2018/12/12

半導体の超概説

ちょっとした仕事関連の由あり、半導体についてあらためて概要をまとめなおす気が起こった。
半導体を学術的/大局的に鑑みれば、実装アプリケーションのとてつもない可変性≒有用性において最重要の基幹技術である。
だからこそ、技術上の基本知識がほぼ普遍的に求められ、じっさい高校物理の参考書類いや教科書においてさえも整流、増幅、集積回路あたりまでの概念定義がなされている。
現在の我が国の半導体関連産業はビジネス成果としては世界最高とは言い難いものの、研究開発力にては常に世界トップ級にあり、こんごも当分は間違いないとされる。

そこで、いわゆる半導体入門書の類を若干抜粋しつつ、学習参考書類における概念定義にも立ち戻りながら、以下に半導体について超概説をまとめてみた。
なお、諸々の理論式については極力省略する ─ それらが包括的な物理学見識を求めるもの多く(だからって僕が理解出来ないわけではないが)、のみならず、ここに転記するのが極めて面倒なためでもある。
(※ ところで、書籍によってはn型/p型をとくにn形/p形と記しているものもあるが、どうも工業技術上のアプローチからは後者の記述も多いようである。)



<構造/機能上の分類概要>
半導体物質のうち、とくに産業上有用なものとしての半導体は、ごく微量の異物質(つまり不純物)を添加しつつエネルギーを加えることで電子運動を操作出来る素子。
それら素子の選択的な組み合わせによって、電流(と電圧)の整流や増幅が可能、さらに複合して論理演算回路を構成することも出来る。
サイズの極小化と回路の複雑化が常に求められ続けている。

半導体は、まず「無機半導体」と「有機半導体」に大別出来る。
無機半導体は、シリコンやゲルマニウムやセレンや炭素など単一元素で構成される「元素半導体」はもとより、さらに複数元素の結合による「化合物半導体」、そして「酸化物半導体」に分類される。

ここで、化合物半導体は構成元素の数によって2元(素)系、3元(素)系、4元(素)系があり、硫化亜鉛、硫化カドミウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、リン化インジウム、窒化ケイ素などなどに成っている。
これら化合物半導体は、元素半導体では実現出来ない高速性や光電効果を発揮するので、高速通信デバイスや太陽光発電デバイスなどに採用されている。
一方で、酸化物半導体はやはり異なった元素の結合により、酸化亜鉛やインジウムガリウム亜鉛酸化物などに成っており、これらは可視光を通す特性を発揮するので液晶パネルや透明電極に採用されている。

また、有機半導体としてはテトラセンやアントラセンなどが合成されており、これらは曲げられる特性を有するので、薄膜状の製品への活用がこんご見込まれている(電子ペーパーなど)。

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<エネルギーと電子>
金属や半導体などの個体結晶では、近接し合う原子間にて外軌道の電子ほど影響を及ぼし合い易く、電子のエネルギー準位が連続的に変わりうる。
このエネルギー準位の幅をエネルギーバンドという。

原子の最外殻軌道にあって、原子間の結合や化学反応の担い手となりうる電子を「価電子」といい、この価電子のエネルギーバンドをとくに「価電子帯」という。
価電子が熱や光のエネルギーを得ると原子核とのクーロン力から離れて、エネルギー準位の高いエネルギーバンド「伝導帯」にジャンプして「伝導電子」となり、これが電気伝導をおこす。
ただし、価電子帯と伝導帯の間には電子が存在しえない「禁制帯」があり、このエネルギー幅をとくに「バンドギャップ」といい、その大きさは約1eVである。
よって、価電子帯の価電子が伝導帯にジャンプするためには、禁制帯のバンドギャップを超えたエネルギーが必要となる。
なお、価電子が確率的には存在しうる上限エネルギー準位を、とくに「フェルミレベル」といい、フェルミレベルのあらかじめ高い物質ほど価電子帯から伝導帯に電子がジャンプしやすい。

金属は、禁制帯が無いか有っても幅が極めて小さく、またフェルミレベルが伝導帯に至っているので、熱や光のエネルギーを受けて価電子が簡単にバンドギャップを超え、伝導帯にジャンプする、とはいえ温度が上がるにつれて原子の振動が価電子のジャンプをむしろ阻み、伝導電子は減ってしまう。
一方で、半導体は金属原子よりも禁制帯が広く、かつ、フェルミエネルギーが禁制帯にあるので、価電子がバンドギャップを超えるエネルギーは金属原子よりも多く必要とする、がしかし不純物のごく微量な添加によってフェルミレベルを操作することが出来る

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<不純物半導体・価電子操作>
そもそも、構成物質の純度が極限まで高い元素半導体をとくに「真性半導体」と定義、例えばシリコン単結晶はシリコン純度が99.9999999999% である (この純度は9が12個のケタなので'12N'と称される)。
この真性半導体にごく微量ながらも別の物質を添加(ドーピング)したものが「不純物半導体」である。
たとえばシリコンベースの不純物半導体の場合、シリコン単結晶あたりでの不純物添加の量は「わずか」10-6 10-8 ほどである。
それでも、不純物の添加により、真性半導体と比べてフェルミレベルを変更する(高くする)ことが出来、ヨリ低いエネルギーにて価電子がバンドギャップを克服し伝導電子となる。

不純物半導体は真性半導体同様に共有結合を成してはいるが、電気特性は幅広く異なる。
不純物によっては、共有結合にて価電子が弾き出されてしまい、この余った価電子はエネルギー準位が高く、伝導帯(1eV)との差が数meV程度まで迫っているので、常温の熱程度のエネルギー(26meVくらい)でも原子核とのクーロン力を断ち切り、伝導体にジャンプする→伝導電子となってマイナス電荷の電流をおこす。
この反応をおこす不純物をとくにドナーと称し、余った価電子のエネルギー準位をとくにドナー準位ともいう。

また、別の不純物によっては共有結合にて価電子が足りなくなり、プラス電荷つまり正孔を発生させ、こちらも数十meV程度のエネルギーで別の価電子を充当、また別のプラス電荷の正孔に別の価電子、さらにまた別の…と続いて、プラス電荷の電流をおこす。
こちらの反応をおこす不純物はとくにアクセプターと称し、正孔に価電子を引き込むエネルギー準位をとくにアクセプター準位ともいう。
以上がエネルギーと価電子と伝導電子と正孔のおおまかな関係である。

「価電子→伝導電子」のマイナス電荷と「価電子→正孔」のプラス電荷は、どちらかのみが一様に起こるわけではない。
かつ、不純物半導体とはいえ、真性半導体なりのプロセスもわずかながら同時に起こっている。
それらをふまえて不純物半導体をトータルに分類すると;
電流キャリア(担い手)として伝導電子を多くかつ正孔を少なめにつくるものをとくに「n型半導体」という(マイナス電荷が主である意)。
また、電流キャリアとして正孔を多くかつ伝導電子を少なめにつくるものをとくに「p型半導体」という(プラス電荷が主であるため)。
不純物の添加操作によってこれらを作り分けることを、「価電子操作」という。

なお、p型半導体にてもn型半導体にても、不純物原子は常態では正孔や電子と緩く繋がり合っており、だから電気的に中性の状態を保っている。

半導体素材がシリコンやゲルマニウムの場合、n型半導体を成すための不純物はリン、ヒ素、アンチモンなどであり、p型半導体を成すための不純物ならばボロン、アルミニウム、ガリウムが起用される。
また、半導体素材がガリウムヒ素の場合、n型半導体を成すための不純物はシリコン、硫黄、炭素などであり、p型半導体を成すための不純物は亜鉛、マグネシウム、ベリリウムなどである。

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<電気抵抗率>
エネルギーと価電子移動の関係は、電気抵抗の観点で捉えることも出来る。
導体は外部からの温度や光などエネルギーに応じて電子の移動も活発になるが、それ以上に原子の振動が激しくなり電子の移動を損ねてしまうので、一次関数的に電気抵抗が高まってしまう。
しかし、半導体は外部からのエネルギーに応じて電子の移動が極めて活発になるため、むしろ電気抵抗が指数関数的に減衰する。
暫定的な定義でみても、導体の電気抵抗率は概ね10-6 Ω・m以下で、主な金属の電気抵抗率はこの値付近に集まっているが、その一方で、半導体の電気抵抗率は10-6 Ω・m以上~108 Ω・m以下と、極めて上下幅が大きい。

とりわけ、不純物半導体の電気抵抗率は真性半導体に比べてずっと低い。
不純物の濃度と電気抵抗の相関をミクロにクローズアップしてみると、たとえばシリコン単結晶における不純物の濃度が1014原子数/cmの場合には、p型とn型ではやや異なるものの、電気抵抗率が102 Ω・cm であるが、同濃度が1020原子数/cmを超えると電気抵抗率はなんと! 10-4 Ω・cm近くまで下がる。

※ ちなみに、導体の電気抵抗率がゼロになることはなく、一方では絶縁体の電気抵抗率は108 Ω・m以上ではあるが無限大ではない。


…つづく。
次回は、ダイオード、トランジスタ、パワー半導体(コンバータとインバータ)などについて実用例など挙げつつ超概説を記すつもり。

謝辞

ここに提示の記事は、いずれも私自身の判断責任のもと編集・投稿したものです。

大半の投稿は学生など若年層向けを意図してやや平易な表現にて、一方では通俗性を極力回避しつつ、論旨の明示性を意図して書き綴りました。

あわせてまた、社会人の皆様にお読み頂くことも想定しつつ、汎用性高い観念知識を相応に動員しながら記した積もりです。

私なりの思考着想によるささやかな閃きが、皆様の諸活動にて何らかの光源たり得れば、望外の喜びであります。

山本