「先生こんにちは」
「…おや、誰かと思ったら、君か。元気にしているかね?」
「はい、あたしなりに ─ ところで、それは何ですか?」
「これかね?フフン、これは超性能の量子マシンだよ。なんと、人間と幽霊を判別できるんだ」
「へぇぇー?そんなことが可能なんですか?」
「この量子マシンならば可能だ。或る’人間らしきもの’を観察して、それが其処に’実在’しているのかそれとも’幽霊’にすぎないのか、精密に判別することが出来る」
「いったい、どういう技術なんですか?」
「うむ、そもそもだな、量子の物理量とか状態変化とか反復可能性などなどの理論をごくコンパクトに活用したものであり…」
「はぁ?」
「簡単に言うとだな、この量子マシンは2種類のビットを並走させて駆動しているんだ。’実在する人間’に呼応して情報処理を遂行する’実在ビット'と、’幽霊’に呼応して情報処理を為す’ゴーストビット’、これら2種類のビットをね」
「へぇーー?」
「もちろん、アルゴリズムやプログラムはむろんのこと、このマシンの構成物質系そのものも’実在ビット’と'ゴーストビット’に応じている」
「ははぁ。でも、構成物質系とか言われても、どうもこの量子マシンは影が薄い感じがするんですけど…」
「そうかね?じゃあ、じっさいにこいつの性能を実証してみよう。質問を入力するぞ。『この部屋には人間が何人実在するのか?』」
「あっ、ねぇ先生、量子マシンがこっちを観察し始めましたよ」
「うむ、見ているぞ、じっと見ているぞ…」
「……あっ、『2人』と返してきましたね」
「つまり君と僕だ。僕たちの実在が'実在ビット'によって判別されたわけだよ。どうだ、すごいだろう」
「なーーるほど……ねえ先生、念のために今度は 『この部屋に幽霊が何人居るか?』を訊いてみましょうよ」
「いいとも、やってみよう。僕たちは’ゴーストビット’には対応しない。だから『0人』と答えるに決まっているがな」
「……あれっ、『1人』と言っていますよ!」
「なんだとっ?!そいつはおかしい、どういうわけだろう? ─── ハハ~ン、分かったぞ、’こいつ自身’の構成物質系が何らかのタイミングで’ゴーストビット’に対応してしまったんだ!それで、こいつはおのれ自身を’幽霊’だと判定したんだよ!」
「なるほど!どうりで存在感の無いマシンに見えたわけです!ねえ先生、ほらっ…、マシンが消えちゃいましたよ!正真正銘の幽霊ですね!すごい性能です!」
(怪談のつもり)
※ ちょっと書き換えてみた。もちろん、あくまで冗談で書いたものだ。量子力学関連についてまともに勉強したいなら大学入試などとっとと片付けてしまえ。