2018/12/18

半導体の超概説(2)

<ダイオード>
不純物半導体のうち、p型半導体とn型半導体それぞれの結晶片を1:1で接合させ、ここに外部電流を導線で供して一巡した回路とする、この接合回路の素子をとくに「ダイオード」という。
ダイオード素子は、電流の接続方向に応じて電圧あたりの電流が極めて流れやすくなる、か、極端に流れにくくなる(流れなくなる)。
この機能特性により、ダイオードは交流電流の直流への変換つまり「整流」や、特定方向からのエネルギー入力に応じた発電などの応用に用いられる。

基本的なメカニズムは以下。
ダイオード素子にて、n型半導体の側には外部から負電荷(-)を、p型半導体の側には外部から正電荷(+)を供するようにして、これを電流回路として一巡させるとする
この電流回路では、n型半導体から出でた伝導電子(-)とp型半導体から出でた正孔(+)とがp/n接合部にて引き合い再結合して電流が流れ、かつ、n型半導体側には外部電流から電子(-)がさらに供給され続け、その電子の分だけp型半導体側で正孔(+)が出来続けて同じ外部電流に回る。
よって、このp型→n型の電流回路ではp型半導体からn型半導体に向かって電流キャリアが/電場が生じ続け、この電圧の加え方を「順方向」接続という。

一方で、やはりこのダイオード素子にて、n型半導体の側には外部から正電荷(+)を、p型半導体の側には外部から負電荷(-)を供する電流回路もある
このケースでは、n型半導体から出でた伝導電子(-)とp型半導体から出でた正孔(+)とが互いに離反方向に移動、そこでp/n接合部付近にては、n型側は電子(-)が不足する正イオン(+)となり、またp型側は正孔(+)の移動したあとを電子(-)が埋めて電子過剰の負イオン(-)となり、こうして接合部付近に電流の絶縁状態がおこる(空乏層がおこる)。
よって、このn型→p型の電流回路ではn型部とp型部で電位差が生じ、この電位差が外部電流の電圧と等しくなると電流は流れなくなる。
この電圧の加え方を「逆方向」接続という。

以上から、ダイオード素子の接続回路では、p型→n型の順方向接続では電流が流れやすく、n型→p型の逆方向接続では電流が流れにくい(流れない)。

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<バイポーラ・トランジスタ>
p型半導体とn型半導体それぞれの結晶片を2:1で層状に接合させ、この3層構成に外部電流を導線で供して一巡した回路とする素子を「接合型トランジスタ」という。
とくに、2つのn型半導体の結晶片に1つのp型半導体の結晶片を挟んだものをn-p-n型トランジスタといい、逆に2つのp型半導体の結晶片の間に1つのn型半導体の結晶片を挟んだ接合型をp-n-p型トランジスタという。
トランジスタの主たる効用は、電流の増幅である。

p-n-p型あるいはn-p-n型のいずれかを問わず、挟み込む2つの半導体層が電流の流れに応じて(電子の流れに反して)「コレクタ」層→「エミッタ」層を成し、挟まれた1つの半導体層が微小な電流の入力枝である「ベース」層である。
トランジスタの意義は、ベースに流れ込む微量の電流に応じて、コレクタでの電流量がものすごく増大するということである。
(この増え方は、エミッタ~コレクタ間の電圧変化よりも遥かに急激である。)

ハードウェア構造としては、シリコン酸化膜をコレクタの基板としつつ、そこにベース層とエミッタ層を別個に重ねて合わせたものであり、これにより各層間で別個に電流の制御を行うので、とくに「プレーナ型トランジスタ」とも称される。

基本的なメカニズムは以下。
たとえば、n-p-n型トランジスタの場合には n:コレクタ、p:ベース、n:エミッタ となる。
この構成で、エミッタから電子(-)をベースに流し込もうとしても、両者の接合部付近には空乏層がおこり、電子(-)がエミッタとコレクタそれぞれの電極に集まってしまうので、ベースにはほとんど電流が流れない。
ここでエミッタ~ベース間に順方向(p型→n型)の電圧をかけると、接合部の空乏層の電位が下がるので、電子(-)が「わずかながら」ベースに流れて正孔(+)と結合(消滅)する、が、ベースは極めて薄く小さく出来ているので、ほとんどの電子(-)はベースを通過してコレクタに流れていく。
一方で、このときコレクタにベースより高い電圧がかかっていると、コレクタに流れ着いた電子(-)が加速されつつ正孔(+)と結合、こうしてこのエミッタ→コレクタ回路に大量の電子(-)が循環する、つまりコレクタ→エミッタに大きな電流が流れる。

また、p-n-p型トランジスタの場合には p:コレクタ、n:ベース、p:エミッタ の構造を成し、正孔(+)が主たる電流キャリアとなる。
こちらの場合、やはりベースの電流をかすかに変えるだけで大量の正孔(+)が電子(-)と結合、ただしこちらではコレクタ→エミッタ回路に大量の正孔が循環する、つまりエミッタ→コレクタに大きな電流が流れる。

以上のトランジスタの機能特性を電流の「増幅」と称し、トランジスタにおいてはこの電流増幅率が100であること ─ たとえばベース電流の増加量を1mAとしてコレクタ電流の増加量が100mAを実現するような増幅率が求められ続けている。
かつ、ベース電流が0の時点ではコレクタ電流もほぼ0であること、この0か1かのデジタルなスイッチング動作機能も大前提である。

なお、ここまでのトランジスタは、電流キャリアとして電子と正孔をともに用いるため、「バイポーラ(双極性)・トランジスタ」とも定義されてきた。

このトランジスタの段階的かつ精密な量産可能とする製造工程技術が、現在まで続く集積回路(LSI)製造技術の端緒ともなった。

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<FET(電界効果トランジスタ)>
FET(Field Effect Transistor)トランジスタは、n-p-nあるいはp-n-p構成の半導体に在る電子あるいは正孔に対し、電圧を印加し電界をおこし、電荷を反転させて電極間の電流をスイッチング制御する素子である。
こうして半導体に生成される電流経路をとくに「チャネル」という。
半導体に繋がれている入出力の電極は、電子を流し込む低電圧の「ソース」極、電子を流し出す高電圧の「ドレイン」極、および、一方で脇から電圧印加を為す「ゲート」極からなる。

FETの採用上のメリットは、ゲート極に印加されるわずかな電圧によってソース極~ドレイン極まで高速に電流スイッチングを可能とすること。
これによって、低消費電力を、そして発熱量の低減を実現出来る。
かつ、微細な構造ながらもパターン量産化が易しいというメリットもある

ほとんどのFETトランジスタのハードウェア構造は、シリコン基板の表面に二酸化シリコンの薄い絶縁膜をかぶせ、その上にアルミニウムなどによる電極を付けたもので、これをとくにMOS(Metal/Oxide/Semiconductor)FETという。
このMOSFET構造に沿って、たとえば'nチャネル'生成のメカニズムを要約すると ─
まずシリコン基板の極性はn-p-n型であり、ソース極とドレイン極はn型部と繋がっているため両者は常時は通電しておらず、かつ、ゲート極はシリコン基板のp型部と常時は絶縁されている。
ここで、ソース極~ドレイン極に電圧を印加しても、シリコンのドレイン極付近に空乏層が出来るだけで、両者間に電流は流れない。
しかしながら、ゲート極~ソース極に(+)の電圧を印加すると、ゲート極直下のp型部との間に電界が生じ、シリコンの正孔(+)が内部に移動しつつ、逆にシリコンp型部の電子(-)はフェルミレベルが上がり伝導電子となってゲート極側に引き寄せられ、この電子群によってn型の電荷が流れていく(いわばp型部がn型部となる!)。
このnチャネル生成プロセスによって、シリコンにおけるソース極~ドレイン極までが通電、よってMOSFETとしてON状態となる。

上述のように、ゲート極~ソース極に(+)の電圧印加をしてドレイン極までのチャネルを生成させるFETトランジスタを、とくにエンハンスメント型(ノーマリオフ型)とも称す。
一方では、常時はチャネルが生成されているが、ゲート極~ソース極への(-)電圧印加によって電子や正孔を逃がしドレイン極までのチャネルを減衰させるFETトランジスタもあり、こちらはデプレッション型(ノーマリオン型)と称す。

FETトランジスタは、生成されるチャネルのnないしpの電荷が、チャネルの電流キャリアである電子ないし正孔と必ずしも一致しないため、とくに「ユニポーラ」トランジスタとも称される。

トランジスタとMOSFETを消費電力で比較すると;
トランジスタのオン時の消費電力(熱)は、コレクタ~エミッタ間に残っている何らかの飽和電圧xコレクタの電流、つまりコレクタの損失電力となる。
一方で、MOSFETはそもそもドレイン~ソース間の電圧はごく僅かにすぎず、消費電力(熱)はオン時の抵抗xドレイン電流2乗となるが、このうちオン時の抵抗は数Ω以下に過ぎない。
こうしてオン時の消費電力(熱)を比較すると、MOSFETの方がトランジスタより少ない。
かつ、オン/オフの所要時間もMOSFETの方が速い。

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<化合物半導体>
シリコンベースに不純物を添加して接合させたダイオードもトランジスタも、ベースは同じ物質同士ゆえ、いわゆる「ホモ接合」の素子とされる。
これに対して、全く異なる物質同士を接合させての半導体素子つまり化合物半導体は、とくに「ヘテロ接合」であるという。
後者の研究開発が進められたきっかけは、FET(MOSFETなど)におけるシリコン酸化膜に相当する絶縁用素材を模索検討続けてきた過程で、シリコン素材そのものから離れての素材の組み合わせに至ったこと。

化合物半導体は、高速かつ高周波のスイッチング操作の需要に即して開発が続けられてきた。
光電変換特性や環境耐性が高い。
ただし均質の結晶を製造し難いとの欠点もある。

化合物接合による半導体素子としては、ガリウムヒ素を基板に用いてのFETトランジスタすなわち「MES(MEtal-Semiconductor)FET」が挙げられる。
MESFETは動作原理としてはシリコンベースでのFETと同様に電界誘導による基板での電流チャネル生成であり、しかもガリウムヒ素基板はすぐれた半絶縁性と高い電気抵抗値を有するので、集積度が上がるほど実装優位性を発揮。
とくに、携帯電話などの超高周波信号用に起用されるモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)にてインダクタ機能向上にて有利。

ガリウムヒ素基板とn形アルミニウムガリウムヒ素を接合させたものとして、高電子移動型トランジスタ「HEMT (High Election Mobility Transistor)」も開発されており、HEMTは両物質の接合界面での電子のフェルミレベルのずれを活かして電子の高速移動を成す素子であり、低雑音特性が高い。
さらに、ガリウムヒ素基板ではなくインジウムガリウムヒ素をチャネル生成基板に起用した素子が、シュードモルフィックHEMTである。

他にも、ヨリ高速性能実現のため、インジウムリン系や窒化ガリウム系をチャネル生成基板に起用した素子などが開発され続けている。

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<フォトダイオード>
p/n接合されているダイオード素子に、その「バンドギャップエネルギー」以上の光を照射すると、その光が吸収されることによってp型領域には電子がまたn型領域には正孔が生成され(光起電力効果)、これによって外部に電流を供給する回路を成す。
これがいわゆる「フォトダイオード」素子の基本原理であり、この
入射光の光子数に対する電子/正孔の生成数をとくに「量子効率」として表現、むろんこの値が高いフォトダイオードほど優れたものである。
量子効率は、入射光に対する素材のバンドギャップエネルギーによって異なり、たとえば、波長が0.9μm以下の赤外線~可視光領域ではシリコンベースでのフォトダイオードが適する。
だが、ヨリ長い波長たとえば1.55μmの領域光はシリコンを透過してしまうため、このケースではバンドギャップエネルギーが小さめの素材、たとえばインジウムガリウムヒ素ベースのフォトダイオードが起用される。

また量子効率はフォトダイオードの接合構造によっても異なり、たとえば、p型とn型の間に絶縁体を挟み込んだいわゆるpin型のフォトダイオードでは、空乏層における電界に(逆)バイアスの電圧をかけることによって電子と正孔が空乏層を高速で通り抜ける ─ よって量子効率が一段と高まる。
この構造のフォトダイオードが光制御系システムで起用されている。
もっと(逆)バイアスの電圧を高めれば、電子と正孔の移動速度がさらに増して原子に衝突、ここから新たな電子を次々と発生させ続けていく、これがいわゆるアバランシェ(雪崩)現象である。
これつまり、ごく微弱な入射光に対してもこの反応現象が起こり続けるものであり、とくにアバランシェフォトダイオードと称される。

もちろん、これらフォトダイオード素子は太陽光の入射に対する起電力効果を活かしたもの、つまり太陽電池パネルとして大いに活用されており、またトランジスタと複合させたシステムとしても広く活用されている。
さらにフォトダイオードは、デジタルカメラにて採用されているイメージセンサつまり撮像素子にても、Charge Coupled Device(CCD)回路を伴った集積回路として大いに活用されている。


つづく
※ 次回は高電圧/大電力用のパワーMOSFET、IGBTなどなどについて超概要を記す。