2021/08/02

高校物理の難しさ (波の ’エネルギー' と '強さ' について)

高校物理の難しさ、とタイトル打ってはみたが、今回は微分や連立方程式など物理思考そのものの特性を念押しするつもりはない。
もっと端的に、物理で学ぶ媒質の単振動正弦波における'エネルギー'と'強さ'(とくにこの'強さ'の本旨だ)についてちょっと指摘してみたくなった。
これらは入試がらみで総じて軽んじられてはおり、しかも知識ウヤムヤなままですっ転がしている高校生や高卒生が多いのではと想定されるためである。

さらに、この分野について論ってみたくなった理由はもう一つある。
高校物理の主だった参考書をざっと読み直していて気づいたのだが、これら参考書ごとに概説の手順がやや異なっていること再発見したためである。
そこで、とくに此度は数研出版の『新物理』と河合出版の『物理教室』における当該箇所に注目してみた。

(なお、以下の書き込みでは分数式の表記が上手く出来ないのですべてベタ打ちとなっていることご容赦。

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<『新物理』 数研出版 p.208>
静止状態にあった或る媒質の微小部分(粒子ひとつ)が振動する場合に、その各部分における力学的エネルギーEは一定値のまま、その媒質を微小ずつ伝搬していく、これをその波の進行とみなす。

ここでの波をとくに単振動する正弦波とし、この粒子1個を質量mと振動数fと振幅Aと角振動数(角速度)ωとする。
媒質を伝搬していく単振動の粒子1個あたり力学的エネルギーEは運動エネルギーKと分子間力による位置エネルギーUの和ではあるが、この粒子が最大速度Vmを有している瞬間にては位置エネルギーUは0とおける。
Vm = Aωであり、かつ E = K+U  =  m(Vm2)/2 =  m(Aω)2 /2  となり、
これはさらに ((mA2(2πf)2) /2  =  2mf2A2  とも表現出来、
ここまでで、この粒子ひとつの単振動のエネルギーE は 振動数f と振幅A のそれぞれの2乗に比例していることがわかる。

ここで媒質の質量密度ρ[kg/m3] とすると、単位体積[m3]ごとのエネルギー量E´も比例的に表現出来、E´= 2π2ρf2A2

さらに、ここでじっさいの伝搬速度 v [m/s] まで考慮すれば、単位時間あたり、かつ垂直な単位垂直面積あたりでの通過量としてまとめて表現出来、この通過量をとくに正弦波の'強さ'  I [J/m2・s] とする。
I = 2π2ρvf2A2
正弦波の'強さ'I は振動数f と振幅A のそれぞれの2乗に比例、かつ、密度ρと伝搬速度vにも比例。

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<『物理教室』 河合出版  p.186>
基本要件は上の『新物理』と同じ。

或る単振動が振幅Aかつ振動数fの正弦波として、密度ρの媒質中を速さVで伝搬する。
この媒質を構成する粒子1個あたりの質量をmとし、単位体積あたりの粒子数をNとする。
この粒子1個あたり単振動エネルギーuは運動エネルギーと位置エネルギーの和であり、ここで位置エネルギーは力定数Kのばねの弾性エネルギーから類推して
u  =  (mV2)/2 + (Kx2)/2  =  (KA2)/2
ここで  K  =  2 =  m(2πf)2
ゆえに  u  =  2mf2A2

単位体積あたりの粒子数NでのエネルギーUは、U = u・N = 2π2mNf2A2
ここで媒質密度ρ = mN であるので  U = 2ρf2A2

正弦波の'強さ' I は このエネルギーUの単位時間かつ単位垂直面積の通過量、つまり速さなので、
I = U・V = 2π2ρf2A2V
正弦波の強さは振動数fの2乗と振幅の2乗に比例する。


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ここまで、『新物理』と『物理教室』で導出されている関係式は同じであり、念押しされている内容もほぼ同じ。
どちらにしても、mω2 = m(2πf)2 など物理数学上の操作に慣れていればどうってことはない。
但し、『新物理』では単振動エネルギーをとりわけ運動エネルギー(最大速度)から算出している一方で、『物理教室』ではあくまでエネルギー保存則によって導いている ─ ようである。

(因みに駿台文庫の『新・物理入門』p.146にても、個々の粒子の正弦進行波にて位相をもとに変位速度や変位加速度を確認しつつ、その運動方程式やエネルギー方程式が単振動のそれらと同じ構造を成すこと明らかにした上で、エネルギー'密度'が振幅の2乗に比例する由を概説されている。)


なお、ここまで案内してきた波の'エネルギー'と'強さ'の関係は、たとえば「音」のひとつひとつの音圧(エネルギー)の二乗が音の'強さ'の基本を成している由を了解する上でも、ちょっとした連想素材にはなりえよう。

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※ こんなこと書き綴っているうちに、物理参考書や本番の入試問題についてもっともっと探求してみようかとの意欲も沸き立ってはきた。


尤も、僕自身は縁あって高校物理ファンに相成ってしまったとはいえ、学生の時分から数学勘がじつに鈍かったし、電機メーカ時代にても率先して技術仕様の計算に取り組んだわけではなかったし、おまけに電圧と電力の区別もつかない珍妙な思考連中の下に配属させられたこともあり ─
こんな僕だから、どれもこれもをスラスラ追随出来るわけではない。
今回上述した内容にしても、或いは僕なりの了察のどこかに勘違いが混じっているかもしれないが(引用した関係式にはひとつも間違いはないが)、いずれ気が向いたらあらためて再考し続けるつもり。

以上