2023/06/09

宇宙通信


「先生こんにちは。あたしですよ。こちらの声は届いていますでしょうか?」
「おや、こんにちは。よく聞こえているよ。それで、何か用かね?」
「はい。じつは、ちょっとした質問が…」
「へーぇ?どんな質問かね?」
「はぁ。あのですね、ついさきほどのことですが、宇宙の彼方から不思議なメッセージが聴こえてきたんです」
「不思議なメッセージ?それはどんなものかね?」
「はぁ、じつは、『 宇宙の秘密はxxxxxxxxxである』というものでして」
「ほぅ……、なるほどそれは不思議なメッセージだね。でも、たまたま一度っきりの入信ならば、君の’気のせい’じゃないかな」
「はぁ、そうでしょうか?」
「そうだよ。人間は一度っきりのものについては知識も命題も無いからね、だから記憶に留め置くことが出来ないんだよ。よって、’気のせい’だと捉えるのが自然だ」
「はあ。それはそうかもしれませんが ─ でも、そのメッセージが聴こえてきたのは一度っきりじゃないんですよ」
「ほほぅ?そうかね、二度も聴こえてきたのかね?二度であるならば、この場合はひとつの再現性として人間の意識に留め置かれる。いまや点は線となったわけだ。そうなると、僕たちはその宇宙メッセージの意味をいろいろ思案しうるね」
「なるほど、そういうことになりますかねぇ ─ ところがですね、じつは二度でも済まないんですよ」
「なんだと?それじゃあ三度も聴こえてきたのか?!いやいや、三度目ともなると、再現性がさらに再現されたことになる。となると、君が聴いたその宇宙メッセージには、何者かがなんらかの’意図’’を込めていることになるね、うーーーむ」



「…それはそうと、ねえ先生、じつは質問がありまして」
「ほほぅ?どんな質問かね?」
「じつは、つい先ほどのことですが、宇宙の彼方から不思議なメッセージが聴こえてきたんです」
「不思議なメッセージ?それはどんなものかね?」
「はぁ、『 宇宙の秘密はxxxxxxxxxである』というものでして」
「それは不思議なメッセージだ。でも、一度っきりの入信ならば、君の’気のせい’じゃないかな」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。人間は一度っきりのものは知識も命題も無いから記憶に留め置くことが出来ず、よって、’気のせい’だと」
「でも、そのメッセージが聴こえてきたのは一度っきりじゃなくて」
「ほほぅ?二度も聴こえてきたのかね?二度となると、これはひとつの再現性として人間の意識に留め置かれ」
「じつは二度でも済まなくって」
「それじゃあ三度も聴こえてきたのかね?三度ともなると、再現性がさらに再現されたことになり、だから、その宇宙メッセージには何者かがなんらかの’意図’’を込めていることになり……」
「ふふふっ…」



「それはさておき、ねぇ先生、じつは先ほど宇宙の彼方から不思議なメッセージが…」
「不思議なメッセージ?それはどんなものかね?」
『 宇宙の秘密はxxxxxxxxxである』というものでして、うっふふふ」
「それは不思議なメッセージだ、でも、一度っきりならば、君の’気のせい’だろう」
「ふふふふ、そうでしょうか?」
「そうだ。人間は一度っきりのものは知識も命題も無いから記憶に留め置くことが出来ず、だから、’気のせい’」
「でも、うっふふふふ、一度っきりじゃなくて」
「ほほぅ?二度ならば、ひとつの再現性として人間の意識に留め置かれ」
「うっふふふふふふ、二度でも済まなくって」
「それじゃあ三度かね?三度ともなると、再現性がさらに再現されたことになり、だから、その宇宙メッセージは何者かがなんらかの’意図’’を……」
「あっははははははは」



(ミステリー落語)