『並行宇宙は実在するか 松下安武 みすず書房』
本書は、量子力学における「並行世界」と、宇宙物理学(多世界解釈)における「並行宇宙≒マルチバース」を、超級センスの物理学に則りつつ接続図ってゆく、ケタ外れの科学本 ─ のようである。
文面こそ平易ながらも、主題の領域は既得の科学論をはるか超えたスケールにわたり、かつ提示される論題はヴァラエティに富み、しかも論理抽象性が高いため、僕のような学術素人からすれば大意の捕捉すらけして容易ではない(なかろう)。
それでも世界観つまり宇宙観について総論的に把握図るのであれば、あらかじめ巻末の「監修者解説」にて本書について概ね了察しおくことを奨めたい。
すなわち、ざっと以下のような解説である。
・量子力学上の「並行世界」の存在は、或る程度までは実験的に認識されてきた。
そこでの疑義 ─ 或る一瞬ごとに観測出来つつも消え去ってゆく'ように映る'物質粒子の運動現象は、確率上の観測対象にすぎぬのか(コペンハーゲン解釈)。
いや、これらの物質粒子の連綿連続こそが我々の知る宇宙そのものを成しているのではないか(多世界解釈)。
・量子力学では、さまざま粒子がさまざま散在する複数の世界が'併存している'とした上で、それら異世界の粒子同士が、一瞬いっしゅんごと、或る確率にて干渉しうるとする。
尤も、それら粒子が集まっての物質や機材や人間同士が、異世界を超えてぴったりと観測し干渉しあう確率となると、とてつもなく低い。
(たとえば人体は約1027個の粒子から成っており、この異世界に亘るこれら人体同士がぴったりと観測し干渉しあう確率は途方も無く低いだろう。)
・しかしながら、量子力学に則った一瞬ごとの干渉観測を超えて、これら粒子が連続的に併存し続けるとの解釈も可能であり、これが「多世界解釈」。
この「多世界解釈」を許容するならば、'本当の宇宙'は「さまざまな並行世界」による「マルチバース」から成っているとすら解釈可能となる。
・私たちの知る'この宇宙'にては、あらゆる物質、あらゆる力、そしてエネルギー密度と真空エネルギー密度までがほぼ不変である ─ ように映っている。
しかし、この宇宙が加速膨脹しておりかつさまざま体積膨張も進行中であるとすれば、かかるエネルギー密度不変は却って不自然である。
むしろ、本当はさまざまな素粒子、さまざまな力、さまざまな真空エネルギーの'さまざまな宇宙'が(よってさまざまな物理学が)さまざま膨大な数にて併存しているのでは…。
こう考えを拡大させていけば、むしろ「マルチバース」論こそが膨大/遠大な真理を包摂しているのではなかろうか。
・宇宙はじまりのインフレーション以来、加速度的に膨張しているはずの'この宇宙'にては、或る地点に居る観測者は、その地点よりも遠くから放たれた光などの粒子に永久に到達できぬとされている ─ これが、'この宇宙'解釈を制限する'事象の地平面問題。
しかし、もともと宇宙生成が量子力学的つまり多世界的になされてきたとすれば、この'事象の地平面'を超えたところに別の外部宇宙があろうとなかろうと、矛盾や限界は設定無用である。
なお、量子力学と重力理論は長弦理論によって統一されうるが、ここで見いだされるさまざまな力のメカニズムは、やはりマルチバース論を導きうる。
こうしてみれば、量子力学の並行世界「論」とマルチバース的な並行宇宙「論」は、'この宇宙'を遥かに超えて併存しうることになる。
・量子力学の並行世界「論」を量子ビットコンピュータに活用すれば、これら並行世界の(粒子の)重ね合わせによる量子テレポーテーションが可能となり、また現行技術では解読不能な暗復号も実現出来…
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ざっとこのような監修者解説ではあり、かなり平易な文面にて大局的かつ拡張的に、「並行世界」論と「並行宇宙」論(マルチバース論)を連関させてはいる。
それでも宇宙のインフレーションや泡宇宙などなど、安易には了察しかねるタームも多い。
さて、ともかくも本書コンテンツのうちとくに前段部について、僕なりに何とか解釈はかりつつ、以下まとめてしるす。
<有限の宇宙、無限の宇宙、など>
a [m/s2]