2020/06/16

【読書メモ】今日から使える物理数学(普及版)

『今日から使える物理数学(普及版) 岸野正剛・著 講談社Blue Backs』
本書を手にしたきっかけは、偶然に見開いた第1章p.53における電流回路の略図、ここでの微分方程式にて「変数分離法」を活かしている由を一瞥したため。
変数分離法は大学以降で学ぶ数学テクニックとのことではあるが、その着想の面白さ(と応用の奥深さ)については僕なりに電気分野などにてしばし聞き及んでいたこともあり、だからこのさい学生諸君などにもちらりと紹介してみようと思いつき、よって此度本書を取り上げた次第。

本書は実践的な数学手法の醍醐味を強調するためか、物理計算の実践例の合間に数学論や公理定理や数学小問などが呈されるなど、どちらかといえば数学慣れした読者の着想力を小気味よく刺激する読み物構成といえようか。
そしてそういう読者であれば「今すぐ勘所を押さえつつノウハウを自在に活用出来る」のではないか、とも想像出来る。
しかしながら、数学の素人に過ぎぬ僕としては本書のページを捲るたびに幾度も深呼吸、とにもかくにも「物理現象は如何に立式化されうるか」そして「それらは如何様に数学操作なされうるものか」について基本捕捉を図るが精一杯であった。

以下、とりあえず第1章の微分方程式、それもほんの導入箇所について僕なりに以下の通りメモ略記した (なお数式を引用表記するにあたっては分数表現など上手く入力出来ぬためベタ打ちとしている。やや見ずらいかもしれぬ。



<変数分離法>
微分方程式が dy/dx = M(x)N(y) としてxのみおよびyのみの関数に分かれてまとまっている場合、これを変数分離形と称し、この形からとりあえず積分まで進める計算方式が「変数分離法」である。
ここで両辺にdx/N(y)を掛けると 1/N(y) = M(x)dx
そして、両辺をそれぞれyおよびxで積分し、何らかの積分定数Cまで含めあわせると
{1/N(y)}dy = {M(x)}dy+C
ここまではN(y)M(x)も具体的な式が与えられていないため、積分記号が残ったままであり、よって一般解が記されたことにはならないが、ここでの1階微分方程式の解を導く基本が組まれたことになる。

なお、ここに記したように1階導関数dy/dxのみが含まれた微分方程式を1階微分方程式と称す。
導関数の階数をnとしてdny/dxnにおけるnの階数が上がれば、もちろん積分以降の難度も高くなる。

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<1階微分方程式の例:スカイダイビング>
1階微分方程式にて「変数分離法」を活かす初歩的な活用例。
空中から落下するスカイダイバーの力に充てられる運動(微分)方程式は、ダイバーの質量をm、速度をv、落下経過時間を変数tとすると;
m・(dv/dt) = F
この式にて「未知関数」は時間あたりの速度の関数 v(t) であり、これを「解く」とはこの未知関数v(t)以外をすべて具体化して速度vを導くこと
まず重力加速度をgとすると、運動方程式は m・(dv/dt) = mg
ここで、空気抵抗力を減算しなければならない。
自由落下における空気抵抗力は或る比例定数k・v2なのでこれを充て込んだ運動方程式は m・(dv/dt) = mg-k・v2
なお、速度には外付けの積分定数Cも有る。

この運動微分方程式を積分の形に成すために変数分離法を用いることが出来、ここでは左辺を速度vと定数のみで括りつつ、右辺は変数t(と定数)のみで括ればよい。
両辺にdtを掛けつつmg-k・v2で割ると m / (mg-k・v2)・dv = dt 
さらに、m,g,kの全てが定数であることを活かすため、
便宜上の新たな定数として T = √(m/gk) また V = √(mg/k) とすると VT = m/k
こうしておいて、上の微分方程式の左辺を-m/kで割り、右辺を-VTで割ると、1/(v2-V2)・dv = -1/VT・dt
ここまで至って、速度vを時間tで積分してみると
 {1/(v2-V2)}dv = -1/VT・dt
ここまでで積分形とはなったものの、まだ対数の中に未知関数vが入っており、しかも速度の外付けの積分定数Cを考慮していないため、微分方程式の一般解を導いたことにはならない。

じっさいに解を求めるため、双曲線関数を活かしつつ積分定数Cまで含め書きあらためると、
(V-v)/(V+v) = e-(2t/T)+C 
さらに、ここに双曲線関数tanh(タンジェント・ハイパボリック)を充て込んで、さらに積分定数Cが0となるように計算まとめると、
初速0の特解として v=Vtanh(t/T) とまとまる。
じっさい、スカイダイバーの落下速度は空気抵抗を受けつつVに漸近するのである。

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<1階微分方程式の例: 電圧降下と起電力と電流値>
コイル1つと抵抗1つと電池1つから成る簡単な電気回路にて、スイッチを接続したさいに電流はどのような流れ方をするか、という例題。
コイルの自己インダクタンス定数をとし、ここを電流Iが流れて誘導されるマイナス起電力による電圧降下を L(dI/dt) とする。
また、抵抗Rを流れる電流によって起こる電圧降下を RI とする。
これら2つの電圧降下の和は、電池の起電力Eとつりあうので、
L(dI/dt) +RI = E
変形すると、(dI/dt) = (E/L) - (R/L)I

ここで 時間tにかかる関数を(1/L)と表現し、電流量Iにかかる関数を(E-RI)と表現すると、これら関数を変数分離して変数分離形に表現しなおすことが出来る。
{1/(E-RI)}dI = (1/L)dt
ここで左辺をIで積分、また右辺をtで積分し、さらに(E-RI)を指数関数で表し、積分定数も加味し…

※ 本書にてはこれら計算と図表が提示され、その結果から導かれる解はまずスイッチ接続直後の電流値の小ささ、そして、時間t経過に応じて過渡電流がオーム法則どおり(E/R)に漸近していくさまについてである。
しかしながら、僕なりに計算への追従がきつくなってきたのでこのあたりで本書紹介はいったん終わらせることとする。

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とりあえず上記が第1章の前段部についての僕なりのメモである。
さらに第1章では、1階線形微分方程式および2階線形微分方程式における変数分離法、単振動や強制振動についての問題解法…などなどと続く。
さらに第2章にてはベクトル解析、第3章が複素関数、第4章ではフーリエ解析の実践的解法が続々と概説されていく。
数学通の読者はともかくも、普通の読者がおいそれと消化できる柔なコンテンツではなかろう ─ それでも、随所に散りばめられたさまざまな解法および関連公式からは数学思考の自在な楽しさを喚起されてやまない。


以上

謝辞

ここに提示の記事は、いずれも私自身の判断責任のもと編集・投稿したものです。

大半の投稿は学生など若年層向けを意図してやや平易な表現にて、一方では通俗性を極力回避しつつ、論旨の明示性を意図して書き綴りました。

あわせてまた、社会人の皆様にお読み頂くことも想定しつつ、汎用性高い観念知識を相応に動員しながら記した積もりです。

私なりの思考着想によるささやかな閃きが、皆様の諸活動にて何らかの光源たり得れば、望外の喜びであります。

山本