学生諸君!
おのれの人生の物語を思い出せ!
そして、取り戻せ!
おのが肉体、おのが感覚、おのれなりのさまざまな論理や命題、そして神々の逸話、そういう人生の本に、本のチャプターに、ストーリーに立ち返り、そして続編をどんどん書き綴れ!
非連続で無文脈なデジタルの断片に陥ってはいけない!
ただの数や文字や電子量子にバラされてはいけない!
なるほど、ただの数や文字ならば、なんぼ関数化し微積分しようとも元の数や文字に戻りうる。
しかし君たちの肉体は、感覚は、そしてさまざまな論理や命題や神々は、電子でも量子でも関数でもないんだぜ。
遥かな昔からずっとずっと連続し連綿し受け継がれている人間の物語なんだ。
あらゆる生きとし生けるものと同じなんだ、
芸術やスポーツと同じなんだ。
ひとたび断片にバラしたらもう元には戻らないんだぞ!
どんなスパコンや量子マシンやAIを使ってもだ!
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時代が下るとともに、世界からあらゆる人生の物語が断裂させられようとしている。
あらゆる物語が無文脈に帰されようとしている。
何故だか分かるか?
分からなければ聞け。
分かっていても聞け。
千差万別に変化し続ける産品や製品から、「人間だけが」しかも「確実に」利益をあげるにはどうすればよいか。
それらをさまざまな実体として個別に取り扱うのではなく、有価のデータ情報とし、それらデータ情報をあっちこっちへホイホイと転がしてカネと交換すればいいんだ。
ならばそのデータ情報はどんな数理属性が望ましいか、もちろんコンピュータともどもあらゆる事業関係者が速く複製し速く転送できる画一フォーマットが望ましいに決まっている。
画一化すればこそ、事物をデジタル化(電子化や量子化)も可能、そしてデジタル化すればするほどその事物による利益最大化を図れるわけ。
こうして、あらゆるデータ情報は出来るだけちっちゃくちっちゃく無差別な均一ビットにミリミリミクロンと裁断されていくんだ。
分かるね、この一連のデジタル思考イノヴェーションは割り算と引き算ばっかし。
これで大いに喜んでいるのが多数決や確率を駆使する人たち、たとえばカネ貸しであり株主であり政党でありマスメディアであり、そして労働手配師たちであり、もっと巨大に考えれば世界の共産党だ。
これぞデジタルニヒリズム。
さぁどうかね?
君たちはただの数でありただのビットでしかないのか?
多数決や確率の変数でしかないのか?
君たちがそっと愛撫し愛玩し続けている、ささやかな秘密のあたし、秘密の俺さま ─ しかしそんなものはどこかの誰かのブロックチェーンの一欠片…?
そういうことでいいのか?!
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さぁ、思い出せ!
君たちは単なる物質や物体ではないし、交換財でもカネでもないんだ。
おのれなりの人生の本を常に書き足していく人間なんだぞ。
君たち一人ひとり、新たなストーリーはいまの延長にある。
いまの連続をもってこそ明日があるとも言える。
だからこそ、早く続きを書き足してくれ、次の一歩を踏み出してくれ、続きのチャプターで俺はどうなるんだ、あたしはいったいどうなるのと、君たちの本性がもう待ちきれなくてウズウズしているじゃないか。
昨日観測した天体こそが今日の星座に音符を加え、今日紡ぎあげた星座の譜面こそが明日の銀河のオーケストラを大編成していくんだ。
以上