2020/11/15

「音」の物理 基礎

これまで僕自身が不勉強であった分野に新たにちょっと足を踏み入れてみようと思い立ち、その一つとして此度は「音分野」について基礎概説だけでもまとめてみることにした。
ふん、「音」だろうがなんだろうが、力と仕事に則って捉えれば(つまり基本的な物理学の一環として了察すれば)ささっと理解出来よう ─ とたかをくくって始めてはみた。
しかしちょっとうんざりしたことに、音分野における物理量単位と物理計算と工業上の目的につき、タララララーーーっと総論的かつ完結的にまとめられた書籍がちょっと見当たらないのである。
ゆえに、面倒ではあるがあっちこっちのネット記事をしばらく拾い読みなどしてみた。

さて、音についての基礎的な物理学のうち特に根元的な主題は「音圧」と「音の強さ」と「音の大きさ」である ─ と思われるので、此度はその構成要素を超概括する。
なお、たとえば振動数のように僕自身が「学術上の意義」を了解しきっていない要素もあり、そういうのは本当は我慢ならんのだが、とりあえず分かったフリして書き連ねることとする。)
※ もちろん僕なりの勉強メモなので僕の随意で加筆訂正もしていくつもり。



音圧

音場に密部と疎部が交互に起こり、大気圧を中心として微小な膨張と収縮による圧力変化を続ける、この圧力変動の実効値が「音圧」
音圧はSI単位系でPa (組立単位としては N/m2でもある)
純音の場合、基本変動における(最大値-最小値)/2をその振幅Aであるとして、この変動振幅Aの1/√2倍が音圧。
音圧と粒子速度は対の変数で線形の関係にあり、両者の比が比音響インピーダンス。

音圧を人間の刺激への弁別閾に応じて対数表現した数値が音圧レベル」である。
音圧レベルLpは以下の式で表され、単位はdB
Lp = 10log (p/p0)2 = 20log (p/p0)
p: 測定された瞬時音圧の自乗平均値で、周期Tにおいて{(1/T)[0→T]P2(t)dt} 
p0 :  基準音圧 20μPaであり、人間の1kHzにおける最小可聴値
 (※ なお後述する等ラウドネス曲線によれば本当の最小可聴値は30μPaである。)

我々人間の弁別閾を音圧レベルでみれば0.5~1.0dB程度。
また、我々が通常接する音圧レベルは大体40dB以上で100dB未満である。

※ちなみに1大気圧あたりでの圧力変化の最大値は 1atm≒105Paであり、これと比べると音圧レベル60dBの音(いわゆる普通の大きさの音)における音圧変化の最大値はわずか2.8x10-2paでケタ違いに小さい。
また音波の波長は20Hz~20kHzで17m~1.7cmであるが、音圧レベル60dBの音における空気の振幅変位はわずか10-8mしかなく、これもケタ違いに小さい。

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音の強さ

媒質中の音波が単位面積と単位時間あたり通過する際のエネルギーをとくに「音の強さ」と定義する。
音の強さは媒質の密度、振幅、振動数の大きさに正比例。
音の強さ(LI)は以下の式で表され、基準の単位はW/m2であり、レベルとしての単位はdB
LI = 10log10(I/I0)
I : 測定された音の強さ
I0 : 基準となる音の強さで、最小可聴音10-12((W/m2)

音波が平面波と見なせる場合は、音圧と固有音響抵抗から定義可。
以下の式で表される。
I=p2/(ρ・c)
I : 測定された音の強さ
p : 音圧(Pa)
ρ : 空気の体積密度(kg/m3)
c : 空気中音速(m/s)
空気密度(ρ)x音速(c)が固有音響抵抗になる

※ 音の強さは音圧の自乗に比例していることが分かる。
これは単位時間あたり電力Pと(電流Iと)電圧Vと抵抗Rの関係式P=V2/Rから類推させれば頭に入りやすい。

音圧レベル(dB)と音圧実効値(Pa)と音の強さ基準(W/m2)は常用対数関係にあり
0dBが 2x10-5Paに相当 かつ 10-12W/m2に相当
20dBは 2x10-4Paに相当 かつ 10-10W/m2に相当
40dBは 2x10-3Paに相当 かつ 10-8W/m2に相当 (ほぼ音楽記号のppp
60dBは 2x10-2Paに相当 かつ 10-6W/m2に相当
80dBは 2x10-1Paに相当 かつ 10-4W/m2に相当 (ほぼ音楽記号のf
100dBは 2x100Paに相当 かつ 10-2W/m2に相当 (ほぼ音楽記号のfff)
120dBは 2x101Paに相当 かつ 100W/m2に相当
140dBは 2x102Paに相当 かつ 102W/m2に相当 (人間が聴きうる超大音量)

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<音圧レベルと周波数とラウドネス>
音の大きさは、同じ音圧レベルでも周波数によって異なる。

音圧レベルと周波数の相関に則った音の大きさ尺度としてラウドネス・レベル」があり、これがいわゆる音の大きさを定義したもの。
ラウドネス・レベルは1kHzの純音の音圧レベルを基準に設定され、単位はphon(フォン)
たとえば、1kHzで70dB程度の純音を70phonsとして、125Hzで80dB程度の純音がラウドネス・レベルがこれにほぼ等しい。

ここから騒音レベルも定義され、40phonsのラウドネス・レベル曲線を聴感補正し音の重みレベルをdBに換算してA特性騒音レベルなどが設定されている。
いわゆる環境騒音もこれに則って測定されている。

環境騒音の例としては;
ホテル室内など 30dB程度
飛行機内 80dB程度
パチンコ屋店内 90dB


なお、人間による聴覚も加味して音の大きさを比例表現した尺度が「ラウドネス」である。
ラウドネスは音圧レベルが40dBの1kHzの純音を1単位とした尺度で、これが1sone(ソーン)。
人間の聴覚感覚における音の大きさがこの倍になれば2sonesであり、4倍になれば4sonesであることになる。

人間の聴覚には、中心周波数ごとに入力信号のフィルタリングを行う臨界帯域(バンドパス)が有り、ここで臨界帯域ごとに感受された音の強さをそれぞれラウドネスに変換した上で全て合算すれば、その人間がその対象音全体から感受したラウドネスを算出出来ることになる。


つづく ─ 次回は音色など。

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※ なお、本ブログは僕なりの勉強備忘録であるとともに、特に若手社会人や学生など初学者の基礎素養の喚起を図る教養ノートのつもりでもある。
そういった気軽さゆえ、本ブログに書き連ねているコンテンツは、広く遍く公開された情報のうちあくまでも僕なりに容易に掻い摘むことが出来たものに留まっている。
よって、いつかの半導体や製鉄の基本論と同様、僕なりに分かる範囲に絞りつつ、あっちこっちへ飛びながら書き進めることにしている。念のため。