「んーー?」
「キスは、どんなふうにすればいいの?」
「なんだ?なんだなんだ?あっははは、ばーか。そんなことはお母様や親戚の方々に尋ねてみればよいだろう」
「訊いてみたけど、何にも教えてくれないんだもん」
「だからって、なぜ俺にそんなことを?…やめだ、やめだ、こんな話は」
「あーー。あたしって、もしかしたら一生、キスが出来ないのかもしれない…あーー!」
「そんなことはないって!…いいか、落ち着いてよーく聞け。恋というものはな、ホップ・ステップ・ジャンプなんだ。魂を据えて、意思を整流させて、それから全身全霊をこめて跳ぶんだよ。大昔からの格言のとおり」
「だから、なに?!」
「君の発想には、初めっからジャンプしかない。そこのところだけが若いわかい君の欠点だ。でも、ほかは何の問題もない。むしろ魅力的な部類だ ─ と思う。だから心配するな」
「ふーーん!ねえ、キスをするタイミングは、いつがいいの?」
「……あのなあ、恋というものは、独りよがりじゃいけないんだよ。相手あってのことなんだから…ほら、たとえば太陽が沈みかけて、一方で月が輝き始める時、幸福と孤独が交信するその時に」
「ふーん!それで、キスは何秒くらいすればいいの?」
「だからさぁ、そんなことは相手と決めりゃいいだろうが、あっははは。そもそも恋というものはだな、すべてのようでもあり、一瞬のようでもあって、言ってみれば、そこに人生の妙が」
「ふーーん。すべてであり、一瞬なのね、それじゃあ……あっ、わかった!」
「ん?なんだ?何が分かったんだ?おい、どうした、どこへ行くんだ、なぁ、ちょっと待て!なにをそんなに急いでいるんだ?おーーい!俺の言っている意味が本当に分かってるのか、おーーーーい!人生には明日も明後日もあるんだぞ!」
しばらく続く