2021/09/28

学校や予備校でたぶん教えない英語

日本では依然として、大学進学にては英語が最強の必須科目ということに「なっている」。
そもそも、全世界は多様性を認め合わなければならぬといい、共生し一体化しなければならぬともいい、そのためにこそ英語は必須なのだといい…

さて。
世界の万物は多様であればこそ、さまざまな資源があり材料があり、さまざまな製造工法があり、さまざまな通貨がありさまざまな人間がおりさまざまな取引がなされ、それが科学技術の進展にともなってどんどん活発になる。
こうして、一層のこと我々は多様な生活と人生を楽しむようになるはずである。
だから共生しようというのは、部分としてみればまだ分かるとしても ─ ここでさらに、一体化しようとはいったいどういうことか。
世界人類が同じ時間空間を生きて同じカネを使って同じトラベルにゴーして同じ飯を食って同じウィルスと同じワクチンで同じ日に死ねとでもいいたいのか?
そうなったら、何でもかんでも画一化/分解ばかりのデジタル左翼の世界になっちまうぞ。
ましてや、そのためにこそ英語が必須とは、いったい全体どういう意味なのだろうか?

文字通り、言葉遊びでしかない。
一貫完結した意味なんかねぇんだ。

とはいえ。
大学受験生の諸君はまだ未成年でありつまり真面目であるので、学校だの塾予備校だのでなまじっか英語をギュウギュゥと教え込まれると、ああ英語こそはきっと世界の真理を表現した言語に相違ないなどと、我知らず思い込まされているのではなかろうか。
ましてや、文章構造をSVOCなどで分析する教育手法がずっと続いており、あたかも英語が物理式や化学式のごとく万民普遍の表現技法として映ってしまうようでもある。


だからこそ、本投稿では英語が(言語が)物理式や化学式とどう異なるのかについて、以下にさらっと記す。

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とくに、英語に対する苦手意識を持っている学生諸君(とくに理系指向の学生)に念押ししておきたい。
さまざまな物質/物体による現象のうち、「必ず再現する」 ─ つまり「特定の数式や論理記号やプログラムにバン♪と収まる」 ─ そういう現象をとくに物理運動といい化学反応と称するね。
必ず再現する現象ならば、複数の人間同士で共有認識できる情報ということにもなる。
だから、物理式や化学式と言語は構造上はかなり似ている。
構造は似てはいるが、しかし言語はあくまでも一定数の仲間内でのコミュニケーションを最優先としているため、どうしても’人間自身の思念のブレ’が割り込んでくる。
そのため単語の意味はどうにもウヤムヤなままである。

ゆえに、全世界共通の記号や数学で描かれた全世界共通の物理式や化学式は在るが、全世界共通の言語は存在しえない。
ゆえにゆえに、言語(英語)に苦手意識があろうが、ホントに苦手であろうが、どうってことはねェんだ。
ここまで、分かったか?分かったな。
よ~し君たちは秀才だ。


さて、じっさいのところ、英語は物理式や化学式にどのくらい似ており、どんなふうに’ブレ’ているのか?
これは「前置詞(副詞)」と「時制」に着目すれば分かるのではないかな。

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<前置詞>
君たちの好きな物理式や化学式は、必ず再現されるさまざまな現象を次元や時間や場に応じて分解し、運動や運動量や仕事(エネルギー)を分析表現するものである。
こういう分解や分析は、英語の文章構造でいえば前置詞が明らかに記す。
たとえば;
on ─ 或る物質や物体同士にて(力が)反応し作用して
off ─ 或る物質や物体同士にて(力が)反応せず作用せず
at ─ 或る地点や或る瞬間において(表象か、或いは力が)存在し
to ─ 或る質点から別の質点へ
in ─ 或る次元や領域において
for ─ 或る時間帯や領域において(仕事・エネルギー)
against ─ 或る物質や物体同士が摩擦を起こし
with ─ 或る物質と別の物質が合成して
through ─ 或る時間帯や物体を貫いて
over ─ 或る起点から着点に至って、臨界を超えて

ザーッと思いつけばこんなふうにはなる(正鵠を突いているかどうかは知りませんよ)。
しかし、以下はどうだろうか。


'in one's zone' : 或る人間が何かにおいて集中状態にあるとの意であり、スポーツ中継などでしばしば使われるので耳にしたことのある人も多かろう。
'zone' は領域を指し、'in' はその領域においてである、とすると、ここには力ないし意志の強意は感じられない、それなのにどうして何かに集中していることになるのだろうか。
どうも判然とせぬまま使っている表現であり、これについてキッチリ説明出来る人はいないんじゃないかなと睨んでいる。
('on one's zone' ならピンとくるよ。)


'on your mark' : これは単語をバラしてみると却って分かりにくい表現だ。
'mark’ は 'symbol' などと同様、力の物理量の無いただの表象記号にしか見えないので、せいぜい 'at your mark というべきではないか…?
そう訝ってちょっとチェックしてみたら、ほぅなるほどね、競技によっては 'at your mark' というらしい。
’on your marks' は、「さぁ、力をこめて」くらいの意味がこもっているのだろうか。
ともあれ、こういうのは入試問題には出題しにくいだろう、でも、どうせ英語教育をギューギューと続けるのなら、こういう語義についての問いかけこそが理科と英語の違いを考えさせて面白いんだけどなあ。


'off limits' : 英語講師になったばかりのやつが得意がって使う表現の典型であろう。
じっさい、これは直観的にどうも分かりにくい。
'limit'は何らかの力の上限/下限を意味する一方で 'off'は力が作用しないの意なのだから、「何ら力の制限はかかりませんよ、ご自由にどうぞ」との意味に捉えてしまいがちになる。
ここでは'limit'の意味に留意すべきであり、まあ何らかの仕事が発生する直前までのエネルギーの総量みたいな概念だと思えばなんとなく分かるんじゃねぇのか。
同じくド素人が得意がって使う表現が The sky is the limit.' であり、これは 'sky'が無限の宙空の意だと直感すれば…


'overshadow': なんだこりゃ? 影を超える?ならば或る物質や物体がその影以上のサイズになるとの意か?
'over' は何かを重ねてゆく意があるが、それなら影を重ねていくのだろうか…?
にっさい、これは或る影の上にもっと暗い影を落とすといった意のようではあるが、こんなことって物理的に起こりうるか?

'undermine' :  なんだよこれぁ?もともと'mine'が掘るという意味なんだぜ、更にその下をゆくとは、いったい全体どういう意味なんだろう…?
ここでは 'under'がポイントで、これは力を落とし、仕事を生じることなく、といったニュアンス(だと思う)。
よって 'undermine' とは、相手に悟られぬようにさり気なく評価を下げるなどといった意にはなっている。
'undergo' なども同じように考えるしかない。


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<時制>

物理運動でも化学反応でも、或る現象の発生を時間ごとに峻別して捉える。
これらが「再現される」ならば特定の物理式や化学式の公式と成る。
そうなってこそ未来も再現されるものとして表現出来る。

或る現象が起こっちゃったという事実 ─ 過去形
その現象の再現性(物理式や化学式) ─ 現在形
その現象の時間積分 ─ 完了形
その現象が起っている時間微分 ─ 進行形
その現象の未来における再現予測 ─ 未来助動詞
その現象の再現性の否定 ─ 仮定法

ざっと、こうなる。
これらをもうちょっとコチョコチョ組み合わせれば英文法の時制は理解したも同然だ。
簡単だろ。

ただし、ここに人間の意識や思念が入り込むとやっかいだ。
上に書いたとおり、人間の意識や思念はウヤムヤのホワンホワンに出たり消えたりするので、おのおの単語をみればむしろ時制はバラついている。
ここのところ、なまじっか理系指向の強い学生ほど悩むようだ。


端的な例としてこんなのがある。
'I guess she left home.' 
ここで彼女が家を出たという事象は一度きりの特定事実であるが、そう憶測している俺自身の意識は現在形つまり ’いつものように憶測しちゃう俺’ となる。
この文章で分かるとおり、たとえ言語構造上は物理式や化学式に似ているとはいえ、単語を個々にみれば時制が一致するとは限らない。
というより、人間による言語表現にてはむしろ時制は一致しない。

'She remarked that I eat too much.' :
俺がバカ食いするのは(物理式や化学式のごとく)いつもの真実だが、わざわざそう言いやがった彼女の発言は過去の事象である。
やっぱり、文章としては時制の一致はない。

むしろ、時制が完全に一致している文章の方が希少な気もする。
それらは物理式や化学式のように再現可能で普遍的な真理を記した文章のみであって…

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もういちいち書くのも面倒なのでここいらでやめておくが、主旨は分かっただろう。

ともかく、英語は(言語は)構造上は物理式や化学式にかなり似てはいるものの、人間意識の発動による単語そのものまで落としこんでみればじつにウヤムヤである。
よって、単語そのものの用法および特定の熟語を少しでも多く覚えるしかない。

受験生諸君、こんごもしばらくは面白くもなんともない時節が続くことになろうし、英語の勉強は理科や数学のような統一的/完結的な陶酔感など期待しようもないが、地道に知識を増やしていくことだね。
(※ こんなだから結局は女子の方が淡々と英単語知識を増やしていくわけで、よって英語の得点が高くなるわけで、そのためにこそ大学入試にて英語の配点が大きくなっている気にさえもなるが、 当分の間はこんなふうに事態が進行するかもしれず、まあしょうがねぇんだ我慢しろ。)


以上