学科指導どころか、ただのアドバイスすらそう簡単ではないということに気づいてしまった。
最近はもう慣れてしまったので、あまり驚かなくなったが…いやいや、それでもやはり時々当惑させされることがある。
それは、どういうことかと言えば。
要するに ─ 女子はちっちゃい頃から既に人生のストーリーの大筋がもう出来上がっていて、それを局面や経緯に沿って具体的に展開しているのである(あろう)。
だから、外部要因による刺激や誘導が、じつに困難。
成るようにしか、成らん。
古代、中世から近代にかけて、世界の知識や学術は、成るようにしか成らぬもの 『ナトゥーラ』 から、意図によって変え得るもの 『アルス』 へと編成が進んでいったとされる。
が、これでいけば女子はずーっと 『ナトゥーラ』 のままである。
『 ナトゥーラ』 はすなわち英語の nature であり、mother nature なのであろう、か。
よくは知らないが、(性)染色体は女性がXXの対になっており、このうちXひとつが機能しつつ、もうひとつは全細胞で不活性化しているという。
これでちゃんと生命としてまとまり、人間という種の在り様を決めているとか。
これが正しいとすれば、男性の染色体XYにおけるYはむしろ「余計」な作為を人体に課していることになるそうな。
だから男性の方が人工的で、外部刺激に感応しやすく、しかも無理を続けるから概して早く死ぬ…??
そして間違いはすぐに消し去ることも出来るわけだ。
だから 互いに触発したり説得したりといろいろ仕掛け甲斐もあるってもの。
だが、女子には何を言ってもむだむだ。
たぶん、一貫した統一モラルのようなものが頑として在るので、そこから逸脱したものにはきっと聴く耳を持たずにシャットアウトしてしまう。
いや ─ むしろ自分たちこそが世界のモラルの中軸であるかのごとし。
こっちが疲れていたりすると、「先生、頑張って下さい」などと声をかけてくる娘たち。
こういう女子の言動に接して、なんだこのやろう!と思わず怒鳴ってやりたくなったこともあった。
が、しかし彼女たちからすれば、当然の施しということになるらしい。
暫く以前に。
ある娘がなんとか志望校に進学し、それで僕が素っ気なく「あー、よかったね、うんうん」 などと応対してやったら…
この娘が非常に不機嫌になって、 「なんで喜んでくれないんですかッ!?」 と大声をあげたのにはこっちがびっくりした。
最初っから(きっとどこまでも)、皆が祝福しあう素晴らしき世界、というストーリーになっているらしい。
「わかった、わかった、頑張ったよ、うんうん」 と宥めてやったのだが、それでもしばらくの間はずっと不機嫌だった。
ことほど、左様に。
女子はいつも完結しており、完結している以上は外部要因で誘導することもきっと出来ないだろう。
否、もともと誘導などする必要がない ─ まあ敢えていえば、適宜「補正だけ」を施してやれば、あとはほっといても普通のまともな世界に導いてくれる。
そう考えれば、むしろ安心して見守っていればいいのしらん?と気楽にもなる。
ただし、重要なことを最後に付記しておく。
もしも学科指導の相手が女子生徒ばっかりだったら、さぞや、楽しいだろうな……というのは傍から眺めてのこと。
実際には、いつもこちらが娘たちから監視されているような状態。
下手なこと言おうものなら、「この先生はおかしい」 「人間味が無い」 などとヒソヒソ声がおこり、それが公倍数となってこっちを包囲しかねない。
いやぁ、このシチュエーションは本当に辛い。
(だいたい、女ばっかしのパーティとかに行くの、イヤだろ?もう死ぬほどつまんないから。)
だから、担当の生徒たちの過半が男子だと、むしろホッとするんだよね。
以上