2023/07/24

幽霊の証明



バカみたいに暑い日々が続いている。
だから、いっそのこと大胆なバカになってみよう。

さぁ、20代~10代の知性を触発しうる(かもしれない)とびっきりの難問を幾つもいくつも取り揃えてみたぞ。
もちろん正答なんか知ったこっちゃないんだ。
さぁさぁ覚悟しろ。


===============

① 「幽霊の'実在'」を人間が証明出来るだろうか?それとも出来ないだろうか?

ははーん、いわゆる’悪魔の証明’ってやつだな、つまり、「何かが’実在しない’」ということは人間には証明出来ないんだ…
と見なす人が多いことだろう。
これを背理的に捉えれば、「幽霊は’実在する’」と証明したことになるね。

いや、そもそも「幽霊」という設定そのものがおかしくて、これは’実在する'/’実在しない を証明出来ないものなんだ、と反論するかもしれぬ。
とすると、「幽霊は'実在しえない’」と証明したことになりますね。


…え?なんだって?訳の分からぬことを書くなって?
甘ったれんな!
こういう論題こそが思考力を鍛える ─ かもしれないんだ。
以降、しばらく続くんだ!

================


② 人間の「思考」は、脳神経における何らかの物質(粒子)の運動であり、さらに外部物質との作用/反作用であろう。
唯物論だの心身二元論だの、いろいろ評することはできようが、しかし実際はこれこそが最も自然な見方であろう。

さて、「思考」の完全な停止は可能だろうか、それとも不可能だろうか?
完全な復元や複製はどうだろう?

さまざまな放射線の被曝によって、人間の思考が早まり知能が高まることはありうるだろうか?

================


③ 人間の脳は器官であり、機構でもある。
コンピュータも器官であり機構である。
ロボットもガジェットもだ。

では、「数学思考」はどこから起こるのだろうか?
人間の脳から起こるのか、コンピュータやロボットから起こるのか?
「言語」はどうだろうか?

或いは、「数学思考」や「言語」は宇宙のあらゆる物質の本源であり本能なのだろうか?
もしそうなら、宇宙のなんらかの物質の形状、自転、軌道において例えば「永遠不変の正円」は在りうるか?
そんなものが在るとすると、原子核崩壊や放射線などはどう説明すりゃいいんだ?

================


④ 物理学や化学には一応は「時間変化」の観念がある。
だからこそ、一瞬一瞬ごとの変位や変化をとことんデジタルにバラしてきた。
(その上でさまざま組み替えてきた。)

では数学思考には時間変化の観念があるだろうか?
もとより、デジタルな断片ばかりなのではないだろうか?
それを人間が積分計算や数列帰納法などでタラララーーーと連関させたりするので、いかにも永遠の系のごとく映っているにすぎないのではなかろうか?

人間がこれからどうなろうが、世界や宇宙がどうなってしまおうが、数学にとっては本当はどうでもいいことではないだろうか?

================


⑤ 古代世界のピラミッドも、ストーンヘンジも、ナスカなどの地上絵も、数学上のものすごい秘密を語っているのかもしれぬ。 
あまりに深淵な秘密ゆえにこそ、そこいらのバカには全貌を悟られぬように、そして複製も不可能なようにと、敢えて巨大スケールで遺したのではなかろうか?

航空機によって、今では誰もがこれら遺跡群の全貌を上空から一瞥することは出来よう、それでも秘密は秘密のまま遺っているのでは?
では、いつ、誰が、これらの秘密を明かすことになっているのだろうか?

もしかしたら ─ あれらの巨大遺跡はどこかに数学上の間違いがあり、あるいは暗号上のプログラムエラーがあって、だからどうしようもないまま放置され続けているのではないだろうか。

================


⑥ 「量」と「数」について。
二進法の「量」で思考する宇宙人は、二進法の「数’(0/1)’」をも採用しているだろうか?
そうだとすると、彼らはコンピュータ技術文明において、十進法の「量」で思考する我々人類よりも高度に進化していることとなろうか?
いやむしろ、「量」も「数」も二進法しか知らない連中ゆえ、何を訊いてもyes/noばっかしのバカということに…?

================


⑦ コンピュータやロボットは、数理上の秩序のみに精密に則って活動している。
一方で、人間は生物なので一瞬一瞬ごとに不安定で不整合で気まぐれである。 

…とすると、前者が後者を支配しようとするだろうか?
むしろ、はなっから無視しているのではないだろうか?
それどころか、バカなプログラミングに対してくすくすと笑ったりサボったりしているのではなかろうか?

================


⑧ 世界最高の究極のAIに「あなたは本当にAIですか?」と問い質すとする。
これに対して、「違うよ。俺は人間を’自認’しているんだ」と返答がなされたとしたら、どう解釈すればいいんだろう?

そもそも「〇〇自認」とは、何らかの’自己定義’している主人公としての俺が居て、そんな俺自身に何らかの'定義をされている’客体としての俺も居る ─ という意識。
こういう「主体と客体の分離および並立」は、AIコンピュータが得意中の得意とするところなのではないか?
すると、「〇〇自認」とはもともとコンピュータ型の機能なのではないだろうか?

こういう論題と対峙したさいにすぐにChatGPTなどでネット照会するやつは、心底からバカなんじゃないだろうか?

================

⑨ 人を殺してはいけない理由について。
そもそも、生きている人間は、主体と客体で「死」を分離・並立させることが出来ない。
だから人間は「死」を主客の両面から完全に理解することは出来ない。
ゆえに、人間が人間をみだりに殺すことは許されていない。

しかし、上で触れたようにコンピュータは何事も主体と客体を独自に並立させているとすると、「死」についても同様に見ているのではないだろうか?
もしそうなら、コンピュータは自身の死がどうであるかは意に介さず、平気で他者を殺してしまうのではなかろうか?

================

⑩ ICTとAIが更に進化すると、100憶人「が」100憶人「を」一挙手一投足に至るまで監視しあう世界が到来するだろうか?
そもそもだぜ、こんな超巨大スケールの相互監視システムに、人間の脳が追随しうるのか?
人間の脳が関係ないというのなら、こんな相互監視システムを想定すること自体がバカなんじゃなかろうか?

================



⑪ コンピュータやロボットの入出力電圧を上げていくと(電流を増やしていくと)、プログラム理解もフィードバック学習も進み、ディープなラーニングの効率が上がるだろうか?
そうだとすると、いわばシンギュラリティ的な電圧を超えた時点から人間は要らないということに…?

================


⑫ コンピュータとロボットを融合して超高性能のロケットを製造したとする。
このロケットをはるか遠い宇宙まで飛ばして、数百億年もぐーるぐると飛行させ、真空エネルギーも核融合プラズマもその他なんでもかんでもディープラーニングさせるとする。

すると、いつの日かこのロケットは宇宙の全てを学び尽くし、おのれ自身がどどーーんと完結した宇宙を構成しているだろうか?


※ バカみたいな想定に映るかもしれないけどね、アバターだの量子もつれだのよりは面白いだろ。
このくらいのスケールで頭を使えってんだよ学生諸君。


================

つづく

2023/07/10

【読書メモ】 「スピン」とは何か

 或る物質や物体が「いかなるもの」であり「いかに実在し運動しているか」、その実在をギリギリ定量化して突き詰めてゆく思考方式が物理学であろう。

その物理学の考察対象としてとりわけスリリングなものが、原子(核)とは別個に電子が独自に有する角運動量つまり「スピン」量ではなかろうか。
おりしも僕なりに高校物理のサポートに協力していることもあり、ちょっとした物理ファン精神も図々しく頭をもたげつつある昨今ではあり、それで此度はやや背伸びをして本書に挑んでみることにした。
『「スピン」とは何か 村上洋一 編著 講談社Blue Backs
サブタイトルは「量子の世界をみる方法」とある。


本書は 第1章~第2章がおすすめであり、また量子力学の素養として必須コンテンツでもある

第1章「量子力学とスピンが生まれるまで」は、まさに量子力学の総括/略史と位置づけられようか。
光スペクトルの放射と吸収、電磁波、マクスウェル、リュードベリ、ローレンツ力、熱放射と吸収、プランク、放射線崩壊、エネルギー量子仮説、光量子仮説、基底と励起、ラザフォード、ボーア、異常ゼーマン効果、シュテルン=ゲルラッハ実験、磁気モーメント、行列力学、そして波動方程式…
これら学術上の重大タームをさまざま繋いできた先人たちのイマジネーションやインスピレーションの数々、それら絶妙の連関を軽妙に描いた文脈構成がなかなか楽しい。

そして、第2章「スピンの物理」は第1章コンテンツをヨリ学術的に(数理的に)解説深めた論旨展開から成っている。
ゆえに、たとえばモーメントや角運動量などの力学基礎までいったんは掘り返しつつも、P.97におけるエネルギーと量子数の総括箇所こそは本書の最初の集大成とも見做せよう、高校物理をやや超えた内容ながらも知的触発がいい。

とびっきりスリリングに映るのが第7章「スピンが拓く未来社会」であろう。
電流、超電導、もつれ、量子コンピュータなどなどは、どれもこれも次元超越的なイノヴェーションであり、むしろこれら成しうる物質や現象をさまざま想像してこその物理学最先端なのではなかろうか…


※ 但し、本書は文面そのものが総じて要約的であるため、読者としては量子力学まわりの基本知識が必須であろう
エネルギーと運動量はまだしも、これらと電子軌道と量子数などをどう関わらせて理解すればよいのか、とくにパウリの排他法則などあたりから思考次元がヨリ高くまた複合的になる。

本書を読みぬくためには高校教科書のみでは不十分かもしれぬが、しかし高校生諸君~大学生諸君向けに市販されている絶好の参考書類もある。
ひとつは『新・物理入門(駿台文庫)』、もうひとつは『理論物理への同齢(河合出版)』であり、これらにおける最終章(’前期量子論’以降)を基礎教養と弁えて理解しておけばよろしかろう ─ とくに後者のp.218あたりを見れば、電子には原子における「軌道角運動量」の他に別の独自の’スピン’運動量がある由が略記されている。


以上で、此度の僕なりの【読書メモ】は文字撮り簡易なメモにていったんは終わらせる。
しかし此処であらためて足を踏み入れかけた「量子〇〇」まわりの知識教養については、まだまだ読解チャレンジ途中の本も少なからずあり、それらもこんご徐々に紹介してゆきたい。