2012/12/20

まごころ

毛糸のマフラーを編みかけて、彼女はふと手をとめた。
どーれ、どんな感じかしら。
ああ…、やっぱり、よーく確かめてみると、ところどころ編み目にムラがある。
やっぱり。
これはダメね、と、彼女は少しだけ逡巡し、ふぅとため息をついた。
それから、別のマフラーを手に取り上げる。
こちらは既に以前から買っておいた、つまらない安物。
まあ、こんなところでいいわね、あの人にはこんな程度で十分、と彼女はひとりごちた。
それでも。
せっかくのクリスマスだし、このままではあまりに芸がないし、なんだか、かなしい。
だがその時、ああそうだと閃いたことがあって…そのまま約束のレストランに向かう。


レストランに着くと、彼女は入口からそっといつものテーブルを見やる。
居た ─ やっぱり来てくれたんだ、あの人。
俺なんかと話をしても、つまらんだろう、でも俺にとっては気晴らしになるから、まぁ付き合ってやってもいいぞ。
…などと突き放したような言い方ばっかり、でも一度だって私との約束をすっぽかしたことはないあの人が、真面目なだけのつまらないあの人が、いつものテーブルで待っている。
さぁ、そうなると。
彼女は隣接する喫茶店に素早く駆け込み、持ってきた安物マフラーを手際よく折りたたみ、それに結構な値札を巧みに取り付けて一流百貨店の包装紙で包み、丁寧に封じて、はい…これで一丁前の高級ブランド品が出来上がり。
ごめんなさい、ごめんなさい。
誰に、ごめんなさい?
私に、こんな卑怯な私に、と早口でつぶやきながらも、もう一度包装の具合を確かめる。
そして、注文した紅茶が来る前にさっと立ち上がって勘定だけ済ませ、それからあらためてレストランに入っていく。


こんばんは。
やあ、メリー・クリスマスだね。
お変わりなく?
全然。
ねえ、プレゼントがあるの、と彼女はバッグの中から包装を取り出す。
これ、上等な毛糸で編んでいるマフラーなのよ、ちょっと捲いてみてよ。
ふーん、どーれ。
彼がぱさぱさと包装紙を開き、値札をちらりと一瞥しつつそのマフラーを首に捲くさまを、彼女はじっと見届ける。
大丈夫だ、分かりはしない、バレやしない、この人がいちいち細かいこと詮索するはずがない。
わぁ、本当だ!と、首にふわっと捲きつけた彼が、高い声をあげた。
これは暖かいなぁ、それに、高級な肌触りだ。
…でしょう、そうでしょうね、そうよ、そうに決まっている。
彼の顔がすこし上気だっているのをみとめ、彼女は胸のうちで一瞬だけうわーんと泣き声をあげて、それでも平静をつとめながら、もうちょっと大人っぽいデザインの方がよかったかしら、とか、でも人気商品みたいであまり洒落たものは残っていなかったのよ、などと口ごもった。

す、と彼が制した。
なあ、俺の方もプレゼントがあるんだよ、と、今度は彼が少しだけ口ごもった。
そして。
あのね、毛糸の手袋なんだけどね、これ。
彼から差し出されたその包装の具合を見とめて、彼女は思わず吹き出しそうになった ─ ああ、これは…こんなデタラメな包装があるわけがないじゃないの!
なんという展開だろう。

彼が、次第にしどろもどろの早口になる。
あ、あのさ、店員曰く、だね、これはなかなか凝った編み方なんだってさ…ほらこれからもっと寒くなるかもしれないだろ、だからね、そりゃあまあ多少は高かったんだけど、でもせっかくのプレゼントだと思って、思いきって買ったんだよ…。
うん、そうね、うん、と彼女は上ずった声を押し隠そうともせず、半分ちぎれた値札が不器用にくっつけられたその手袋を取り出した。
指先から、奥までぐっと差し入れる。
あぁ、本当だ、本当に暖かい。 
彼女はしばしうつむいたまま、泣かないぞ、泣くもんかと心中懸命に叫び続けた。
自分のためじゃない、彼のために…だからこそ泣かない、泣いちゃいけないんだ!
それでも ─ やっと彼女は顔をあげて、彼をまっすぐに見つめた。
あっ!
彼もまっすぐに彼女を見つめていた。

ああ、もしかしたら。

もしかしたら、虚構のうちにこそ本当のことが込められているのかもしれない、そのことがお互いに今のいままで判らなかったのかもしれないし、いちいち確かめようともしなかったのかもしれない、ということは彼にも分かっていたのかもしれない
…だから、だから、もしかしたらこういうのが。

こういうのが無償のまごころのようなもの、かもしれないなぁ ─ と呟いたのは彼の方で、それからさらに、なんでもないよ今の言葉は無意味だ、なんでもないから忘れろよ、といつもの彼に戻った。 


突然、店長が現れて、びっくりするほどの大声で挨拶を始めた。
皆様!今宵は私ども特製メニューを数多く取り揃えております、どの品も通常の半額料金で結構でございます!
半額じゃぁ、おたくらも本気にはなれないだろう、と誰かが冷やかし声をあげた。
いいえ!と店長がいよいよ高らかに続けた ─ 今宵はとびきりの料理を皆様に食していただきます!私どもがそう決めたのです、これからただちにとりかかります!さあご期待あれ!

おわり

2012/12/12

おもしろゲーム


先に海を越えていく鷹についてちょっと載せてから、もやっと考えていることなんだけれども。
たとえば、『渡り鳥』というゲームはないものかな?
(たとえば)グーグルマップみたいなのを起用しながら渡り鳥の渡航ルートを探りつつ、うまく着陸地点に先回りして給餌出来れば1ステージクリア、というゲームを作る。
だんだん難度が上がっていき、幻の火の鳥かなにかの複雑な飛行ルートを計算させてみたりして。
まあ、こういうのが有ったら、生物科のファンのみならず多くの学生などが面白がってくらいついてくると思うんだけどねえ。

ゲームの本質は、プロセスにおける不確実性の高いスリル、試行錯誤の末の問題解決と、様々なパラメータの増加…といった要素を加味しているということでしょう。

似たようなものでは、女性客の行動パターンを先読みして品揃えと売り場配置を工夫する『ザ・バーゲン』とか、童心に帰って『凧揚げゲーム』とか。
もっと大胆に気圧配置から天候を当てる『予報でGO! 』とか『惑星探査ゲーム』とか。
ああ、そうか、こんな程度のものはもうとっくに出回っているんだろうなあ。

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ほのぼのとした家庭向け、仲間内向けのやつでは、『おにぎり』というゲームがあったら面白いかもしれないよ。
中に梅干とか昆布とか入れて、海苔やとろろで巻いて、相手に食わせる。
相手が「これはおかかが入っているね」と憶測し、いや実はタラコだったよ、ざーんねん、当たっていたらもうひとつ…
だったらサンドイッチというゲームだって出来るが、まあそんなことはともかく、もっと発展形で『回転寿司』というのはどうかな?
板前を雇い、新鮮なネタをしこんで、ベルトコンベアに並べていくゲーム。

『朝顔を植えよう』みたいなガーデニングゲームとか、『熱帯魚』とか『セキセイインコ』とか『餌やりさん』とか、思いつくまま挙げていけば、ゲームの題材などいくらでもありそうだ。
 
ちょっとドギツイやつでは、タバコの銘柄によるパチスロって無いのかな?
たとえばシガーは高得点、マールボロやラークは中得点、ゴールデンバットはスペシャルフィーバー、などなど。
パチスロやってると(たまにだよ)、どうしてもタバコ吸いたくなるでしょう? 
だからシチュエーションにぴったりフィット、実際にタバコ吸いまくるユーザーが増えるでしょう。
こういうのを営業センスっていうんだよ。
子供が遊ぶかもしれないから、ゲーム化は難しいかな?

それにしても、『年末ジャンボ』とか、『マルコ=ポーロ』『百人一首』『阿倍仲麻呂』などのゲームは実際に数学や歴史の学習効果があるから、もっと普及しても面白いと思うんだけどなあ。  
…と、ここまで発想が拡大すると、必ず出てくるのが著作権うんぬんの問題だろう。  

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著作権うんぬんについて考えると、もう面白くもなんともないので、さらにいろいろ思いつくまま。
じつは前々から、あったら面白いのになぁと思っているゲームがあって、実在するかどうか知らないが、ずばり『忠臣蔵』
松の廊下、復讐計画と藩士説得、吉良邸マップ入手、襲撃決行、諸藩の絶賛と歓待、武家体制と切腹処分といったステージがあって。

いや、これは実話に基づいているからゲーム化はちょっと…ということになるのなら、信長の野望も第二次大戦シミュレーションもゲーム化は出来ないということになろう。
だから『カミカゼ』という戦艦撃沈のゲームも、(特攻機の側であれ、戦艦守備側であれ)実現は難しいのか。
けして悪ふざけのつもりはなく、戦闘ものとしては普通の銃撃戦などをはるかに越えたスリリングなゲーム化が可能だと考えているんだけど。

復讐物としては、『モンテ=クリスト伯』というのも面白そうで、これは忠臣蔵やカミカゼとは異なって実話ではなさそうだから、ゲーム化も比較的簡単なのではなかろうか。
それでも著作権が、となるのだろうか。
ともあれ、言わずと知れた巌窟王、流刑の島で掴んだ財宝を元手にして、かつて自分を陥れた成り上がり連中を経済的にどんどん追い詰めていく…と、まあだいたいこんな感じの蓄財ゲーム。
フランスは音楽や徒党ムードがどうも気に入らないが、小説はとてつもなく豪放でダイナミックな展開のものが多いので、ゲームにしやすいと思っている。
 
同じくフランスもので、これも前々からぼやっと考えているのだが、『ルパン』 というゲームも有るのだろうか。 
虚勢ばかりの卑怯な金持ちからどんどん盗みまくり、貧しい女たちを救い、ルパン結社を拡大していくという大冒険ゲームだ。
警視庁ガニマル警部を騙しながらの大盗賊、数々のミステリーと冒険、外人部隊への志願、アメリカの黄金秘境探検からシャーロック=ホームズとの対決に至るまで、エピソードには事欠かない。
やっつけてステージ完了、じゃなくて逃げ延びてステージ完了というのが『ルパン』ならではの仕掛けで、面白そうだと思うんだけどね。 

しかし泥棒ものでも、『オレオレ』みたいなのはいただけない、弱い老人ばかりターゲットにしているのが全くけしからん。 
こんなものゲームにしてはいかん。
まだ『ラスコリニコフ』みたいなゲームの方が、哲学性が高いものになろうか。

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そういえば、『衆議院選挙』というゲームも面白そうだ、実名あげなければどこからも文句出ないだろう。
あなたは○○県の△△選挙区から、もしくは比例代表区から、国会議員を目指して得票活動に奔走します…マニフェストは減税、原発、TPP、米軍基地、高校無償化などから3つまで選択可、修正も可、無所属も可、期日前投票オプションあり…さあ現職を打倒して見事当選を果たしましょう!
こういうゲームって、「ふざけるな」と衆議院から叱られるのかな。
…というより、なんだかよく考えたら凄く不快なゲームだから却下。
『大統領になろう!』とか、似たようなもんか。

まだ『発電所をつくろう』とか『地下鉄の統廃合』などのゲーム方が理知的で面白いと思うけど、これまた「ゲームとは何事か」と叱られてしまうのだろうか? 
セキュリティ上もダメ、工業所有権でもダメ、著作権上もダメ、道義も無い、となると、ゲーム化はどうやっても無理なのだろうか。
密かに作っている奴らは、どうなるのだろうか?

いや、市販のゲーム化が出来ないということであれば、だよ、うちうちでそういう「すごろく」みたいなのを作って「ここに200,000 kWの火力発電所を設置します」などと「無償で」遊ぶのもダメなのか。
それどころか、軽々しく日常の冗談の俎上に上げることすら出来ないわけか?
ほーら。
このあたりから難しくなってまいりました。
僕はもうどうでもいいけど、 これは十分考えるに値する問題ではなかろうか。

以上

2012/12/09

女子は放っておけばよい? ②



(1) いや、もう、ともかく、こっちが何言ったって話半分しか聞いてないんだから。
女子というのは、なんだか一人でモゴモゴ言っているかと思えば、すぐに皆が同調してモゴモゴ言っているわけで、そういう共有力というか常識力というべきか、むしろ男子よりも優れているんじゃないかと思われるので、放っておいたほうがよいや、ということになる。

男子は成長するに従い、なんでも「人間以外のもの」に分解し、還元し、まあモナド単子とでもいうべきか、そういうレベルにまで落とし込んで、それから厳密に是非を判断したいんだけどね。
だからどうしても理屈だけになりがちなんだよ。
それで気位が高いとか口先だけだなどと、女子に批判されたりするんだけど、もちろん特段気取ったり威張ったりしているわけではない。
一方で、女子はつくづく逆だね、いつでも、全部、何もかも人間ありきで、人間単位で考えているようだから、人間の常識力が高くなるんじゃないかしら。

常識といえば。
女性は地図が読めない、とか、男性は外国語が苦手だ、とかいうが、これはたぶん正確ではない。
女性は地図が読めないのではなくて、たぶん自然環境や居住空間などが地図に記号化されているのが嫌なんじゃないかな、と察する。
その証拠に、地図がなくても皆でわさわさと群れて移動しながらちゃんと目的に到着してしまう。
いくら適当な嘘を教えても、どういうわけかちゃんと束になってやってきやがる。

(一方で男性は外国語が苦手なのではなくて、知識を詰め込むのはきっと女性よりも得意だが、自分の納得出来ないことや関心の無いことを読んだり語ったりするのが苦痛でたまらないから、出来るだけ黙っているのに過ぎない。)
    
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(2) しかし。
放っておけばよい、では済まされない時代がじきに到来するのではないか、と男性として心配もしている。
女性たちによる世界侵略が、徐々にではあるが確実に進行しているのではなかろうか。

既にその予兆が多く顕在化している。
たとえば、予備校や健康サークルや家電量販店や旅行代理店はじめ、サービス産業の多くは、女性のクチコミというものを極めて重視している。
それは、クチコミは必ず正しいと女たちが信じていて、だから本当にクチコミが正論になり、それでいよいよ女性客が増えるからなんだね。
そういう女たちの相乗効果を大いに期待して、広告が女性客向けのものになったり、○○ネットみたいに女性向けに耳障りの良いトーンで「これらぜんぶあわせて、なんと2万円ですよ!みなさん!」などと喋ってみたり。
それどころか、営業そのものも女性に任せるのがよい、ということになる。
いつかも書いた記憶があるが ─ (特定の技術製品や危険物は別として)、汎用品でかつ数の勝負が問われる製品やサービスは、絶対に女性が営業したほうが良い。
そういう量販型の製品やサービスは、女性が女性と価格交渉や納期交渉をした方が、早く一気にまとまるに決まっている。

じじつ、そういう産業が時代をおうごとに増えているんでしょう?
サービス産業が増えていき、消費がGDPを占めていくという現代の一連の経済ダイナミズムは、みんな女性向けのシフトなのではないか?

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(3) …という圧倒的な奔流について、大半の企業もとっくに気づいているから、女子採用はどんどん増えているだろうし、これからも女子の消費購買層の拡大とともに女性中心で運用されるサービス業が増える。
そりゃ確かに、雇用機会「均等」の見せかけ上、採用条件で「女性のみ可」などと記せないもんだから、しぶしぶ男子も募集しているが、男子の応募書類などは人事勤労部門が予算消化のために仕方なく右から左に転がしているんでしょうよ。
で、いやいやながら男子の応募者とも面接なんかしちゃって、終わったらとっととシュレッダー行きじゃないかな、と睨んでいる 。

もちろん、この傾向がずっと続けば、とりわけサービス業などはおそらく大半が女性従業員だらけになるし、そうなると企業の法務も総務も人事勤労も女たちに乗っ取られるから、労働協約も服務規程も女性向けにどかどかっと改編されるだろう。
そして…いずれは政府も裁判所も女たちにジャックされ、労働基準法そのものの大胆な改編にもつながろうか、と想像したりする。
そうなると生理休暇どころか数年に亘る育児休暇取得も当然のごとくで、かつ女性の方が高給取りになっていたりして。
そこで、男性がそーっと小声で非難でもしようものなら、女たちがガーガーと何十人も束になって、「何言ってんのよ!彼女が居ない間あんたが徹夜して頑張ればいいじゃないのッ!男だったらそのくらいしなさいよッ!」 などと吊るし上げのリンチ状態か。
これは考えるだけでもうんざりする情景だぞ。

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(4) どうしてほとんど議論されないのかしらないが、(おそらく男たちが必死になって隠しているのだろうが)、未来予測の最大のポイントは、女性たちが需要面も供給面も牛耳ってしまう恐怖の世界の実現にあろう。
文字通り、世界的に経済成長(=規模の増大と機会の拡大と対人品質の向上)に従い、こういう展開が予想される。
そうなると、「外国の女性はもっと男性に尽くしているよ、黙って低賃金労働に耐え忍んでいるよ」 などと言い返すことも出来なくなる。 
ああ ─ どうしてこんなことになったのだろうか。
やっぱり女に参政権を与えたり、大学に入れたり、雇用機会均等法などを通したりしたのが間違いだったのではないか。

それでも。
男性のように、「本当にこれで、正しいのだろうか」 「俺はこんなことで、よいのだろうか」などとひとりひとりが真摯に自問自答してくれれば、まだ女たちに「懐柔」や「買収」を仕掛ける余地もあろう。
しかし女たちには 「本当に」 も 「よいのだろうか」 もへったくれもないわけで、とにかくワーワーと多勢にものを言わせてなんでも通すだろうから、騙しようがない。    

古来、フランス革命や米騒動などのように女たちがワーワーと暴れて、男性の美しき秩序を破壊してしまった例は多いという。
数十年前のアメリカ大リーグでも、労働者の女性たちを無料で観戦に招待してやったら、ワーワーとものすごく集まってきて、もう試合展開などいっさい無視、ファンの選手にひっきりなしに嬌声をあげたり、ものを投げ込んだり、椅子を壊したり、挙句に集団ヒステリーを起こして球場を燃やしたり 
─ という戦慄の記録が残っており、だから女性感謝デーのようなものはスポーツではタブーになっている。 
してみると、中国の女性の纏足というのは実は偉大な叡智であったのかもしれない。
そういうこと分かっていて、20世紀後半になってから女たちを野放しにしてきたのはどういうわけであろうか?
もう、手遅れなのであろうか?


以上

 

2012/12/02

生物科のヒント? ─ 海を渡る鷹


たまたま、放送大学講座をテレビで眺めていた。
放送大学の講座の大半は、放送時間枠の都合からか、あくまで一般教養のレベルで既存の学術のフォーマットを概説するに留まり、さほどアカデミックな分析も飛躍もなされぬため概して退屈。
が、中には想像力を存分に刺激してくれるものもある。
そのひとつが、鷹の飛行ルートの研究についての講座。 

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そもそも渡り鳥は、鷹のような大型の猛禽類もふくめて、驚くほどの距離を飛行し(数万キロにも及ぶ)、しかも季節に応じて一定のルートで往復している。
この飛行ルートを研究している分野があり、実践的なスタディが進んでいるという。
さて、ここで、ある鷹に「電子タグ」をつけて、人工衛星経由でその飛行ルートを追跡してみる。
いやぁ、この追跡データは本当に面白い、下手なゲームよりもよっぽど面白い鷹のグレートジャーニーである。

ハチなどを捕食するこの鷹は、飛騨山中から西へ、西へと数日かけて徐々に移動し、やがて九州最西端に到着する。
そして、どういうわけか?この鷹は東シナ海をノンストップで一気に飛行して横切り、中国に入るとまた数日かけて徐々に、徐々にと陸伝い、そうやってミャンマーに入る。
そこでまたまたどうしたわけか、1ヵ月以上そこで滞留しほとんど移動しないらしい。
それでもやがて、鷹は何かを思い立ったのか、タイ、マレーシアと半島伝いに数日かけて南下し、インドネシアまで到達する。

さて、季節が変わる。
この鷹は今度は逆ルートで帰ってくるのだが、(いや、帰ってくるというよりむしろ日本にやってくる、というべきかもしれないが)、このリターンジャーニーのさいにはまた陸地を数日かけて徐々に飛行し、なんとこんどは朝鮮半島北部まで辿りつく。
そこから、また海をノンストップで渡り、九州西端を経て飛騨山中まで飛んでくる。 

もちろん、ここで最大の「謎」は、東シナ海のノンストップの飛行である。
餌場の無い海の上を、いったい何故に超えていくのかということ。

たかが鷹に、どうしてそこまで拘るのか、と思われるかもしれない。
しかし、何しろ人間をはるか超越したその行動距離、その特定の行動パターンであって、これに着目しないほうがどうかしている。
だったら他の渡り鳥でもいいじゃないか、と言われるかもしれないが、でもとりわけ鷹に注目したくなる理由は、鷹が鳥類の中でも図抜けて能力が高い(つまい賢くて強い)から、かつ、群れではなくたった一羽だけでも飛んでいくからである。

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で、ここからが科学的な?想像力の出番である。
いや、むしろ科学というものは実は想像力と実証の連続であろう ─ かもしれないが、科学的な素養などほとんど無い僕であるから、ここでは好き勝手な想像力だけを発揮して記しておく(笑)
ゆえに、この想像力が科学的な触発たりうるかどうかは判らない。
ともあれ、想像力を刺激する疑問点を収斂すると; 

(1) 鷹は何を認識しながら長距離を飛行するのか
(2) 鷹は何を遺伝的に記憶し、それは何を意味しているのか
(3) なぜ、強い個体なのに遠距離を移動する必要があるのか


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(1)については、鷹の体内に磁場のセンサーがあって、きっと太陽や星座の位置を把握し、それで方位が判るのでしょう、とか。
まあいろいろ仮説ないし実証はあるようだが、それは方位認識の説明ではあっても、「なぜわざわざ海を超えて飛行するのか」についての説明にはなっていない。
ハチを捕食する鷹が、なぜ?海を超えて?
なんというか、人間には客観的に捕捉しにくい要素、たとえば餌のハチの微妙なにおい、周波数、などなどを、鷹ははるか海の向こう数百キロ以上も離れて感受し、それで一気に海を超えていくのかな、とも想像可能。
いや、遠距離を直接ではなくとも、他の生物種から間接的にハチの状況を感受していることも想像してみたくなる。
しかし、基本的に一羽だけで行動する鷹が、他の個体や他種の生物からどれだけ影響を受けるのか?
   
なるほど、たかが野良猫でさえも、時間感覚や嗅覚においては人間をはるかに凌ぐ。
ミャオーゥしか喋れないくせに一丁前に縄張りがあって迷子にはならないし、メシの時間を覚えているし、「やさしいお姉さん」と「いやなやつ」の区別が出来ている。
まあ、人間には判らないが、動物は独特の電磁波(脳波も含めて)などを感受しているのは確かなようで。
鷹ほどの生物ともなれば、 気候や気温や磁場に影響されているのかもわからないし、CO2の微妙な濃度差を感受しているのかもしれないし、太陽の黒点の位置などに関係しているのかもしれない。
しかし、だ。
それにしても、一体何故この鷹はインドネシアから更にオーストラリアやインド方面までは飛んでいかないのか。
ヒマラヤ山脈などが、捕食するハチの種の断層となっているのだろうか。
と、なると、むしろハチや他の昆虫種の分布を分析したらどうなるか、と想像力はさらに飛躍する。 


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…という具合に、(1)について実証もなしに本投稿は次に進めちゃうわけだが、ともかく(2)については、もっと多元的に想像力を触発される。 
なにしろ鳥類は恐竜の生き残りだとされるほどの、古いふるい種族なのである。
その「古さ」に着目する。
すると、たとえば日本と大陸がまだ地続きだったころに餌を求めて飛行したその記憶が、この鷹の遺伝子に残っているんじゃないか、と想像が出来る。

いわば、飛ぶ化石のごとし、否、化石どころではない、現に今も生きているんだからね。
事実、化石は放射性同位体の半減期の電子数変化から?その年代記を推定しているらしいが、実際にこの鷹の遺伝子に基づく行動を精密に峻別し、分析し、そこからかつての在り様を逆算出来たらどうなるか。
能ある鷹は爪を隠す、というが、爪や嘴や眼や羽毛が古代から現代までの多くを語ってくれそうな気がする。
そうなると、もう化石の年代記どころではない。

むしろ地球史の宅急便というべきか。
この鷹がはるか遠い祖先から受け継いだ遺伝的な長距離飛行パターンによって、はるか太古の地表の条件、大陸の分布、CO2の量、植生や昆虫の分布や、気候変動の実相や地磁気の変化すらも分かる、かもしれない。
と、いうことは。
これからの地球がどうなるか、磁場がどうなるか、環境や気候がどうなるか、それら将来像もあわせて判るかもしれない、ってことじゃないか。

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…と、ここまでは何だか当たり前っちゃあ当たり前のことばかり書いていて、大した想像力も動員していないのが申し訳ない。
だが (3)についての疑問も、やっぱりありきたりの疑問でまとめてしまうところが、素人というか門外漢の限界なのであって、まあ許して下さいな。

とりあえず、鷹の鷹たるゆえんは、おのおのの個体がとにかく強いので、群れる必要がない、というところ。
であれば、長距離を移動する必要もない、と、とりあえず考えてしまう。 
また、群れないから他の個体と共鳴しあったりする機会も少なく、だからリョコウバトのように群れて長距離を飛んでいくことはないのだろうな、とも思い当たる。

ここですぐに連想してしまうが、人類の祖先であったネアンデルタール人は個体としての腕力があまりに強かったので群れることがほとんど無く、それで環境変化に対応するだけの知性を醸成出来なかった、という。
と、なると。
群れない強者というのは進化における発展形なのか、それとも退化のステージにあるというべきなのか、むしろ判らなくなってくる。
また、強者はすぐに地元のボスに居座れるから、なおさらのこと、遠距離を移動する必要などなかろう、とも考えられる。
が ─ 或いは強いからこそグルメであって、だから海を超えてまで美味しいハチを捕食しに出かけるということはないのだろうか?  
さらに。
鷹は群れない、という観察にしても根本的に間違いで、実は鷹同士の地球規模のチームやネットワークがあるのだが、それがあまりにも広域過ぎるので我々にわからないのかもしれないぞ。 

鷹が適者生存によって、その個体の在り様を太古から変えてないとするのなら、上の(2)も大いにスタディの意味があろうけどね。
でも、もし逆に適者生存ゆえにその行動や姿形を著しく変容させてきたのであれば、鷹といえども所詮は自然界の気まぐれの落とし子でしかなかったということか?
そして絶滅から逃れるために、必死になって試行錯誤を繰り返し、その結果として東シナ海を渡ってまで餌場を探し当てた、と?
そうであれば、鷹の遺伝子は古代の地球史をほとんど何も引き継いでいないことになり、(2)についての検証の優先度は低くなってしまう。

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と、いうわけで、興味関心のある人は(1)、(2)、(3)などなど、いろんな観点尺度にのっとって、どんどんスタディしてみては如何?
僕はいろいろ想像空想してみたので、もう満足です、あとは知りません。
 

以上