センター試験において僕なりに毎年注目しているのは、社会科の出題である。
ひとつの目玉として注目すべき、IMFによるSDR準備資産の特別引出権通貨への中国人民元の追加につき、今般の出題にて触れられていなかったことは意外ではあった。
また、英国とEUの経済/政治的なかかわりにしても、社会科としては数年来の最大関心事項であるはず、これについては政治経済ないし世界史にてEU論として突っ込んでみても面白かったのでは?
さらに、先日亡くなったカストロ(キューバ)をめぐる世界現代史が出題されなかったところが惜しい ─ 共産圏において彼ほど多元的かつ継続的に世界と渡り合った人物は、他にはワレサ、ゴルバチョフ、鄧小平くらいしか思い当たらない。
=========================================
【政治・経済】
例年と比べると、出題が雑然とした感はぬぐえない。
昨年まで出題されていた、国民所得や国際収支といった共通尺度での経済力比較や、ゲーム理論などのアカデミックなアプローチなど、分析能力を問いかける出題は今年はやや控えめ。
一方で、むしろ連想力(だから知識量)の要請はかえって増えてきたようにも察せられる。
【第1問】
<問2>の価格弾力性について。
概念が分かりにくいという声もちらりと聞こえてくるが、しかしだね、需要供給曲線を描く本来的な意義は、販売数量と売価の変化率を商材別に比較するところにあるはず。
よって、さまざまな商材が価格弾力性が高いか低いか、そこを判断出来なければ、話にならぬのよ。
<問3>は吹き出してしまうほどの奇問?である。
日本の衆議院議会の席配置の由来として、もともと協賛機関に過ぎなかったため閣僚席を仰ぎ見る格好になっている、とわざわざ論拠として論う必要があるかどうか…
しかし、もっとおかしい(可笑しい)のはフランス国民議会についての記述。
人が自由平等である云々の宣言を決議した時点で 「こうした考えをさらに推し進めようとした」人々が左翼席に、とあるが、自由平等であるとの考えを”さらに推し進める”とはどういう意味か?さっぱり了察出来ない (武力によるヨーロッパ襲撃の推進派であったとハッキリ記すべきではないかな。)
<問5>
選択肢1は、基本的人権があらゆる「法律による留保」の外に厳として在る由を想起させるものだろう(だからこそ本肢は誤文)。
だが、憲法と法律と基本的人権の準拠関係を同時に考慮しつつ挑むと、ここはかえって正文のようにも読めてしまう、不思議な問題でもある。
<問7>
日本の国富(円建て換算)の大分類とバブル経済の関係を冷徹に考察させる、素晴らしい出題ではないか。
ただ、設問は淡白な知識確認に留まっており、実に惜しい。
【第2問】
<問1>
フリードマンについて触れるなら、彼が批判した財政支出と乗数効果の太祖であるケインズこそを比較対象として、テキストを作成して欲しかった。
マルクスについて挙げる必然が分からない。
<問2>
本年の出題の典型例で、「所得再分配」の比率、再分配後の「相対的貧困率」、そして該当国のエピソードを連結させるつくり、だがこの出題はエピソード箇所が冗長ではなかろうか。
それより留意すべきは、相対的貧困率であり、これは可処分所得の中央値未満の額と構成人数を表す数値。(もしも最貧国にて、全構成員の可処分所得がみんな一緒に地上最低レベルならば、この相対的貧困率は最小になる。)
<問4>
選択肢2にある、「投機抑制のため国際的な資本取引に課税する構想」とは、(おそらく)かつてトービンが提唱したもの。
外為相場にて短期的に多額の国際資本移動がなされる場合の通貨価値の極端な変動を抑止させようとした、が、課税した場合に為替取引への意思が委縮してしまうとの危惧から、まだ実践的には導入されていないはず。
【第3問】
<問6>
これも上の問2と同じく連想クイズの構成をとっているが、もっとお粗末な出題だ。
選挙やデモがいったい国政の何にどう影響を及ぼしているか、そして、なぜ国民がそう見做すのか ─ と、ここまで踏み込ませる多段的な知識連想と思考チャレンジこそが、本年出題の新パターンたりえたのではないか。
そうであるのなら、まったく浅薄な出題に終わってしまった本問についてはなおさらガッカリさせられる。
<問8>
これはすっかり定番となった、地方自治体の「条例」についての出題。
地方自治体での住民投票条例は、国法に完全には拘束されず、じっさいに自治体によっては永住外国人が住民投票に参加した事例がある。
【第4問】
<問4>
一般会計のプライマリバランスを期間別に一瞥させるもので、これも内訳から変位まで掘り下げうる出題たりえたろうに、当初予算の額面比較だけに留まってるとはあまりに浅薄だ。
<問6>
ヨーロッパ統合と通貨についての定番的な出題。
ECが関税同盟と共同農業政策(1967)→ERMおよびEMSとして域内固定相場の通貨制度発足(1979)→単一欧州議定書(1987)→EU発足(1992)→ECB設立→euro通貨の論理的な決済開始(1999)→euro券の実物流通開始
…という具合に、通貨統一構想は早かったがeuroのオペレーションは政治統合ののちであったこと、この入り組んだ経緯はよく問われる。
(なお、さらにEUは現時点に至るまでに統一大統領と外相職までは設置されたが、EU統一憲法は全加盟国の署名条件を満たしておらず未発効なままである。)
==============================================
【世界史A】
【第1問】
<問3>
英連邦の成立過程つまり植民地への自治権付与のオーダーを確かめるもので、カナダがオーストラリアやニュージーランドより早いのは、居住人口や経済規模を勘案すれば当たり前のこと。
このプロセス理解においてむしろ念頭におくべきは、(本問には引用されていないが)アイルランドの自治獲得についてであり、これは南アの自治獲得よりもまた第一次大戦よりも遅く、さらに、ウェストミンスター憲章ののちにはエール国として英連邦から離脱さえしている。
<問6>
19世紀初頭のハイチ、コロンビア(ヴェネズェラ)、ペルー、メキシコといった中南米植民地の独立を想起すれば、本出題のグラフは明瞭に理解できよう、とともに、おもに英国による植民地数が史上最大であったのは両大戦期であったこと、あわせて確認容易である。
<問7>
出題そのものよりも、本問にかかるリード文にあるように 「イエズス会がスペイン王権と世俗権力から疎まれてアメリカ植民地から追放された由」 こそが、世界史理解にて極めて重大である。
【第2問】
<問2>
漢と明の版図を確認させるもので、もちろん歴史地図における重要な着目点は各国の辺境がどこまで伸びているかであり、世界史Aらしい出題である。
とくにこの図にては、明の版図が満州方面まで含んだことになっている。
<問5>
海底通信ケーブルは英仏間が一番早く、さらに大西洋間、英/インド間と続き、このケーブル敷設と(単純信号とはいえ)通信の実現は、蒸気機関の活用とともに、世界史Aとしての最重要テーマたりうる。
これら物理的なイノヴェーションによってこそ、物流や軍事作戦の大規模化はもとより、国際的な投機活動も拡大し、アメリカ南北戦争、クリミア戦争、イタリアやドイツの統一戦争にもつながっていく。
時間軸で追う限りでは、日本の開国期ともほぼ重なっている。
<問10>
関東軍による柳条湖事件と満州占領に対して蒋介石は不抵抗政策を採り続けた
─ どの時点まで指すか微妙だが、このリード文を読むかぎりでは張学良に説得されて初めて抗日にまわったと読める(本当ですか?)
【第3問】
<問2>
ワグナー法はよくあるヒッカケで、これはアメリカらしからぬ、労働運動サイドの立法である。
イギリスでの労働条件改善の皮切りは、19世紀に入ってからの団結禁止法の廃止を指している、か、尤もここでの設問文からは判然としない。
【第4問】
<問1>
国際赤十字社の設立は、クリミア戦争とイタリア統一戦争がきっかけ。
なお、ロカルノ条約はなぜか勘違いされやすいが、第一次大戦後の西ヨーロッパ諸国の相互不可侵について、ドイツのシュトレーゼマンが諸国に合意をとりつけたもの、かつ、ドイツの国際連盟加入があってこそ意義のあるものとされた。
==========================================
【世界史B】
【第1問】
<問4>
英インド総督が誘導したベンガル分割令と、反英勢力を分断するために組織化させた全インド=ムスリム連盟は、ほぼ同時進行での英国側の策謀であり、これらの時系列までを問う此度の出題はセンター試験にはふさわしくないのでは?
<問5>
本箇所の出題リード文Bにおける、トルコ系ムスリム勢力がインドを侵略し著名なヒンドゥー寺院を破壊・略奪云々、について。
数年前までの山川の詳説世界史B教科書にては、ムスリム側が自らの建造物にてこの略奪木材を充当した旨の記述があった、が、最新版の教科書にてはこの木材転用についての記述が消えている ─ なぜだか分からないが。
<問7>
この設問にては、ソ連の書記長フルシチョフ、ブレジネフ、ゴルバチョフによる対外膨張(ないし撤退)政策を区別されたい。
<問8>
ここでの引用グラフにては、とくに1930年代から第二次大戦前夜までに、ソ連の銑鉄生産量がドイツと(驚くほどに)軌を一にして増加しているところ、注目したい。
いったい何故にこうなったのか、第二次大戦の直前までは鉱石の還元技術がほぼ共通であったためか、同じ仕様の鉱石と溶鉱炉を使っていたからか…それにしてもなぜドイツとソ連が…どういう取引関係があったのだろうか…。
ここのところ、実に複合的つまり大局的な考察対象といえよう、世界史教育はかくあるべしか、もはやセンター試験どころではない(笑)
【第2問】
<問9>
韓国の民政化と日韓基本条約とインフラへの巨大投資における、朴正熙大統領の業績を考えれば、彼を独裁者として否定的に認知させうる本設問はセンター試験には望ましくない。
【第3問】
<問7>
金本位制については、資産価値の金(gold)ベースでの保全を優先するか、はたまたカネの流動性(つまり企業利益と政府税収の額面上の拡大)を優先するか、このオプションにかかる金融政策であること考えれば、けして難しい話ではない。
世界大恐慌のあおりで、英国はカネまわりが悪くなり、しかも頼みの金(gold)を流出してしまったのだから、金本位制を停止してでもカネまわりを復活させようとした。
【第4問】
この大問にては、設問よりむしろリード文そのものに着目したい。
とりわけ、東アジアは16世紀までには世界最大の交易圏となっていたが、清による(台湾への)遷界令と江戸幕府による鎖国政策により、いったん潰えてしまったこと、此度は引用されていなかったが、あわせて想起されたい。
また、ヨーロッパでの木材の過度な伐採消費についてのリード文については、木材にかわる熱量源として石炭が、そして蒸気機関が ─ と続けばもっと立体的な出題たりえたのでは。
このような出題リード文こそ、歴史の動因を複合的に捉えるきっかけとして、そして世界史Aでの出題コンテンツにも活かしうるものとして、こんごのセンター試験世界史にてもっと練り上げていって欲しいものである。
以上
ひとつの目玉として注目すべき、IMFによるSDR準備資産の特別引出権通貨への中国人民元の追加につき、今般の出題にて触れられていなかったことは意外ではあった。
また、英国とEUの経済/政治的なかかわりにしても、社会科としては数年来の最大関心事項であるはず、これについては政治経済ないし世界史にてEU論として突っ込んでみても面白かったのでは?
さらに、先日亡くなったカストロ(キューバ)をめぐる世界現代史が出題されなかったところが惜しい ─ 共産圏において彼ほど多元的かつ継続的に世界と渡り合った人物は、他にはワレサ、ゴルバチョフ、鄧小平くらいしか思い当たらない。
=========================================
【政治・経済】
例年と比べると、出題が雑然とした感はぬぐえない。
昨年まで出題されていた、国民所得や国際収支といった共通尺度での経済力比較や、ゲーム理論などのアカデミックなアプローチなど、分析能力を問いかける出題は今年はやや控えめ。
一方で、むしろ連想力(だから知識量)の要請はかえって増えてきたようにも察せられる。
【第1問】
<問2>の価格弾力性について。
概念が分かりにくいという声もちらりと聞こえてくるが、しかしだね、需要供給曲線を描く本来的な意義は、販売数量と売価の変化率を商材別に比較するところにあるはず。
よって、さまざまな商材が価格弾力性が高いか低いか、そこを判断出来なければ、話にならぬのよ。
<問3>は吹き出してしまうほどの奇問?である。
日本の衆議院議会の席配置の由来として、もともと協賛機関に過ぎなかったため閣僚席を仰ぎ見る格好になっている、とわざわざ論拠として論う必要があるかどうか…
しかし、もっとおかしい(可笑しい)のはフランス国民議会についての記述。
人が自由平等である云々の宣言を決議した時点で 「こうした考えをさらに推し進めようとした」人々が左翼席に、とあるが、自由平等であるとの考えを”さらに推し進める”とはどういう意味か?さっぱり了察出来ない (武力によるヨーロッパ襲撃の推進派であったとハッキリ記すべきではないかな。)
<問5>
選択肢1は、基本的人権があらゆる「法律による留保」の外に厳として在る由を想起させるものだろう(だからこそ本肢は誤文)。
だが、憲法と法律と基本的人権の準拠関係を同時に考慮しつつ挑むと、ここはかえって正文のようにも読めてしまう、不思議な問題でもある。
<問7>
日本の国富(円建て換算)の大分類とバブル経済の関係を冷徹に考察させる、素晴らしい出題ではないか。
ただ、設問は淡白な知識確認に留まっており、実に惜しい。
【第2問】
<問1>
フリードマンについて触れるなら、彼が批判した財政支出と乗数効果の太祖であるケインズこそを比較対象として、テキストを作成して欲しかった。
マルクスについて挙げる必然が分からない。
<問2>
本年の出題の典型例で、「所得再分配」の比率、再分配後の「相対的貧困率」、そして該当国のエピソードを連結させるつくり、だがこの出題はエピソード箇所が冗長ではなかろうか。
それより留意すべきは、相対的貧困率であり、これは可処分所得の中央値未満の額と構成人数を表す数値。(もしも最貧国にて、全構成員の可処分所得がみんな一緒に地上最低レベルならば、この相対的貧困率は最小になる。)
<問4>
選択肢2にある、「投機抑制のため国際的な資本取引に課税する構想」とは、(おそらく)かつてトービンが提唱したもの。
外為相場にて短期的に多額の国際資本移動がなされる場合の通貨価値の極端な変動を抑止させようとした、が、課税した場合に為替取引への意思が委縮してしまうとの危惧から、まだ実践的には導入されていないはず。
【第3問】
<問6>
これも上の問2と同じく連想クイズの構成をとっているが、もっとお粗末な出題だ。
選挙やデモがいったい国政の何にどう影響を及ぼしているか、そして、なぜ国民がそう見做すのか ─ と、ここまで踏み込ませる多段的な知識連想と思考チャレンジこそが、本年出題の新パターンたりえたのではないか。
そうであるのなら、まったく浅薄な出題に終わってしまった本問についてはなおさらガッカリさせられる。
<問8>
これはすっかり定番となった、地方自治体の「条例」についての出題。
地方自治体での住民投票条例は、国法に完全には拘束されず、じっさいに自治体によっては永住外国人が住民投票に参加した事例がある。
【第4問】
<問4>
一般会計のプライマリバランスを期間別に一瞥させるもので、これも内訳から変位まで掘り下げうる出題たりえたろうに、当初予算の額面比較だけに留まってるとはあまりに浅薄だ。
<問6>
ヨーロッパ統合と通貨についての定番的な出題。
ECが関税同盟と共同農業政策(1967)→ERMおよびEMSとして域内固定相場の通貨制度発足(1979)→単一欧州議定書(1987)→EU発足(1992)→ECB設立→euro通貨の論理的な決済開始(1999)→euro券の実物流通開始
…という具合に、通貨統一構想は早かったがeuroのオペレーションは政治統合ののちであったこと、この入り組んだ経緯はよく問われる。
(なお、さらにEUは現時点に至るまでに統一大統領と外相職までは設置されたが、EU統一憲法は全加盟国の署名条件を満たしておらず未発効なままである。)
==============================================
【世界史A】
【第1問】
<問3>
英連邦の成立過程つまり植民地への自治権付与のオーダーを確かめるもので、カナダがオーストラリアやニュージーランドより早いのは、居住人口や経済規模を勘案すれば当たり前のこと。
このプロセス理解においてむしろ念頭におくべきは、(本問には引用されていないが)アイルランドの自治獲得についてであり、これは南アの自治獲得よりもまた第一次大戦よりも遅く、さらに、ウェストミンスター憲章ののちにはエール国として英連邦から離脱さえしている。
<問6>
19世紀初頭のハイチ、コロンビア(ヴェネズェラ)、ペルー、メキシコといった中南米植民地の独立を想起すれば、本出題のグラフは明瞭に理解できよう、とともに、おもに英国による植民地数が史上最大であったのは両大戦期であったこと、あわせて確認容易である。
<問7>
出題そのものよりも、本問にかかるリード文にあるように 「イエズス会がスペイン王権と世俗権力から疎まれてアメリカ植民地から追放された由」 こそが、世界史理解にて極めて重大である。
【第2問】
<問2>
漢と明の版図を確認させるもので、もちろん歴史地図における重要な着目点は各国の辺境がどこまで伸びているかであり、世界史Aらしい出題である。
とくにこの図にては、明の版図が満州方面まで含んだことになっている。
<問5>
海底通信ケーブルは英仏間が一番早く、さらに大西洋間、英/インド間と続き、このケーブル敷設と(単純信号とはいえ)通信の実現は、蒸気機関の活用とともに、世界史Aとしての最重要テーマたりうる。
これら物理的なイノヴェーションによってこそ、物流や軍事作戦の大規模化はもとより、国際的な投機活動も拡大し、アメリカ南北戦争、クリミア戦争、イタリアやドイツの統一戦争にもつながっていく。
時間軸で追う限りでは、日本の開国期ともほぼ重なっている。
<問10>
関東軍による柳条湖事件と満州占領に対して蒋介石は不抵抗政策を採り続けた
─ どの時点まで指すか微妙だが、このリード文を読むかぎりでは張学良に説得されて初めて抗日にまわったと読める(本当ですか?)
【第3問】
<問2>
ワグナー法はよくあるヒッカケで、これはアメリカらしからぬ、労働運動サイドの立法である。
イギリスでの労働条件改善の皮切りは、19世紀に入ってからの団結禁止法の廃止を指している、か、尤もここでの設問文からは判然としない。
【第4問】
<問1>
国際赤十字社の設立は、クリミア戦争とイタリア統一戦争がきっかけ。
なお、ロカルノ条約はなぜか勘違いされやすいが、第一次大戦後の西ヨーロッパ諸国の相互不可侵について、ドイツのシュトレーゼマンが諸国に合意をとりつけたもの、かつ、ドイツの国際連盟加入があってこそ意義のあるものとされた。
==========================================
【世界史B】
【第1問】
<問4>
英インド総督が誘導したベンガル分割令と、反英勢力を分断するために組織化させた全インド=ムスリム連盟は、ほぼ同時進行での英国側の策謀であり、これらの時系列までを問う此度の出題はセンター試験にはふさわしくないのでは?
<問5>
本箇所の出題リード文Bにおける、トルコ系ムスリム勢力がインドを侵略し著名なヒンドゥー寺院を破壊・略奪云々、について。
数年前までの山川の詳説世界史B教科書にては、ムスリム側が自らの建造物にてこの略奪木材を充当した旨の記述があった、が、最新版の教科書にてはこの木材転用についての記述が消えている ─ なぜだか分からないが。
<問7>
この設問にては、ソ連の書記長フルシチョフ、ブレジネフ、ゴルバチョフによる対外膨張(ないし撤退)政策を区別されたい。
<問8>
ここでの引用グラフにては、とくに1930年代から第二次大戦前夜までに、ソ連の銑鉄生産量がドイツと(驚くほどに)軌を一にして増加しているところ、注目したい。
いったい何故にこうなったのか、第二次大戦の直前までは鉱石の還元技術がほぼ共通であったためか、同じ仕様の鉱石と溶鉱炉を使っていたからか…それにしてもなぜドイツとソ連が…どういう取引関係があったのだろうか…。
ここのところ、実に複合的つまり大局的な考察対象といえよう、世界史教育はかくあるべしか、もはやセンター試験どころではない(笑)
【第2問】
<問9>
韓国の民政化と日韓基本条約とインフラへの巨大投資における、朴正熙大統領の業績を考えれば、彼を独裁者として否定的に認知させうる本設問はセンター試験には望ましくない。
【第3問】
<問7>
金本位制については、資産価値の金(gold)ベースでの保全を優先するか、はたまたカネの流動性(つまり企業利益と政府税収の額面上の拡大)を優先するか、このオプションにかかる金融政策であること考えれば、けして難しい話ではない。
世界大恐慌のあおりで、英国はカネまわりが悪くなり、しかも頼みの金(gold)を流出してしまったのだから、金本位制を停止してでもカネまわりを復活させようとした。
【第4問】
この大問にては、設問よりむしろリード文そのものに着目したい。
とりわけ、東アジアは16世紀までには世界最大の交易圏となっていたが、清による(台湾への)遷界令と江戸幕府による鎖国政策により、いったん潰えてしまったこと、此度は引用されていなかったが、あわせて想起されたい。
また、ヨーロッパでの木材の過度な伐採消費についてのリード文については、木材にかわる熱量源として石炭が、そして蒸気機関が ─ と続けばもっと立体的な出題たりえたのでは。
このような出題リード文こそ、歴史の動因を複合的に捉えるきっかけとして、そして世界史Aでの出題コンテンツにも活かしうるものとして、こんごのセンター試験世界史にてもっと練り上げていって欲しいものである。
以上