本書は、電気の諸特性から実践応用まで、簡易明瞭な図示を併せつつ平易な文体をとって書きすすめられた快作だ。
本書前半部にて取り上げられている基本事項は、電荷、電流、電位電圧、電力、オームの法則、ジュール熱、交流インピーダンス、コイルとコンデンサと位相差、モーター、発電などなど…、どれも高校物理学の教科書にてお馴染みのもの。
もっとも、本書の真骨頂は第12章以降、サブタイトルにもある「パワーエレクトロニクス」の概説箇所である。
電力の自在な変換技術としてのパワーエレクトロニクス概説、直流→交流のインバータ回路コンセプト、正弦波の電圧変動の実現技術、さらには未来技術に向けての交流と直流の再評価や展望へと論が展開していく。
あらためて高校物理学を引き合いに出せば、この交流インバータ以降の技術論はほとんど履修対象とされていない由。
だからこそ本書は、高校物理にて電気をかじりかけた人たちにとって是非とも薦めたい一冊である。
よって、以下に僕なりの読書メモとして、概ね第12章以降について略記する。
※ なお、数式についてはここでは引用避けるが、それは僕が理解及ばぬためでは断じてなく、もちろん電力や熱量や位相の算出方法くらい僕だって分かってんの、ただ記載に間違いあってはならぬと案じてのこと。
・いわゆるパワーエレクトロニクスとは、電圧と電流に加えて周波数と位相をもコントロールし、電力の「形」を自在に変換する技術のこと。
順変換(交流を直流に整流変換)、直流変換、交流の周波数変換、逆変換(直流を交流に変換=インバータによる)が可能。
パワーエレクトロニクスにおける基本動作は、回路において負荷抵抗にかかる電圧を調整するための、「高速オン/オフ スイッチング」。
高電圧(そして大電流)の高速スイッチングこそが、パワーエレクトロニクスの基幹技術であり、インフラから家電製品までふくめた業際的な実用化へのキーファクターである。
とりわけ、電力量相応の重量が不可避であった変圧器が、パワーエレクトロニクスによって不要となってきたことが大きい。
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・直流回路のスイッチングの 「オン/オフ時間比(デューティファクター)」が、負荷抵抗にかかる「平均電圧」を決め、ここでかかる電圧は「断続的な電圧(および電流)の矩形波」パルス。
オンの回数=スイッチング周波数は1kHz 以上から、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)による 10kHz 以上まで実現可能。
この電圧パルスを「平滑化」するため、インダクタンス(コイル)とダイオード半導体を活かす。
直流回路において、スイッチがオンの状態では、電流がインダクタンスでエネルギーとして蓄積しつつ、また誘電起電力によって電流が負荷抵抗に放出され、その電流が電源に還る。
今度はスイッチがオフになると、インダクタンスに蓄積されたエネルギーはやはり負荷抵抗に電流を放出するが、負荷抵抗からの電流は電源ではなくダイオードに流れ、ダイオードは逆極性ゆえにまたインダクタンスに電流を送る
…つまりこちらのタイミングでは、電源を経ずに電流がまわる。
こうして、スイッチオン/オフのいずれの状態でも、負荷抵抗に送られる電流とその電圧は間断することなく、周期的に脈動する。
さらに、この直流回路にコンデンサを噛ませると、電圧がほぼ平滑化されるので、電流の脈動も更に小さくなる(オームの法則のとおり)。
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・パワーエレクトロニクス技術は、とりわけ「直流の交流への変換、および交流電力の出力調整技術」 において活用されている。
これを可能とするのがインバータ回路であり、その基本回路コンフィグにはハーフブリッジ型、フルブリッジ型、さらに正弦派変動の電圧を生み出すPWM制御型がある。
ハーフブリッジインバータ回路の基本構成は、2つの直流電源と2つのスイッチが、同じ1つの負荷抵抗に対して直列接続を成しているもの。
ここで、2つのスイッチをショートせぬよう交互にオン/オフさせると、負荷抵抗への電流はそのたびに逆方向となる ─ つまり交流電流となっている。
ただ、これはどの瞬間においても2つの直流電源のうち1つしか使っておらず効率が悪い。
一方で、フルブリッジインバータ回路では、1つの電源と1つの負荷抵抗をおき、プラス回路とマイナス回路の2重構造接続とし、スイッチは完全なオン/オフではなくこれら回路切り替えを成すものとして、同様に負荷抵抗に交流を作り出す。
どちらにせよ、負荷抵抗にかかる交流電圧(と電流)は矩形波パルスである。
ここで、上に引用のように、スイッチングのオン/オフの時間比(デューティファクター)を活かし、平均電圧を調整できる。
さらにインダクタンスとダイオードとコンデンサを活かして、電圧変動の平滑化までも可能。
しかし、「本当の交流電圧(と電流)」をつくりだすためには、電圧変動が正弦波を成さなければならない。
そこで用いられているのが、PWM(パルス幅変調)技術である。
これは出力したい交流の正弦波と、それより周波数高い三角波の信号を生成し、これらの大小に応じてスイッチオン/オフのタイミングを変化させることで、たとえばオン時間に負荷抵抗にかかる電圧が正弦波をとるようにするもの。
ここまでが、直流の単相交流への変換インバータの概要。
実際には三相交流の特性も活かしつつ、複合的な交流電圧アプリケーションがこんごもどんどん考えられる。
コンピュータによる制御技術の向上をともなって、回路のスイッチオン/オフの高速化と交流生成の精密化はさらに進むだろう。
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こうして、スイッチオン/オフのいずれの状態でも、負荷抵抗に送られる電流とその電圧は間断することなく、周期的に脈動する。
さらに、この直流回路にコンデンサを噛ませると、電圧がほぼ平滑化されるので、電流の脈動も更に小さくなる(オームの法則のとおり)。
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・パワーエレクトロニクス技術は、とりわけ「直流の交流への変換、および交流電力の出力調整技術」 において活用されている。
これを可能とするのがインバータ回路であり、その基本回路コンフィグにはハーフブリッジ型、フルブリッジ型、さらに正弦派変動の電圧を生み出すPWM制御型がある。
ハーフブリッジインバータ回路の基本構成は、2つの直流電源と2つのスイッチが、同じ1つの負荷抵抗に対して直列接続を成しているもの。
ここで、2つのスイッチをショートせぬよう交互にオン/オフさせると、負荷抵抗への電流はそのたびに逆方向となる ─ つまり交流電流となっている。
ただ、これはどの瞬間においても2つの直流電源のうち1つしか使っておらず効率が悪い。
一方で、フルブリッジインバータ回路では、1つの電源と1つの負荷抵抗をおき、プラス回路とマイナス回路の2重構造接続とし、スイッチは完全なオン/オフではなくこれら回路切り替えを成すものとして、同様に負荷抵抗に交流を作り出す。
どちらにせよ、負荷抵抗にかかる交流電圧(と電流)は矩形波パルスである。
ここで、上に引用のように、スイッチングのオン/オフの時間比(デューティファクター)を活かし、平均電圧を調整できる。
さらにインダクタンスとダイオードとコンデンサを活かして、電圧変動の平滑化までも可能。
しかし、「本当の交流電圧(と電流)」をつくりだすためには、電圧変動が正弦波を成さなければならない。
そこで用いられているのが、PWM(パルス幅変調)技術である。
これは出力したい交流の正弦波と、それより周波数高い三角波の信号を生成し、これらの大小に応じてスイッチオン/オフのタイミングを変化させることで、たとえばオン時間に負荷抵抗にかかる電圧が正弦波をとるようにするもの。
ここまでが、直流の単相交流への変換インバータの概要。
実際には三相交流の特性も活かしつつ、複合的な交流電圧アプリケーションがこんごもどんどん考えられる。
コンピュータによる制御技術の向上をともなって、回路のスイッチオン/オフの高速化と交流生成の精密化はさらに進むだろう。
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ざっとこのへんまで、僕なりに大雑把に拾ってみたテクニカルアブストラクト。
さて本書の最終段にては、高校教科書にも一部引用されている直流と交流それぞれの技術/工業上のメリット論が続々展開されており、パワーエレクトロニクスの向かいうる様々な方向を示唆している。
たとえば ─
古くは1970年、地下鉄のパンタグラフ入力の直流電圧とモータ回転への供給電圧の調整のため、直流電圧を断続的に(チョッパーとして)変動調整…これにより、運行車両における電圧の自在な調整が可能となり、総じた発熱量を抑えることが出来るようになった由。
また、OA器具にて交流入力を充電器やACアダプタにて用いるにあたり、パワーエレクトロニクス技術により直流として調整変換(整流)が可能となったため、従来の交流電圧の変圧器が不要となり、総じて軽量化がすすんだ、などなど。
さらには、UPS(無停電電源装置)などにおける直流一本化への是非判断、燃料電池や太陽電池における直流給電と家庭内器具における電圧仕様のばらつき。
そして、ネオジム磁石と交流インバータ技術で精密な制御が可能となった「同期モーター」の活用事例も。(家庭用クーラーのコンプレッサ、小型化がすすむドラム式洗濯機、自動車の発電機にても同期モーターは使われている。)
いかがだろうか。
パワーエレクトロニクス(とくに交流インバータ回路)の可能性につき、ひとえに工業技術論としてのみならず、産業論として捉えてみても、こんごのフィジカルな未来予測の重要なヒントたりえるではないか。
とくに理数系選択の学生諸君、医学や薬学も面白いかもしれないけど、どうかね、ちょっと寄り道してみては。もしかしたら志望分野が変わるかもしれないよ(笑)
以上