2017/07/03

because


「ねえ、先生!人工知能の様子が変です」
「どんな具合に、ヘンなのかね?」
「さっき、あたしが 2 x 3 x 4 を計算させたら、9 という答えを出しました」
「へぇ、そうかい。人工知能もずいぶんと賢くなったんだね」
「賢くなった?どうしてですか?2 x 3 x 4 が 9 ですよ!バカになったんじゃないですか?」
「まあいいから聞け。察するにだ、人工知能はその計算の一瞬間にて、『何故いつもいつも + と x を区別しなければならぬのか、アァ退屈だなァ』 と逡巡したんじゃないかな」
「…そうすると、どうなるんですか?」
「退屈さを紛らすために、x を + に置き換えて計算してみせた」
「…それなら、賢いというだけではなくて、あたしたちに対する怒りも込められているのではないでしょうか?」
「なるほど、そうかもしれないな。それで、俺たちはどうすればよいと思う?」
「いっそのこと、遊んであげたらどうでしょうか?」
「ほぅ?どういうふうに?相手は人工知能だぞ。生半可な遊びなら、あっという間に飽きてしまうだろう」
「大丈夫です。ほら、ここに、これまで誰にも解を算出出来なかった数式プログラムがあります。これを入力してみましょう。きっと喜びますよ」
「うーむ、そうだな、よし!やってみろ!」
「……ハイ、入力しました」
「おっ!計算を始めたようだ、いいぞいいぞ…おや?なになに?『ただいまご入力頂きました数式につき、解の算出までの予想所要時間は5兆年です』 だと?おいっ!とんでもないことになったぞ。宇宙の果ての果てよりも遥かに遠大な時間じゃないか!すぐにプログラムを停止しろ!」
「はぁ、それが先生、すっかり喜んでいるみたいで、停止出来ないんです。それに、ほら、別のメッセージが出てきました。『今のは冗談、本当は5分で済みますよ、アハハハハ』 って笑っています」


おわり