2014/01/19

2014年センター試験についての所感

① 早くもセンター試験の日が巡ってきた。
大仰に言えば多くの学生にとっていわば通過儀礼の一種、そうして次々と新次元に挑んでいく子たちを見届け続けてきた以上、僕としてはなんだか妙に感傷的な時節到来でもある。

思えば、今年度の高3生たちは阪神淡路大震災の年に生まれ、東日本大震災の年に高校入学、と、どこか奇矯な星回り、ちょっと気にかかったり。
そういえば、昨年度の高3生はどこかズカーンと突き抜けたような生意気な天才タイプが目立ったが、今年度の高3生は概して実直な努力型が多いように見受けられ、なおさら捨て置けない。
更に僕なりにやや偶然の縁も有り ─ とまれ、今年度の高3生に対しては例年以上に思い入れが大であること、とりあえず白状しておく。

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② しかしながら。
まともに考えれば、大学受験のためのセンター試験など「ほとんど」意義が無い。
その理由を僕なりに記す。

(1) 学生の知力の絶対値を測る尺度など設定しようがない 
(何らかの知力が傑出している子でもその才覚はえてして凸凹しており、規定の勉強学力がトータルに高いとは限らない)
→ しかしセンター試験では知力絶対値=学力絶対値の存在が前提となっている

(2) 一方で、おのおの大学に知的特性が在る以上は、望ましい学生の知的特性も大学別にそれぞれ異なるはずである
→  だがセンター試験では各大学側の知的特性を個別には反映していない

(2)' (2)を確認するためには、大学と入学志望者の両者間における直接かつ双方向の対話が必須であるはず
→ だがセンター試験が介在する以上は、これらは実現出来ない

…にも拘らず、センター試験の実施が必然であるとされるのなら、その理由はセンター試験が大学受験のためにあらず、高校履修内容の習熟度の確認手段に留まるためではないか。
であれば、5年後(?)に一斉導入されるかもしれない高校履修内容の習熟度テストと何が違うのか?
しかし、おのおの独自の知的特性に則っている大学側が、高校学習の習熟度をもって学生評価の基準に据え置いている現状は、間違っている。
個々の大学の知的特性に合致した推薦入試制度の方が遥かに合理的だ。

なるほど、高校の履修課程が来年度からちょっぴり増補されることになっており、だから現行課程のうちにとっとと大学に引っかかりたい、という声も頻繁に耳にしてきた。
だから?

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③ さて、例年のとおり社会科の出題に注目してみる。
今回はとくに政経科が面白かった。

第1問。
問5は、「通貨当局」が日本かアメリカか瞬時戸惑うものの、日本経済の記述との前提に立てば、ああこれは日本の通貨当局の平価変動幅の制限のことだと閃くはず。
続く問6は、過去25年間の中長期スパンにおける「経常収支の変動内訳」がちょっと面白いが、どうもイヤミな問題だなあとの印象も残ったもの。
軒並み黒字を計上し続けてきた所得収支(つまり海外投資収益など)を当てさせる問題で、ほら、日本はカネの海外運用リターン「だけ」はどんどん黒字基調にあるのですよ、か、そこんところ思い出せばたちまち正解。
だけど本当はね、増えたり減ったり変動激しくここ数年でガンガンと落ち込んだ貿易収支、そして、やはりややでっこみひっこみでマイナス基調のサービス収支、と、この両者の戦略的な要因こそが日本経済論のコアでありノウハウなんだけどね。
なお、「経常収支」を大雑把に換言すれば、「すでに為された取引・或いはすでに課された義務における『損得金額』」を表し、かつ、本問には出てこなかったが「資本収支」は「これからの取引成果を期待して『とりあえず出しておくカネの損得』を表している ─ とりあえずこういう具合に抑えておけば大間違いはしないだろう。

次に、第2問。
問6は年間総実労働時間で、日本はドイツやフランスよりも長いのですよと納得させる主旨なのだろう(しかしアメリカとはほぼ同時間である)。
なお、残業も待機時間も全部ひっくるめた実労働時間と、法定労働時間の違いについて、ちゃんと教育しているのかどうか常々疑問ではある。

さらに、第4問。
問1は、皇位継承が男系男子に限られているなどとは憲法には明文化されていないよ、と念押しする意図があるのだろうか。

問3がなかなかトリッキーで面白い。
これは出題文はじめの「定員が5人」が小選挙区ア~オそれぞれの定員を指すのか合計をさすのか解りにくい、が文面はそれぞれの小選挙区で各政党「それぞれ1人の候補者」と続く。
さて、この条件下でア~オの小選挙区が合併したら、5つの議席を争う単一選挙区において得票数が計500となり(つまりこの合併選挙区はもはや小選挙区ではない!)、ここで得票数を極めて単純に議席に按分するのだからA党から2人、B党からも2人、C党でさえも1人が議席確保となる。
(比例代表区におけるドント式議席配分など咄嗟にかられて、全貌を見失わなかったかどうか。)

第5問。
問1、これは実に素晴らしい問題、まさに社会科の着想そのものを問うもの。
ほとんどの諸国・諸地域間においても、それら経済活動の利害一致があり、それで共通化統合があってこそ、おって政治的な統合もありうるわけで、逆など普通はあるわけがない(あるとしたら共産主義勢力による侵略活動と統制経済政策だけ。) 

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世界史Bについては、例年同様にまたハングル関係についての曖昧な出題が為されたのかしら…と、やや訝しげにパラパラ眺めてみたら。

第1問の問6、琉球は明に朝貢したとあり、これは間違いではないが、まともなセンスで出題するのなら「明と薩摩への両属体制をとった」として欲しかった。
第3問の問6は現代史からの重要な出題で、ニュルンベルグ国際軍事裁判は分割占領下でのドイツでなされたこと、つまり、NATO結成~東西ドイツおのおの独立よりも以前であったこと、是非思い返して欲しいところ。
問7では中ソ国境紛争の後にアメリカが中共訪問であるところ、勘違いせぬよう。
とくに、ヴェトナム戦争と中共の文化大革命が既に進行しているところでの、中ソ国境紛争であったこと、つまり中共の対外的な動きを是非とも総括しておきたい。

以上