2022/03/04

【読書メモ】 トコトンやさしい二次電池の本

『トコトンやさしい二次電池の本(新版)小山昇/脇原将孝 著 B&T 日刊工業新聞』

総じて、物理電池・燃料電池・化学電池の分類定義は産業社会から学校教育まで「概ね」同じだろう。
物理電池は光などの外部エネルギーを取り込みこれを変換し電気出力するタイプ、また、燃料電池は水素と酸素の化学変化におけるエネルギーを取り出し電気出力するタイプ。
だから物理電池も燃料電池も、あくまでも外部から供給されるエネルギーを元に電気エネルギーを抽出するものといえる。
一方で、化学電池は電気エネルギー源物質をおのれの内部に備え、それら電子を酸化還元反応させて電気を抽出するタイプであり、このうち、一次電池は放電のみ為すもの、そして本書が概説する二次電池とは充電/放電をともに為すもの。

…と、このように大括りしつつ、高校までで学んだ物質の酸化還元反応やその電位や電気エネルギーなどなどを想起すれば、本書コンテンツの’ある程度’は一応は捕捉できよう、さらに重量エネルギー密度(パワー密度)などの統計上の意味も憶測しえよう。
しかしながら、全体を読み通すためにはたとえば電池の理論容量、分子構造と電位、熱力学との連関などなど、ヨリ複合的な科学知識が必須となろう、だから(僕のような)学術素人にとってはけして’やさしい’本ではない。
しかも、本書は学術/技術を段階的に解き明かす教養本の類ではなく、むしろさまざまな関係図表や関係式を随所に散りばめたリファレンス本の体であるため、なおさらのこと相応以上の見識が求められる。


ともあれ、二次電池が注目され続けている理由はその充放電の高速化と容量であり、これらを向上させるため諸技術が投入され続けている。
たとえば、われらおなじみのリチウムイオン電池と、新方式モデルとして注目され続けている電気二重層キャパシタの比較でみれば、これら仕様要件についてのせめぎ合いを見て取ることもでき、さらに燃料電池との比較論もさまざま議論しえよう。
尤も、これら仕様性能および運用事例については、学校教育から産業社会までにおけるさまざまな書籍やサイトに記されているとおり。
だから此度の本ブログではひとつひとつの引用は差し控える。

(一方で、本書導入部ではいわゆる再生可能エネルギー活用の一端として二次電池の起用の由が述べられているが、地球温暖化防止(?)を目的としての再生可能エネルギー施策の是非については、僕は確定的な論拠をいまだ見聞したことがない。
だから本旨については本ブログではいっさい触れぬこととしている。)

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本書のひとつの「売り」は二次電池のうち誰もが知るリチウムイオン電池を、運用面で凌駕しうる新タイプの電池、これらをいくつか例示しているところだろう。(p.66以降)


とくにその新しさのひとつの分水嶺が、電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor) か。 ※なおここでのキャパシタとは学校理科で学ぶコンデンサのこと。
このキャパシタへの外部からの電圧印加によって、負極では電子がたまりつつ、電解質界面に陽イオンが引き寄せられ、活性炭に陽イオンが付着、こうして'二重層'が出来る。
一方で、正極では正孔がたまりつつ、電解質界面では陰イオンが引き寄せられ、活性炭に陰イオンが付着。
こうしてキャパシタに充電がなされる(定電流でなされていく。)
このキャパシタを回路接続すると、負極では電子が回路に流れつつ、活性炭の陽イオンは離脱して電解液中に拡散、そして正極でも正電荷が無くなるため陰イオンが離脱して電解液へ。
これが放電となる。

要するに、このキャパシタにおける充放電では電解質イオンの移動、吸着、離脱のみが起こり、化学物質そのものの変化をともなわないので、極めて高速での充電が可能、そして可能サイクル数は50万回~数百万回以上という。
(この点鑑みれば、化学電池というよりはむしろ物理電池と称することも出来る。)
このキャパシタはパワー密度で1000W/kgを超えるものもあり、リチウムイオン電池を凌駕しているともいえる。
しかし時間経過とともに直線的に電圧降下してしまう特性あり、重量エネルギー密度では10W/kgすら満たず、リチウムイオン電池さらに燃料電池と比すとはるか及ばない。

なお、この電気二重層の電子吸着技術と、リチウムイオン電池型の酸化還元反応、これらを両極組み合わせたのがリチウムイオンキャパシタである。


リチウムイオン電池における極間移動のイオンをナトリウムイオンに替えたものが、ナトリウムイオン(二次)電池。
負極はリチウムイオン電池同様にグラフェン層カーボンなど起用、これとナトリウムが好反応して大容量の充放電が可能。
標準電極電位は-2.7Vに抑えられており、リチウムイオン電池の電極電位-3.0Vに迫るほどの高効率。
さらに、マグネシウムイオンを極間移動させるものがマグネシウムイオン(二次)電池であり、さまざまな負極素材が試みられている。


※ ともあれ、本書では諸々の学術/技術についてさまざま切り口で随所に概説あるものの、それぞれ要約に留められているため、これら新素材物質を起用した二次電池の構造と反応フローについても入門書類にて一通りは了解しておきたい。

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なお、一般読者の知識向上に際してとく有用と察せられる箇所をいくつか紹介しておく。

p.23 『表1:標準酸化還元電位 (電極と反応)』
p.23 『表2:電極反応の標準速度定数』
p.27 『図1:汎用LIB(リチウムイオン電池)の出力電圧と残存容量による充放電曲線』
p.51 『図1:各種電力貯蔵システムの特徴と用途』
p.53 『表1:諸量と重量エネルギー密度と体積エネルギー密度の比較』
p.65 『表1:代表的な電力貯蔵二次電池の性能・比較』
p.75 『表1および2:二次電池の負極材料となる各金属元素の基礎物性』
p.81 『表1:LIBの正極活物質として検討されている化合物の例』
p.83 『表1:おもな溶媒の物性値』

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以上