2021/08/17

世界のことわざ/格言 (1)


文芸ファンおよび世界史ファンの学生諸君へ。
文明文化のエッセンスとは、いったい何だろう?
ひとつの捉え方としては、永く永く語り継がれてきたことわざ/格言こそがそれらにあたるのではないか。
ことわざ/格言は、人生や世界についての過去からの教訓(lessons)であり、未来への警句(warnings)でもあるからだ。

ここではとくに、中近東および欧米の諸地域におけることわざ/格言をごく掻い摘んでまとめてみた。
これら諸地域にてはメソポタミアやユダヤや古代ギリシアローマなどなどからのことわざ/格言が姿形を変えて語り継がれてきたようである。
いわゆる市民革命や社会共産主義(つまり数や率の論理)によってもけして離散させられることのなかった、ヨリ本源的な人間の本性が見てとれる。
なるほど、これら格言はしばしば残酷なほどに辛辣であることは否めまい、しかしさまざま相反したものがともに語り継がれてもおり、高く深く多元的な分析勘を磨く上でも好素材群といえよう。

さて、以下に似通った主旨のもの同士をとくに束ねてみたが、なんとなくハンムラビやソロモンの警句あるいは近代ギリギリ以前のゴスペル詩歌のようになってしまったのが我ながら可笑しい。)

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人間は何を食べるかで決まる。
鍛冶屋は鉄を鍛えてこそ一人前になれる。
お菓子は焼くからこそ甘くなる。
最も遠いところまで到達すれば、もっと遠くを見渡せる。
自分の荷物は重くない。



礼儀作法が人をつくる。
良い質問をすれば良い答えが返ってくる。
簡潔さこそ機知の証 (馬鹿ほど複雑である)。
名酒は看板を要せず。
便りが無いのは良い便り。
空の容器に限ってガランガランとやかましい。
馬鹿は同じ石で何度もつまづく。



群れる連中はみんな似ている (いい意味でも悪い意味でも)。



どの袋にも腐ったジャガイモは入っている。
馬鹿はいつも群れる。



猿は何を着せてもやっぱり猿だ。
手袋をした猫はネズミを捕まえられない。
スプーンにはスープの味は分からない。



幸運に知恵は不要だが、それを活かすには知恵がいる。
神は鳥に餌を与えたもうが、巣に投げ込んでくれるわけではない。
ゆっくりと急げ。
明日のメンドリより、今日の卵の方がよい。
無為は不道徳の母。
地獄への道はたやすい。



時間は黄金で出来ている。
時と潮汐は何人をも待たない。
若き日に学んだ物事こそが石に刻まれる。
どんな食材にも旬というものがある。
いつかそのうちに、は、いつまでたってもだ。
美しいものはけして完璧ではない (完璧でないからこそ美しい)。
神が愛する者ほど若くして死ぬ。



おのれの運を信じる者がもっとも運がいい。
明日は明日の風が吹く。
訳の分からぬ事態では寝るのが一番いい。
転ぶからこそ、立っているといえる
(質点が運動するからこそ座標が定義される。)
成りえた自分に成るのに遅すぎることはない。
やってみても損はない。



食べるために生きるのではなく、生きるために食べよ。



無知とは最も恐るべき知識である。
親が家で喋ることを、子供は街で喋る。
自制が出来ぬうちは自由だとはいえぬ。
入る前に出ることを考えよ。
馬に乗るのなら落ち方も学べ。
怒りは狂気から起こり後悔に終る。
井戸に唾を吐く者は、いつかその水を飲まなければならない。



皆が見る夢のことを現実という。



男はいつも嘘つきである。
折れるよりは曲がる方を選ぶ。
一つの嘘はただの嘘、二つの嘘もただの嘘、だが三つの嘘は政治となる。
愛と戦争は何もかも正当化する ─ 目的は手段を正当化する。
裏切者の沈黙は彼の言葉よりも恐ろしい。


(とりあえずおわり)