2022/05/12

よそいきの初恋 Part II



「先生こんにちは。あたしですよ」

「やぁこんにちは、ハゥアーヨゥドゥーイン?」
「はぁ、まぁまぁです。ただ、ちょっとした悩み事があって」
「それはホワットハッペンド?」
「じつは ─ 近ごろあたしの記憶がところどころ間違っているような気がして」
「ほほぅ?記憶が間違っている気がする?いったいどんなふうにメモリーがロングなのか、テルミーヨァストーリー」



「先日のことです。あたし、或る男性に恋心を告白しました」
「ハハン、なかなかインタレスティングサウンドだね。それで、ハウイズザットゴーイング?」
「そしたら、その男性からデートに誘われました」
「へぇー、それはグッドだ、グッダーだ!」
「それで、約束どおりに待ち合わせて、それから映画を観たんです。『ロボットたちの初恋レジストリ』という映画」
「ハハン、ハハン、それから?」
「正直なところ、あまり面白い映画ではなかったので、あたし、ちょっとだけ不満を漏らしたんです。そしたら口論になっちゃいました」
「それはいったいホワーーイ?」
「彼が言うにはですね、その映画を観ようって申し出たのはあたしなのだから、観終わってから文句を言うあたしはずるいって」
「オー、マイ」
「でも、それっておかしいんです。だって、その映画を観たいって言い出したのは彼の方なんですよ!それにあたしが付き合ってあげたのに、どうしてあたしがずるいことになるんですか??」
「オゥマイ、オゥマイマイ」
「でもでも、彼いわくですね、あたしこそがおかしいって!その映画を希望したのはやっぱりあたしなのだから、あたしは彼に謝るべきだって!」
「オゥノウ、オゥイェア、オゥノウ」
「でもでもでも、やっぱり彼は間違っているんです!彼が希望した映画にあたしが合わせてあげたんです。だから謝るべきは彼の方なんです! ─ そんなわけで、あたしと彼は目下交戦中」



「…なるほどね。シチュエーションはアンダーストゥッドだ。どうってことはノットシリアスだね」
「はぁ、そうでしょうか?」
「うむ。インサマリー、君たちの記憶に’フェイク情報’が紛れ込んでいるんだよ。悩む必要はナッシング」
「はぁ?’フェイク情報’が紛れ込んでいるとはどういうことですか?あたしと彼の脳に異常が起こっていると仰るんですか?」
「ノゥノゥ。君たちの脳はノゥプロブレムだ。’フェイク情報’は『量子マシン』からランダムリーにデリヴァリーされているんだよ」
「はぁ?『量子マシン』がどうしたっていうんですか!訳が分からないんですけど!」
「そんなエキサイトはアヴォイドプリーズだ。いいかねリスンケアフリー。現在のモストアップトゥデイトな『量子マシン』はね、おのれが保存し続けている人間の記憶情報が正常かどうかを確かめるため、ときどき意図的に’フェイク情報’を混ぜて逆に人間にフィードバックして、測定させているんだよ
「へえーーー?!それじゃああたしたちから見れば、自分自身の記憶の正しさを『量子マシン』と常に確認しあっていることになるわけですか!?」
「イグザクトリー、とは物理上は断定しかねるまでも、数理上はザッツライトだ……ところで、おやおや…?君は誰だったかな?」



「先生、僕ですよ」
「あ~ら、こんにちは~、ハゥアーヨゥドゥーイン?」
「はぁ、まぁまぁです。ただ、ちょっとした悩み事があって」
「ホワットハッペンドなのかしら?」
「じつは ─ 近ごろ僕の記憶がところどころ間違っているような気がして」
「ふ~ん?記憶が間違っている気がする?いったいどんなふうにメモリーがロングなの?テルミーヨァストーリー」
「じつは ─ 先日のことです。僕は或る女性から恋心を告白されたんです」
「ハハン、なかなかインタレスティングサウンドだわね。それで、ハウイズザットゴーイング?」
「それで、僕は思いきってその女性をデートに誘ったんです、あははは」
「へぇー、それはグッドね、グッダーね!」
「僕たちは映画を観にいきました。『ロボットたちの初恋番外地』という映画です。あはははは」
「ハハン、ハハン、それで?」
「正直なところ、すっごく面白い映画でした。あっははははは。でも僕と彼女は口論してしまったんですよ、あっはははははは」
「それはいったいホワーイ?」
「彼女いわくですね、面白い映画なのにあらかじめそう伝えなかった僕はずるいって。あっははははははははは」
「オー、マイ」
「でも、ゲラゲラ笑っていた彼女の方こそずるいんですよ!あっははははははははは」
「オーマイ、オーマイマイ」
「でもでも、あっははっはははははははははは」
「オゥノウ、オーイェア、オゥノゥ」
「でもでもでも、あっはははははははははははは」




(ずっと続く)