2022/07/31

【読書メモ】高校生からわかる統計解析

およそ数学というものは、'現在その時その場の'さまざまな'量'と’事象’をとことんデジタルに’数値情報化'し、さらにそれら情報群を’無限の未来へと冷徹に'複製し延長続けてゆく、まこと人情のかけらもないおそるべき思考術…まあ概ねそんなようなものであろう。
こんなふうに僕なりに謙虚に慎ましく記している理由は、もともと僕が高校時代からこっち数学と相性が悪く、だから嫌いで、だから総じてバカになっちゃったと自認しているためである。

とはいえ。
数学のうちには、’現在の情報群'をもとにむしろ'直前までの事実可能性'を精密に論証してゆく地道なメソッドもあるようで、その典型がいわゆる確率論であり、その応用として「統計’解析’」と銘打たれたカテゴリーであろう。
そして、僕なりに電機メーカ時代のマーケティング活動にてもこれらを若干ながら活かした経緯あり、そんなだからこれらについては一方ならぬ愛着も有るのである。
併せて、先の参議院選挙はもとよりあらゆる選挙にてのいわゆる’出口調査’の妥当性についても、あらためてカッチリと理解してみたいとは考えていた。
そこで今回手にした一冊がこれだ。
『高校生からわかる統計解析 涌井良幸・著 ベレ出版

巻頭箇所からパラパラと捲ってみたところ、確率や統計にかかる基本数学のスマートな総括、或いは数学小辞典の抜粋切り貼り合わせのごとく、各ページの文面論旨が完結的にしたためられており、とくに単純明瞭な図案が有難い。
またExcel表計算における関数式など実践上の引用も随所にふんだん、よって学生のみならず実務者にとってもクイックリファレンス。
そしてなにより、『専門数学への架け橋』とのサブタイトルがまことエキサイティングだ。
受験勉強に辟易しているちょっと贅沢で生意気な高校生諸君、ゾクゾクしてこないか?


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但し。
本著者も随所にて釈明気味に述べられているように、本書は総じて平易な要約型の文面を採っていればこそ却って指示代名詞の対象が不明瞭に映る箇所が散見され、よって本書読解にては相応以上の想像力ないし常識力は必須。
さらに俯瞰的にいえば、文面が各ページごと完結的であるがため全巻一貫したコンテクストも捕捉し難く、いったいいつになったら統計「解析」の講釈が始まるのかと気の短い読者は本書を閉じてしまうかもしれない。

それでも一応はトータルなアブストラクトは置かれており、それは本書冒頭における「プロローグ」の章、とくに「統計学の分類」「概観」である。
ここのところさっと了察すれば、なぜ本書後半部の大半がベイズ統計学に割かれているのか、そして多変量解析とのかかわりはどうか、この分野における世界観のごときを伺い知る上での一助となりえよう。

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さて、「高校生からわかる」と冠された本書にてじっさいに引用されている数学について。

たとえば統計データの平均期待値や偏差や分散、さらにそれら複合系としての確率変数や確率密度ベースでの正規分布だ標本分布だといったあたりまでは、高校の数Bだか数IIだかにて学ぶ範囲ではないか。
なるほど正規分布にかかるガウスやネイピア数などなどは超ウルトラ難度の数学ではあろうが、そこはそれ斟酌しつつ各ページに目を通すこと可能だ。

そして高校生諸君にとっては、本書p.89以降の母集団と標本平均の項あたりから第3章あたり、最尤指定法や中心極限定理や母数の区間推定公式(信頼度)などなどが新たな勉強の扉を開いてゆくのではないかと察している。
また確率論に則ったひとつの応用主題は第4章の帰無仮説と対立仮説そして仮説棄却域などであり、ここは多段的な発想を磨く難所のひとつといえよう。
さらに、第5章以降のベイズ確率やベイズやベイズ統計学は、むしろ総じて易しめの総論が丁寧に展開されているので、ベイズという呼称に恐れおののくことなく果敢に読み進めてみたい。

尤も、以上は高校数学についてさして精査していない僕なりの適当な見立てなので、興味関心の有る高校生/大学生諸君はともあれ本書を一瞥することお薦めする。
同じ理由から、今般の僕なりの【読書メモ】としては書籍コンテンツにおける数式類の引用略記を差し控える


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※ なお、本書コンテンツからは外れるが、ふっと閃いたこと。

全世界の人類がいわゆる新コロ感染フィーバーに踊らされて早2年が経とうとしている。
さてウイルスが我々ヒトの人体細胞遺伝子と共存共栄するものだとすれば、我々の身体は新コロ集団感染によって「何らかの進化(退化)」を成してきたはず。
(たとえばだが、体重が増えたとか、指が太くなったとか…)
これら身体における「何らかの進化」の度合いもし定量化出来るならば、それらからむしろ新コロの総量を精密に解析できるのではなかろうか。
ここのところ、スパコンやAIは、そして医学界は、どんなふうに捉えているのだろうか?


以上