット線がそれぞれのメモリーセルへの電圧を制御。

それぞれのメモリーセルにて、通常はFETトランジスタは電圧オフ状態で、データ書き込みおよび読み出しのさいにオン状態となる、かつ、キャパシタがFET電極間に電圧をかけて静電誘導をおこし ─ ざっとこのプロセスで電極に電荷キャリアを貯める。
ただし、秒ごとに何度かのリフレッシュ(再充電)を動的に繰り返す。
このメモリーセルの1つずつが、論理上は1ビットあたりの'1'あるいは'0'を記憶することになる。

DRAMでは電流漏れがどうしても発生するので、リフレッシュの継続が必要となる、が、同じ揮発性メモリでもSRAMはメモリーセルが複数のFETトランジスタで構成されており、電流漏れがほとんど無い。
よって、SRAMはDRAMと比べて集積度こそ劣るものの、リフレッシュ動作が不要であるため低消費電力を実現、だからバッテリー駆動でのメモリ素子(たとえば携帯電話などのデバイス)に多く採用されている。


以上

(次回は、マイクロ波集積タイプ、イメージセンサ、発光系デバイス、レーザ、などなど。気が向いたら)

2019/01/03

書き初め2019



新年に かすかな誓い ささやかに 何かを動かし 何かが動く


ひらめきか 夢かうつつか まぼろしか よしあり よしなし 全てを活かせ



知りうるか 知らず知らずか 知らねども 此方の量子 彼方の銀河



囲碁の局 碁石は譜面に 位置を成す 電界と電荷 相対ゆえの絶対



初詣 破魔矢を換えて お神籤を 有りきたりなば 今ぞ新たに



世のすべて 変化し流転し 新たにす 留めて稼ぐは はかりごとなり



女子大生 振り袖着飾る その影を 踏めば逃げるか いっひひひひひ



少子化で 学力低下で 無気力と 云われた彼女ら 果敢に育つ



無造作に 走って転んで 泣く子たち たちまち駆け寄る 母性の凄さ



上流と 下流があって 中流は 無いんだってさ やっぱり屁理屈



神宮の 隅に盛られた 土俵跡 ふと立ちどまる いつかの爺さん



歴史科は 人の本性を 説くはずが 本性以外を 説いてばっかし



円形の 大劇場に 闘技場 討論 決闘 なにより商売



多数決 株式 メディア 代議制 コストは分散 利益は独占



へぼ将棋 王より飛車を 可愛がり 実生活では 王の言いなり



理数系 なのに「の」の助詞 ばっかしの バカのテキスト まさか悪意の



カッとなり テキスト棄てる 若き血を 棄てちまったか デフレジジイども



髪型と 目つきのおかしい デフレジジイ 頭の中は もっとおかしい



待ちなさい じっくりゆっくり 考えて 時間と言葉を まわして稼ごう



統計だ データだ ネットだ AIだ 思考を省いて 理屈を増やす



世の中は そもそもリスクが さらにリスクが 総じてリスクが 誰もがリスク



世の中は 人と仕事が ともに在り 人手不足は 人余りかな


世の中は カネと仕事が ともに在り 長引くデフレは 長引く浪費


世の中は カネだ知性だ機会だと 説いてた大企業が 全て奪われてやんの



傷つけ合い 夢と希望を 抱きしめて つまんねぇんだよ 若いんだろおまえら



(以上)