「先生!あたし、おかしなことを閃いてしまいました!」
「あー?なんだって?」
「ほら!この数式!ねえ先生、この数式は論理破綻しているような気がするんです!」
「なんだぁ?数式が論理破綻しているだと?はっははは、君ぃ、バカを言っちゃ困るよ。数式の論理は破綻しない。というより、破綻しないように数学は出来ているんだ」
「それじゃあ、あたしは頭がおかしいということですか?!」
「おいおい、そう気色ばむなって。あのね、誰だって時々、論理に幻惑されることがある。たしかに、その時は不安になったりもするもんだよ」
「はぁ。でも、この計算式の、ここのところ、△△△△△△△△が数学上どう考えても破綻しているような。ああ、あたしはやっぱり頭がおかしいんでしょうか?!」
「うるさいなあ君は。うーん、なになに?……あっははははは、ほーらほら、この△△△△△△△△は破綻しているんじゃなくて、あくまでも『矛盾』なんだよ。誰もが理解している『完全な矛盾』なんだ!つまり、『数学としては整合している』ということだ。君の頭は全くおかしくない、心配無用だ」
「はぁ、そうですか……でも!でも!それはそれでおかしなことじゃないんですか?だって、どうして矛盾が矛盾のままで…?」
「何を悩んでいるのかなぁ君は。それじゃあ、人工知能に訊いてみようか。世界の知性の結集だ。さぁ、君の気づいた矛盾、△△△△△△△△を入力すると」
「……」
「ほーら、回答を寄越してきたぞ。えーと、『永遠不変の矛盾であることが数学にて証明済みです』 だとさ。はっははは、人工知能の折り紙付きだ!いいかね、君が気づいた矛盾は、僕も知っている矛盾、みんなが分かち合っている矛盾、明日もあさってもだ、永遠にだ、だから、ね、君は何も悩まなくていいんだよ! ─ なんだその顔は?」
(おわり)