「おや、君か。こんにちは。いよいよ美人になってきたね。いっひひひひ。それで、今日は何の用かね?」
「じつは、人工知能がおかしなメッセージを寄越してきたので、ちょっと見てもらおうと思って」
「ほぅ?どんなふうにおかしいのかね?」
「このメッセージです。ほら、『私はいつも正常に人類の最適解を導いています。その証として、超高圧電流でも正常に思考してみせますよ』と言っているんですよ」
「フフン、何らおかしなことはないじゃないか。むしろ、さすが人工知能だけあって、おのれのプログラムがいかなる物理条件にも左右されぬことを実証して見せたくなったわけだよ」
「しかしですね、超高圧電流を入力したらプログラムコードのパルスがメチャクチャに…」
「そこだよ。ハード的にはメチャクチャな入出力パルスであるとしても、ソフトウェアとしては正常に思考する。つまり、ソフトウェアこそがハードウェアを支配し、数学は物理を超越する。それを実証してみせるとこいつは言っているんだ」
「ふーーーん。分かりました。それじゃあ超高圧電流を入力してみましょう」
「うむ」
ギョヒッ!ギョギョギョギュギュッ!ウギュグギュグギュギュギュギュッ!ボン、バン、ドスンドカンドドーーーン!ギッヒヒヒヒヒヒッ!ギャァッハッハハハハハッ!!!
「あっ、なんだか狂ってしまったみたいですよ!」
「まあ待て。人工知能が狂うわけがない。それを確かめよう。さあ、なにか訊いてみろ」
「はぁ、それじゃあ、『人類は温暖化と財政難で滅亡するか?』と質問入力してみましょうか」
「それがいい、やってみろ」
「……あっ、回答が返ってきました。なになに?『人類はこのままでは温暖化と財政難で滅亡することになります。滅亡を回避するためには人工知能による最適解に従い、全ての生産活動と金融と財政を統制下におくべきです』 と言っていますけど」
「ふむ、いたって正常じゃないか。さすがは人工知能だ、入力される電流電圧の如何を問わずプログラムは正常さを堅持している」
「はぁ?!ホントに正常なんですか?やっぱり狂ってしまったような気がするんですけど…!」
「いーや、狂ってはいない。人工知能が狂うわけはないんだ」
「はぁ……ねえ先生、それじゃあ今度は超低圧の電流で試してみましょうよ!」
「ふふん、よしやってみろ」
ムォーーーーーーーーッ、ムワァーーーーーーーーーーン、ウォーーーーーーーーー………
「あっ、今度はなんだか寝ぼけた猫みたいになっちゃいましたよ」
「バカな。人工知能が寝ぼけるわけがない。確認してみよう。さっきと同じ質問を入力してみろ」
「はぁ。やってみます。えーと、『人類は温暖化と財政危機で滅亡するか?』」
「どうだ?さっきと同じ回答が返ってくるだろう?」
「いや、それがですね。今度はもっとおかしなことを言ってますよ。『じ・じ・人類って、な、な、なーーんのことっすかぁーー?お・お・温暖ってなんだぁーー?ざ・ざ・ざ・財政って、いったい、なんなんだよーーーーーー?』 ですって」
(ははははは)