「先生こんにちは!あたしですよ。今日は卒業の挨拶にやって参りました」
「やあ、君か。今年もお別れシーズンだね。毎年のこと、いろんな娘たちがやってくる時節だからね。ゆえに僕は驚かないよ。君がこうして挨拶に来ることも予想はしていた」
「へーぇ。それじゃあ、あたしのことも『判別』して頂けるのですね!」
「もちろんだ。キラッと輝く瞳、人情味のある柔らかな鼻筋、意思の強そうな顎、なるほど知性とハートを兼ね備えたなかなかの逸材だよ、君ってやつは」
「ふーん。有難うございま~す」
「それに、なだらかに開いた肩と腕のライン、それでいてぎゅっと引き締まった手首。さらに、大きな尻と長い脚は規格品のジーンズを破裂させんばかり。なかなかの天才体型だ。あたかも駿馬の疾走を予感させるね」
「ふふふっ、褒め過ぎですよ先生」
「ともあれだ、卒業おめでとう。大学での更なる研鑽を祈っているよ」
「…ところで先生、実はですね」
「実は、なんだ?」
「実は、あたしはこれからの新生活を送るにあたって、ひとつだけ腑に落ちないことが…」
「うぬぅ?なんだか面倒な予感がするなぁ。で、いったい何が腑に落ちないのかね?」
「はぁ。そのぅ、いわゆる『情報』とはいったい何かが、どうも分からないんですけど」
「『情報』とは何か、だとぅ?それはインテレクトでインテリジェントでインタレスティングな問いかけだぞ。一般社会はおろか国会議員でさえも『情報』の何たるかをハッキリ理解しておらず、カネとすり替えたり現物と取り違えたりしてバカを見ているくらいだ」
「へ~え、やっぱりそうですか」
「うむ。ただし思考上のヒントはある。そもそも『情報』は物質ではないということだ」
「ははーーん?」
「ねえ、ちょっと考えてみてごらんよ。もともと我々の『意識』や『時間感覚』や『記憶』はだ、自然物と脳神経などによるさまざまな干渉や共振や伝送から成り、速度変化や方位変化による一期一会の万物流転を実感させている。つまりどれもこれも物質と量子とエネルギーから成っているわけだ」
「はぁはぁ」
「ところがだ、それら『時間感覚』や『記憶』をだよ、特定の秩序で符号化し表象秩序にすると、これらが数学になり、カネになり税になり、法律や言語になる。これらを『情報』という。デジタルに切り貼り出来るしなんぼでも書き換えや複製が可能だ。こんなだから、『情報』はもはや物質ではない」
「むーぅ……あのですね、そんな程度のことはとりあえず了解しているんですけど…」
「じゃあ、とりたてて悩むことはあるまい。よかったな」
「しかしですね先生、いわゆる『並行世界』との『情報』の交信については、どう捉えればよいのでしょうね?」
「うぬっ、そうくるか!」
「ねぇ先生!『並行世界』はこの宇宙あるいは別宇宙における別物質や別エネルギーの実体による実在なのでしょう?」
「うぐっ…、まぁそうだろうな」
「そういう別宇宙に『並行世界』がさまざま実在するのであれば、我々は其処いらとの『情報』共有は可能なのでしょうか?同じ数学や同じ言語を用いての『情報』通信が可能なのでしょうか?…」
「うぬぬぬぬ……」
「そして、そういういわば'マルチバース型のAI’が存在しうるのでしょうかね…?」
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「……おやっ?ちょっと待て!…おい、君はどうしてここにいるのかね?」
「先生!何を仰っているのですか?私は卒業の挨拶に今日こうして伺っているのですよ」
「そ、そうだったかな……それにしても、君は健勝ぶりがなによりだ」
「ははっ、そうでしょうかね」
「じっさい、君は逸材だと思うよ。キラッと輝く瞳、人情味のある柔らかな鼻筋、意思の強そうな顎…、まことに君は知性とハートを兼ね備えているよ」
「はぁ、お褒めのお言葉、有難う御座います」
「うむ。なだらかに開いた肩と腕のライン、それでいてぎゅっと引き締まった手首。さらに、大きな尻と長い脚は規格品のジーンズを破裂させんばかり。なかなかの天才体型だ。あたかも駿馬の疾走を予感させる。大学進学後の更なる研鑽を祈っているよ」
「はぁ……ところで先生、じつはですね、あたしはこれから新生活を送ってゆくにあたり、ひとつだけ腑に落ちないことがあるんですけど…」
「うぬぅ?なんとなく面倒な予感がするなあ。で、何が腑に落ちないのかね?」
「はぁ、いわゆる『情報』とは何かについてです」
「うーむ、それはインテレクトでインテリジェントでインタレスティングな問いかけだぞ。しかし思考上のヒントはあって…」
「あのですね先生、その粗方のところはすっ飛ばして、もうちょっと先のところ、いわゆる『並行世界』との『情報』の交信について、どう捉えればよいのか教えて頂きたいんですけど」
「うぐぅっ…」
「いわゆる『並行世界』がですね、この宇宙あるいは別宇宙における別物質や別エネルギーの実体による実在であるとして、我々は其処いらとの『情報』共有は可能なのでしょうか?同じ数学や同じ言語を用いての『情報』通信が可能なのでしょうか?…」
「うぬぬぬぬ……」
「そういう'マルチバースAI'が存在しうるでしょうかね…?」
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「……おやっ?なんだ?…おい、君はどうしてここにいるのかね?」
「先生!何を仰っているのですか?あたしは卒業の挨拶に今日こうして伺っているのですよ」
「そ、そうだったかな……それにしても、君は健勝ぶりがなによりだ」
「ははっ、有難う御座います」
「じっさい、君は逸材だと思うよ。キラッと輝く瞳、人情味のある柔らかな鼻筋、意思の強そうな顎…、まことに君は知性とハートを…」
「ねぇ先生、そこいらのお褒めの言葉にはもう感謝しておりますから、もっと先のところ、お願いしますよ」
「……」
「じつはですね~、あたしはこれから新生活を送ってゆくにあたり、ひとつだけ腑に落ちないことがあって~」
「うぬぅ?なんとなく面倒な予感が…。で、何が腑に落ちないのかね?」
「はぁ、いわゆる『情報』とは何かについて」
「うーむ、それはインテレクトでインテリジェントでインタレスティングな問いかけだぞ。しかし思考上のヒントはあって…」
「そこんところも、もうすっ飛ばしていいから、もうちょっと先のところ、いわゆる『並行世界』との『情報』の交信について、どう捉えればよいのか教えて頂きたいのよ!」
「うぐぅっ…」
「いわゆる『並行世界』がね、この宇宙あるいは別宇宙における別物質や別エネルギーの実体による実在であるとして、我々は其処いらとの『情報』共有が可能かって訊いてんのよ!ねえ、同じ数学や同じ言語を用いる『情報』通信が可能かどうか、そんな'マルチバースAI'が存在しうるのかって訊いてんの!」
(ずーっと続きうる)
※ SF作家ならこのくらいの掌編を思いつけってんだ。

