「ねえ、先生、このモニターを見て!」
「ん?なんだそれは?」
「あたしの分身アバター。ほら、可愛く出来たでしょう」
「ほぅ、器用なもんだね。どうやって作成したんだ?」
「このプログラムで」
「ハハーン、なーるほど……うぉっ?これはっ!?」
「なにか問題でもー?」
「…うーむ……これは厄介だ、いや、すでに大変な事態だ!いいか、よくきけ。このプログラムはだな、アバターを作成するアバターを作成するものなんだよ。分かるか?」
「分かんない」
「考えろ、あほぅ。あのな、君が作成したそのアバターは、自分自身で別のアバターを作成しちゃうんだよ!ということはだ、そいつも更にまた別のアバターを作成していくってことだ!」
「へーーーー。だから、なに?面白いじゃん。あたしの分身アバターがネットにじゃんじゃかと増えていくわけでしょう。ふふふふふっ」
「ふふふ、じゃないだろうが!すぐにアバターを削除しろ!早く!」
「……あ、先生、もう遅かったみたい。ほらっ、あたしのアバターが既に数体に増殖しているもん。ぴこん、ぽこん、ほわーーん、どんどこどんどこ。あっはははは。ほらほら、どんどん増えていくぞーーー」
「ウーーーム。このままでは、『この世界』が君のアバターだらけになってしまう!」
「うーむ、こまったもんだ~、ふっふふふ」
「……しかし、しかし諦めるにはまだ早い……そうだ!分かったぞ!『この世界』の設定を変えればいいんだ!よーし、ここを、こうして、こう変えて…」
「ねえ、先生、何をしたの?」
「『この世界』の設定をね、アバターを削除する世界に変えた。この意味が分かるか?よ~し君は秀才だ。さぁ、見てみろ、君のアバターの数が次第に減っていくじゃないか」
「あっ、ホントだ、どんどん減っていく、うわーん、寂しいよ、つまんないよ、うわーん」
「我慢しろ。これで『この世界』は救われたんだ。これで一安心だ……あれっ?おい、君、どこへ行ったんだ?
「うわーーん………」
「おーーーい!」
「………」
「うーーむ、これはいったいどういうことだ?まさか、まさか君自身もアバターだったということなのか?!」
「………」
「うぉっ??そういえバ、俺ハ、誰ダ?俺ハ、イッタイ、誰ダッタンダロウカ?マサカ、マサカ、ウワーーーーッ…………!!」
(怪談のつもり)